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「迷い巫女と青年サン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第16巻)  作者: サナダムシオ


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⑦ ブラインド・ボックス

「それで…今回狙われたのが、その箱って訳ね?」

 雪子は貞子が大事そうに抱えていた箱に目をやった。

「念のために開けてみたら?中身が抜かれていたら大変でしょ?」

 雪子に言われて、それもそうだと貞子が箱の紐を解いてみた。


 彼女は、フタをそっと上げて中を見た。

「大丈夫みたいです。ちゃんと有りました。」

「そう。それはよかったわ。とりあえずね。」

 雪子は何だか含みのある言い方をした。


「そうそう、サン・ジェルマン、私が預けた箱は?」

 彼女に言われたサン・ジェルマンは、ベッドの下に両手を突っ込み、ゴソゴソやってそれを取り出した。

 当たり前の事だが、貞子のそれより、ほんの少しだけ古びている以外は、紐も箱の色も、キズさえも瓜二つだった。


「開けてみて。そして彼女のやつと中身を比べて。」

 彼は言われるままに箱を彼女の物の隣に並べ、フタを取って比べてみた。

「…大丈夫みたいです。中身までソックリです。」

「そう。よかったわ。」


「じゃあ、私たちの箱を囮に使いましょう。」

「ええ!?」

「なに驚いてるのよ。あいつらが簡単にあきらめるワケないでしょ。」

「それもそうか。」


「それに、例えこの箱が奪われても、彼女の箱さえ無事ならば、保険になるでしょ?」

「そうか!…いや、そうなのか?」

 サン・ジェルマンは、よく分からなくなって来た。


 ともあれ、三人は協力して囮作戦を決行することになった。

 作戦実行前に、用意周到な雪子は、自衛に役立つからと、貞子に冷気のコントロールの仕方を、軽くレクチャーしておいた。

 実は長い時空の旅路の中で、雪子はそのスキルも身に着けていたのだった。


 起こった事実を前提にするために、自分の箱を持ったサン・ジェルマンと貞子は、先ほど逃げ出した時間に合わせて、ポータブルタイムマシンで、月夜の橋の下の出入り口前に現れた。

 雪子は独自ルートで来るらしい。


 すると、河岸の壁が開き、なんとか腕の氷を溶かしたらしい黒服の男たちが、武器を持ってドヤドヤと河川敷に出て来た。

 皆、顔はニンゲンに偽装し、真夜中だというのにサングラスをかけていた。


 そしてその中の一人が、箱を持ったサン・ジェルマンと貞子を見つけると、他のメンバーに声を掛け、皆で一斉に追いかけて来た。

 すると貞子が、サン・ジェルマンと一緒に河岸を走って逃げながら、振り向いて両手で冷気を打ち出す。


 二人と蛇男たちとの間の地面が凍り付き、彼らは次々に転んでしまい、なかなか二人に追いつけなかった。

そしてそのせいで、彼らと二人の間の距離は、少しずつではあるが、確実に離れて行った。


 たまらず、蛇男の先頭集団の一人が拳銃のようなモノを構えて撃った。

 銃口からは実弾では無く赤い光線が出たが、残念ながらそれも、空から現れた雪子の電磁防壁に阻まれてしまった。


挿絵(By みてみん)

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