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「迷い巫女と青年サン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第16巻)  作者: サナダムシオ


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⑧ ランニング・パス

 走りながらサンジェルマンは、上空で待機している雪子に向かって、持っていた箱を放り投げた。

 誰もがその箱に注目した瞬間、あろうことか雪子がソレに向かって、手から光線を撃ち出した。


 光線は箱に命中し、箱は爆発四散したように見えた。

 雪子はいかにも、本当は地上の蛇男たちを狙ったつもりだったのに、うっかり❝やっちまった❞という顔をした。


それを地上から見ていた蛇男たちは、何やらお互いに意見交換し合い、やがてすごすごと河岸のアジトへと帰って行った。


「成功…したのかな?」

 サンジェルマンは小さく呟いた。

「大丈夫なんですか、あの箱?」

 隣で貞子が心配そうに彼に訊いた。


「ああ、あれは破壊光線では無くて、物質瞬間移動光線らしいよ。今の雪子さんには、そんなチカラもあるんだってさ。


 やがて二人は既定の手順で、雪子は独自ルートで、それぞれ1711年のサン・ジェルマンの部屋に帰って来た。


「はい、コレ。大事にまた仕舞っておいてね。」

 雪子から例の古い方の箱を無事に手渡され、サン・ジェルマンはすぐに、それをベッドの下に隠した。


「まるで花火みたいにキレイな爆発だったでしょ?」

 雪子さんが得意気に言った。

「淀川で見た花火にソックリでした。」

 貞子が不思議そうに答えた。


「箱を時空移動させた直後に、爆発をことさら大袈裟に見せたんですね?」

 サン・ジェルマンが推論を述べた。


「そうよ。彼等が諦め易いようにね。因みに火薬の調合は、江戸の花火師から直接教わったの。長生きしてると、知識もスキルも手に入れ放題なのよ。」


「長生きしてるって…見たところ、貴女は私と歳が変わらないように見えるのに…。」

 貞子がもっともな疑問を呈した。


「ああ、私、少し前に不老不死になったのよ。」

「えっ?」

 貞子が驚く。

「やり方は、別の世界のサン・ジェルマンに聞いたの。」

「えっ?」

 今度はサン・ジェルマンが驚いた。


「以前、彼から、食べたら不老不死になるという、❝人魚の肉❞の話は聞いていたの。でもその物体の正体を聞いたら、食べる気を失って、分析された成分だけを聞いておいたのよ。」

「…。」


「…後はその成分表に従って、ワクチンのようなモノを鷹志君が作って、それを私が自分で注射したの。」

「鷹志君?」

「ウチの研究所のスタッフ兼、未来の貴方の良き相棒よ。」

「へえ〜、えっ?」


「まあ、その注射した液体も、まるでカブトガニの血液のように、鮮やかなブルーだったんだけどね?」

「そりゃまた…。」


「因みに…通称❝人魚の肉❞と言われているソレの正体なんだけど…。」

「…?」

「…実はソレ、蛇男の❝同胞の肉❞らしいのよ。」

「ええっ!?」


「正しくは、彼等のご先祖様の❝ミイラ❞の一部。」

「うわあ…。」

「私も確かめたワケじゃないから、定かじゃないんだけど…別の世界の貴方はそう言っていたわ。」

「だから彼等は、あんなに箱を欲しがったんですね?」

 二人の会話を聞いて、貞子は納得したようだった。


挿絵(By みてみん)

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