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「迷い巫女と青年サン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第16巻)  作者: サナダムシオ


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㊻ ソー・ロング

 雪子とサン・ジェルマンが帰り支度をしていると、そこへセベクが戻って来た。


「今、私の全ての遠征軍を撤退させて来た。」

 セベクがサン・ジェルマンに向かって、勝手に喋り出した。


「そしてもう二度と、攻め込まない事を誓って来た。サン・ジェルマンの名に賭けてな。」

「えっ?」とサン・ジェルマン。

 不謹慎にも、クスクス笑う雪子。


「コレが俺なりの誠意ってヤツだ。コレで貸し借り無しだ。じゃあな。もう二度と遭うことも無かろう。」

「え、あ、ちょっと…。」

「ああ、そうそう。」

「…なに?」


「俺の世界には、俺の王国以外に3つの大国がある。ソイツらがどこで何をしようが、俺の知った事では無い。その旨、悪しからずよろしく。」


 最後にそう言い遺して、彼は再びポータルの中に去って行った。


「…なるほど。こんな感じに貴方の魔王伝説は始まるのね?」

 雪子は一人で納得したようだった。

「えっ、それって、どういう…?」

 サン・ジェルマンは要領を得ない顔だ。


「つまりこの先も、今回のような事が、犬族、猫族、鳥族との間にも起こるってことよ!」

「え、え〜?」

 駆け出しの魔王は情けない声を出した。


「さあ、マストなイベントは全て済んだみたいだし、私たちもそろそろ帰りましょうか?」

 雪子に促され、サン・ジェルマンは小型トランクを開けて、タイムマシンを起動させる。


「雪子さんは…どうするんですか?」

「私?私はこのデバイスで帰れるからいいけど…。」

 そう言って彼女はチラリと自分の腕を確認する。


「…どうせ暇だし、貴方のところに寄って行こうかしら?」

 彼女はそう言いながら、彼の腕に自分の腕を絡めた。

「…別に構わないけど。」

 と視線を逸らすサン・ジェルマン。


「え〜。そこは、大歓迎です!じゃないのぉ~?」

「もぉ、行きますよ!」

 サン・ジェルマンは、タイムマシンのスタートレバーを引いた。




 その頃、1989年4月1日のサン・ジェルマンは、名護屋テレビ塔の異次元レストランで、のんびりモーニング・コーヒーを楽しんで居た。 


 ここのところナンダカンダあって、ずっと賑やかだったから、久しぶりの静かな時間を満喫していたのだった。


 皆、出払っていると言うことは、あの事件が起こっているのだな。アレは愉快な冒険だったな。でも、あの後は、なかなか雪子さんが帰ってくれなくて大変だった。


 そんな事を思い出しながら、彼は一人でニヤニヤしていたのだった。

 するとイキナリ左の頬をつねられた。


「な〜に思い出し笑いしてるのよ?どうせ隣にあたしが居ることなんか、すっかり忘れてるんでしょ?」 

 村田京子にそう指摘され、彼は少しだけ動揺した。


 と、そこへ…。

「たっだいまぁ~!じゃなかった。おっはよぉございま〜す!」

 元気な声とともに、真田由理子、杉浦鷹志がエレベーターから出て来た。


「今日、シフト入ってましたよね?」 

 いつものように冷静に尋ねる鷹志。


「はい。今日も肩の力は抜いて、でも真剣に、お仕事宜しくお願いしますね?」

「了解で〜す!」

 これまたいつものように、由理子が元気に答えた。


 こうして、今日もこの時代の、サン・ジェルマンの大切な居場所である名護屋テレビ塔では、平和な日常が始まるのであった。


…全ては過去の出来事。

 “兵どもが夢の跡”…である。


挿絵(By みてみん)

以上で、このエピソードは完結です。

次回作は「赤い髪のメイドと猫王子」です。

その後の由理子とミケーネのお話を描きます。

年末から年明けを跨いで連載予定です。

どうぞご期待下さい(>ω<)

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