㉜ スペース・キャット
彼は考えていた。
どうしたら通りすがりの犬族と、うまくやっていけるのかを。
いつも二本足で歩く、大型の体毛の薄いサル族が引っ張る紐につながれて、やって来るあいつら。
大体やつらが現れるのは、朝と夕方が多い。
急に大声でわめくやつもいれば、顔をベロベロなめてくるやつもいる。
本当にやっかいなヤツラだ。
そもそも現地の猫族たちが野性的過ぎるのだ。
どうして道の真ん中で、みんな脚を広げて毛づくろいができるのだ?
恥ずかしい!
あのころより気温が高くて、自分たちが比較的毛深いのは分かる。
しかし、せめて下着くらいは身に着けて欲しいものだ。
それにどいつもこいつもニャーニャーと古いネコ語をしゃべっている。
誰ひとりテレパシーを使えないようだ。
やっぱり、何かがおかしい…。
何故ここでは皆、こんな下等生物のような振る舞いをしているのだ。
さっぱり理解ができない。
まさか彼等はやってしまったのか?
あの伝説の最終戦争を。
そんなアレコレを悩んでいる彼は、猫族の王子ミケーネ。
ついこの前、長い宇宙旅行から帰って来たのだ。
思い返せば、父の猫王が急に「お前もすっかりイイ大人になったな。そうだ旅行にでも行ってこい。」と言ってきたところから、既に様子がおかしかったのだった。
いざ帰って来てみれば、出かける時には宇宙港だった場所は、すっかりただの原っぱになっていた。
宇宙船にはタイムマシンの機能もあったから、ウラシマ効果のことも考えて、帰る場所と時間を調整して、座標を入力したつもりだったのだが…。
念のため、空気中の放射線量の安全性を確かめて、宇宙船から出てみて驚いた。
出会う猫族が、みんな裸で四本足で歩いているのだ。
彼は周りから怪しまれないように、手袋を外し、靴を脱いで、慌てて昔の先祖のように四本足で歩いた。
でも、さすがに恥ずかしくて服は脱げなかった。
そこまでプライドを捨てることができなかったのだ。
そんな悩み多きある日のことだった。
「あら、貴方、素敵な服を着ているのね?」
突然、ハダカ猿族のメスが話しかけて来たのだ。
彼の目の前にしゃがみ込んだそのメスは、白黒の召使のような衣装を着ており、頭の毛は真っ赤で、後ろの下部だけ白かった。
彼女は最近、イメチェンを意識して、金髪だったウィッグを変えてみたのだが、そんな事を彼は知る由も無いのだった。
その時の彼は、まだパイロットスーツのままだった。
『仕方ないんだ。着替えを洗えないから、外出はコレで着回すしか…。』
「へえ、大変なのね?」
彼はとても驚いた。
何故なら、今、自分が頭の中で考えたことが、そのままこの下等な猿族に伝わったからだ。
『まさか、こいつ、テレパシーが使えるのか?』
「まあ、似たようなチカラよ。それにしても下等だなんて、貴方、失礼ね?」
そう言いつつも、彼女は笑顔だった。




