㊸ ソード・ファイター
僕は今までずっと、雪子さんや、歳下の貞子さんにまで、守られて来た。
今度こそは僕の番だ。やってみせるぞ。
サン・ジェルマンの決意は固かった。
「やはり、いつまでもこんなお遊びをやっていては、埒が明かないな。」
攻撃の手を止めたセベクが言った。
「そろそろ本気を出そう。決着を着けるぞ、覚悟はいいな?サン・ジェルマン!」
右の体側で杖を引いて、腰を低く溜めて構えるセベク。
「望むところだ。来い、セベク!」
サン・ジェルマンは、剣を上段で構えて言った。
セベクが空間を薙ぎ払うと同時に、青い光を伴った特大の衝撃波が放たれた。
しかし、ソレに合わせるように、サン・ジェルマンが剣を振り下ろすと、剣先から巨大な火の玉が現れ、セベクに向かって飛んで行ったのだ。
辺りには、その日一番の轟音が響き渡り、その場はまるで、太陽が落ちたかのように光輝き、暫くすると、やがて通常の明るさに戻って行った。
2人はまだそこに立っていたが…やがてサン・ジェルマンが、力尽きたように片膝をついた。
参ったな。ヤツはまだ立っている…もう一度今の技を繰り出すチカラは、残ってないぞ。
サン・ジェルマンは内心焦っていた。
しかし、次の瞬間、セベクの下半身が崩れ落ち、残った上半身も杖を持ったまま、仰向けに砂漠の上に倒れてしまった。
サン・ジェルマンは何とか立ち上がると、ヨロヨロとセベクの元に歩み寄って行った。
近くまで来てみると、セベクの下半身は炭化して、すっかり黒焦げになっていた。
しかし驚くべきことに、意識は無いようだったが、上半身だけが無事な彼は、まだ息絶えていなかった。
サン・ジェルマンは迷わず、懐から例の肉片を出し、セベクの口に入れた。
するとどうだろう。
セベクの炭化した下半身が、見る見る通常の骨、肉、皮膚を取り戻し、5分後には、すっかり元通りに回復してしまったのだ。
それを見て満足したサン・ジェルマンは、セベクの隣に仰向けになって、寝転んだ。
サン・ジェルマンは疲れていたせいか、そのまま少し寝てしまったようだった。
目を覚ますと、すっかり元気になったセベクが、サン・ジェルマンの喉元に杖を突きつけていた。
「貴様、何のつもりだ?」
セベクが静かに尋ねた。
「言っただろう?僕は無益な殺生はしないんだよ。」
「敵に生き返らせて貰うなど、戦士にとっては屈辱だ!」
「ボクが魔王になってしまったように、キミも今日から不老不死の神として生きるがイイさ…。」
「貴様も同じモノを食べたのだな?」
「そうさ。だからもう、この戦いは無意味だ。永遠に終わらない。」
サン・ジェルマンはそう言うと、ニッコリ笑って見せた。
そして彼は、杖を突きつけられたまま、ゆっくりと立ち上がった。
身体のダメージは、どうやらすっかり抜けているようだった。
実は、ここに到着する直前に、彼はビートルの中で、こっそり人魚の肉を口にしていたのだ。
そして、こんなこともあろうかと、肉片の半分は懐に忍ばせていたのだった。




