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「迷い巫女と青年サン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第16巻)  作者: サナダムシオ


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㉜ スペース・キャット

 彼は考えていた。

 どうしたら通りすがりの犬族と、うまくやっていけるのかを。

 

 いつも二本足で歩く、大型の体毛の薄いサル族が引っ張る紐につながれて、やって来るあいつら。

 大体やつらが現れるのは、朝と夕方が多い。

 急に大声でわめくやつもいれば、顔をベロベロなめてくるやつもいる。

 本当にやっかいなヤツラだ。


 そもそも現地の猫族たちが野性的過ぎるのだ。

 どうして道の真ん中で、みんな脚を広げて毛づくろいができるのだ?

 恥ずかしい!


 あのころより気温が高くて、自分たちが比較的毛深いのは分かる。

 しかし、せめて下着くらいは身に着けて欲しいものだ。


 それにどいつもこいつもニャーニャーと古いネコ語をしゃべっている。

 誰ひとりテレパシーを使えないようだ。

 やっぱり、何かがおかしい…。


 何故ここでは皆、こんな下等生物のような振る舞いをしているのだ。

 さっぱり理解ができない。


 まさか彼等はやってしまったのか?

 あの伝説の最終戦争を。


 そんなアレコレを悩んでいる彼は、猫族の王子ミケーネ。

 ついこの前、長い宇宙旅行から帰って来たのだ。


 思い返せば、父の猫王が急に「お前もすっかりイイ大人になったな。そうだ旅行にでも行ってこい。」と言ってきたところから、既に様子がおかしかったのだった。


 いざ帰って来てみれば、出かける時には宇宙港だった場所は、すっかりただの原っぱになっていた。


 宇宙船にはタイムマシンの機能もあったから、ウラシマ効果のことも考えて、帰る場所と時間を調整して、座標を入力したつもりだったのだが…。


 念のため、空気中の放射線量の安全性を確かめて、宇宙船から出てみて驚いた。

 出会う猫族が、みんな裸で四本足で歩いているのだ。


 彼は周りから怪しまれないように、手袋を外し、靴を脱いで、慌てて昔の先祖のように四本足で歩いた。

 でも、さすがに恥ずかしくて服は脱げなかった。

 そこまでプライドを捨てることができなかったのだ。


 そんな悩み多きある日のことだった。

「あら、貴方、素敵な服を着ているのね?」

 突然、ハダカ猿族のメスが話しかけて来たのだ。


 彼の目の前にしゃがみ込んだそのメスは、白黒の召使のような衣装を着ており、頭の毛は真っ赤で、後ろの下部だけ白かった。 


 彼女は最近、イメチェンを意識して、金髪だったウィッグを変えてみたのだが、そんな事を彼は知る由も無いのだった。


 その時の彼は、まだパイロットスーツのままだった。

『仕方ないんだ。着替えを洗えないから、外出はコレで着回すしか…。』 

「へえ、大変なのね?」


 彼はとても驚いた。

 何故なら、今、自分が頭の中で考えたことが、そのままこの下等な猿族に伝わったからだ。

『まさか、こいつ、テレパシーが使えるのか?』


「まあ、似たようなチカラよ。それにしても下等だなんて、貴方、失礼ね?」

 そう言いつつも、彼女は笑顔だった。


挿絵(By みてみん)

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