㊱ レスキュー
「あらためて謝るわ。ごめんなさい。」
由理子はミケーネに素直に言った。
『まあ、仕方ないさ。ワザとじゃないんだろうし…。』
ミケーネも、他人のミスをしつこく責めるような了見の狭い男では無かった。
「お詫びと言ってはなんだけど、ここで奥の手を使わせてもらうわね。」
『何だ?』
「それはね…。」
その時、波間にプカプカ浮いていた宇宙船の上空が、突然暗くになった。
ミケーネが、窓から上を見ると…4つの車輪が付いたナニかが、少しずつ降下して、コチラへ迫って来ていた。
見ていると、その車軸が左右に伸び、次に先端のタイヤ部分が徐々に内側下に閉じて行き、まるでクレーンゲームのごとく、四つのツメで宇宙船を掴むように動いた。
そしてソレは実際に円盤をガッチリ掴んだ。
そのナニかのドアが開き、ニンゲンのオスが、下に向かって顔を覗かせた。
「由理子さん、迎えに来ました!大丈夫ですか?」
そのオスは大声を出して呼びかけて来た。
由理子は宇宙船のハッチを開けて、見上げながらその呼びかけに答えた。
「ありがとう。ワザワザごめんね、鷹志さん。」
『鷹志さん?』
「彼は私の大事なパートナー。助けに来てくれたのよ。さあ、一緒に行きましょう。」
そう言って彼女がミケーネに手を伸ばす。
ミケーネが渋々その手を取ると、彼女は彼を抱き上げた。
そしてまず、鷹志に彼を手渡した。
「このネコがそうなの?」
鷹志が彼女に尋ねる。
「そうよ。くれぐれも丁重に扱ってね。」
「了解!」
鷹志はそう言ってミケーネを受け取ると、慎重に後部座席に座らせた。
そして次に由理子を両腕で引っ張り上げて、自分は右の助手席に移動した。
「赤いビートルで来てくれたのね?」
「キミがきっと操縦したがると思ってね。」
「流石、私の事良く分かってる〜!」
『いつの間に助けを呼んだんだ?』
後ろからミケーネが尋ねる。
「実はこの腕のデバイスで、ずっと音声は記録してたの。そしてその記録と一緒に、救難信号を、ついさっきボタンを押して送ったのよ。」
『なかなかやるではないか、ユリコ。』
「あ、やっと名前を呼んでくれたわね?」
「まあ、他の下等ハダカ猿族とは…区別してやってもイイぞ。」
「ありがとう。因みにコチラの鷹志君は、私の100倍賢いわよ。」
『ほう。』
「何かニャーニャー言ってて、良く分からないんだけど?」
横から鷹志が口を挟んだ。
「今、貴方の事を褒めてたのよ。」
「それはどうも。じゃあ、取り敢えず1989年の真田研究所に行こうか。」
「あれ?テレビ塔じゃないの?」
「こんなヤバいモノ抱えたまま、久屋大通のど真ん中には行けないでしょ?」
鷹志がミケーネの宇宙船を指差して言った。
「ああ、それもそうね。」
そんな訳で、由理子が操縦する赤いビートルは、一路、真田研究所を目指して、時空をジャンプしたのだった。




