⑤ サプライズ
次の瞬間、1711年のサン・ジェルマンの屋敷の自室の絨毯の上に、二人は座り込んで居た。
貞子はもちろん、突然の状況変化に対して、目を白黒させて驚いていた。
しかしサン・ジェルマン自身も、到着地がそこだったことを、意外に感じていたのだった。
なぜなら、緊急ボタンのシステムを考えたのは彼では無く…。
「あら、意外にそのボタンを早く押したのね?」
その時ふいに、背後から声をかけられた。
振り返ると、ベッドの上に足を組んで腰かけている、懐かしい人物と目が合った。
それはセーラー服を着た超時空の魔女、真田雪子だった。
もう当分逢えないはずだったのに…彼にとっても思わぬ再会だった。
「雪子さん!どうして!?」
「いや、こっちのセリフだから。その赤いボタンは緊急時以外は押しちゃダメって言ったでしょ?」
「まあ、結構ヤバかったんですよ、実際。」
「ふ~ん。ところで、貴方が今抱きしめている、その可愛い巫女さんは誰なのかしら?」
サン・ジェルマンは慌てて貞子から手を離した。
「いや、この子とはたまたま、出来立ての凱旋門の前で出会ったんだよ。」
「ほほう、パリでナンパとは。将来ドン・ファンになる、サン・ジェルマン伯爵の片鱗がうかがえるわねえ?」
「変な言いがかりはヤメて下さい。彼女は深夜に路頭に迷って、困っていたんです。コレは人助けなんですよ!」
「へ~え。ホントにぃ~?」
「もう、詳しく話しますから聞いてくださいよ!」
それからサン・ジェルマンは、今回の事件の顛末を雪子に説明した。
「…かくかくしかじか…と言う訳なんです。」
「なるほど。そうやってこの子を誘拐したのね?」
「…だ・か・ら!」
「あはは。ごめん、ごめん。久しぶりに貴方の顔を見たらつい、からかいたくなっちゃって…貴方は私一筋だものねえ?」
「…ソレもなんか違います。」
「え〜そうなの?あの涙はウソだったの?」
「もう勘弁してくださいよ。お願いしますって。」
「お二人、随分と仲がお宜しいのね?」
その時、すっかり蚊帳の外にされていた貞子が、ポツリと言った。
慌ててサン・ジェルマンが彼女に向き直る。
「ああ、ちゃんと紹介しなきゃですね。こちらは僕の…恩人の真田雪子さんです。雪子さん、こちらは1796年の下鴨神社から来た、巫女の藤原貞子さんです。」
「可愛い巫女さんね。よろしくね?」
「ああ、はい。こちらこそよろしくお願いします。変わったお衣装ですね?」
「これはセーラー服っていうのよ。私の戦闘服なの。」
貞子は、見た目が自分と同じ年恰好の彼女から、妙な貫録を感じて、戸惑っていたのだった。




