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「迷い巫女と青年サン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第16巻)  作者: サナダムシオ


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㊹ マジカル・フード

 サン・ジェルマンは、初めて人魚の肉と呼ばれるモノを食べたが、中々の副作用で、正直な話、内心参ってしまっていた。


 実は暫くの間、目眩が抜けず、まるで乗り物酔いになったように、ずっと気持ち悪かったのだ。


 決戦のタイミングで、ギリギリ体調が戻ってホントに良かった。と、彼は今、ホッと胸を撫で下ろしているのであった。


 それはさて置き、セベクのことである。

 サン・ジェルマンによって、図らずも死の淵から復活させられた彼は、暫く考え込んでいた。


 しかし、ついに決心したようだった。

「よし、決めたぞ!」 

 そう言うと彼は、突きつけていた杖を手元に戻した。 


「俺は、他人に借りを作ったままで居ることが、何よりもキライなのだ、」

「へえ、そうなのかい?」

「だから、今すぐ、借りを返しに行ってやる。」


 そう言うとセベクは、スフィンクスの顎の下に向かってまっしぐらに走って行き、時空の彼方に消えてしまった。


「あ〜あ、行っちゃったわねぇ〜。」

 雪子がいつの間にか、サン・ジェルマンの隣まで戻って来ていた。


「まったく、酷い目にあったわぁ。」 

 そんなことを言いながら、首や肩をグルグル回して、何だか呑気そうな彼女。 


「衝撃波で、あんな遠くの砂山の中に、ぶち込まれたのよ。もうすっかり、カラダ中が砂だらけだわ。アンナところにもコンナところにも、砂が入り込んでタイヘンよ。見る?」 

 そう言いながら彼女は、セーラー服のスカートをめくり上げて見せる。


「いや、もう、勘弁して下さいよ、雪子さん。」

 とサン・ジェルマン。

「どうせワザと手を出さずに、砂の中から、ずっと様子を見てたんでしょ?」


「あー、バレてたんだぁ?」

「まったく、ヒトが悪いんだから。」

「でもまあ、貴方が勝つって分かってたしね?」

「そうなんですか?」


「それに、貴方、自分のチカラを試したかったんでしょ?ずっと私たちに助けられたままの自分が、イヤになっていたし…。」


「やれやれ、やっぱり雪子さんはには敵わないや。何でも御見通しなんですね?」

「まあね。貴方を育てたのは、私なんだし…。」


「それにしても、セベクはどこに行っちゃったんですかねえ?」

「まあ、それも、何となく見当はつくんだけどね。」 


「…どこなんです?」

「どこだと思う?」

「う〜ん?」


 そこで雪子が、サンジェルマンの耳元に唇を寄せて、ナニやらゴニョゴニョと囁く。

「…あっ。」

「…ねっ。きっとそうよ。」



挿絵(By みてみん)


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