㊵ ファミリー
『ミケーネ、無事だったのか!しかし、何故ここに?』
と猫王。
『父上こそ、ここで何をしているのですか!?』
とミケーネ。
ミケーネに、父上と呼ばれた猫王は、話し合いの輪の中から出て来ると、猫の仮面を上方にスライドさせて、中から本体を露わにした。
やっぱり義体だったのね。雪子は納得した。
すると、それまで一連の流れを見守っていた由理子が、前に進み出て来た。
そして彼女は、そのまま躊躇う事無く、身長2m級の動物集団の、輪の中心に向かって入って行ったのだ。
雪子が呆気に取られ見ていると、彼女は何やら動物集団の面々と、意志の疎通を図っているようだった。
しばらくそんな様子が続いた後、由理子は満足したように、やがて雪子たちの方に戻って来た。
「ええっと、かい摘んで状況を説明しますね?」
由理子が、不思議そうにしている雪子とサン・ジェルマンに、解説してくれた。
「まず、あの2人の猫族は親子で、王様と王子です。」
「…やっぱり。」
「2人の間には、ちょっとした確執があったのですが、話し合いの結果、誤解がとけたらしく、一応の解決を得ました。」
「…それは良かった。」
「次に動物集団との話し合いの件ですが…。」
「…うんうん。」
「…そもそも、ここのポータルを、最初に偶然見つけたのは、爬虫類族でした。」
「…ほほう。」
「ですから、彼等が長い間、後からやって来た猫族、犬族、鳥族を仕切っていたんだそうです。」
「…なるほど。」
「そんな中、現地で見つけた、文明が未発達の人類たちに、色々な事を教え込んで、便利に使ったり、自分たちの世界に連れ帰ったりしたんだそうです。」
「…そりゃ、ひどいな。」
「もちろん私はそれを聞いて、そんな奴隷扱いなんて、酷いわ!って文句言ってやりましたけどね。」
「…ありがとう。」
「…で、そんな感じに既得権益を得ていた彼等でしたが、例の一件の時に、雪子さんたちにキャップストーンを取られてしまったので、人員・物資の大量輸送が不可能になりました。」
「…それは私の狙い通り。」
「すっかり商売上がったりになった彼等は、今後の事について、ここでこうして話し合いの場を設けていたのです。」
「…ふ~ん。」
「そんな時、突然、雪子さんとサン・ジェルマンさんが、目の前に現れました。彼等はそれを見て、とても驚いたそうです。」
「…どうして?」
「何故なら、彼等にとってソレは、一種の啓示のようなモノだから、だそうなんです。」
「…一体、どういう事?」
「猫、犬、爬虫類、鳥、のどの種族にとっても、サン・ジェルマンさんは、大恩人…ううん、むしろ畏怖すべき、神のような存在なんだそうです。」
「…えっ、そうなの?」
「ですから彼等は、自分たちの身の振り方をどうするかは、サンジェルマンの意向を尊重する、と言っています。」
「…サン・ジェルマン、貴方、一体ナニやったの?」
雪子が思わず尋ねる。
「いや、僕は、まだ何も…。」
彼自身も訳が分からないようだった。
「つまり、未来の異世界で何かするのね?いや、彼等にとっては過去なのか?」
雪子の思考もこんがらがって来た。




