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「迷い巫女と青年サン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第16巻)  作者: サナダムシオ


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③ ポータル

「貞子さん、貴女はあの箱を取り返すために、彼等を追ってきたのですね?」

 サンジェルマンは質問を続ける。

「そう…なんです。良く分かりましたね?」

 相変わらず貞子はキツネに化かされたような気分だった。


「貴女は、下鴨神社の鳥居を使って移動したのですね?」

「多分、そうです。夜中に鳥居の真ん中をくぐったら、こんなことに…。」

「私なら貴女を、元の時間の元の場所に戻すことができます。どうです。私に任せてみませんか?」


「ええ、でも…その前に…。」

「理解してます。あの箱を彼等から取り返さなくてはなりませんね?」

「そうなんです。あれは、おばあ様が土蔵に大事に仕舞っておいた、貴重なものが入った箱なんです。」


「それは、乾燥させた人魚の肉ですね?」

「!?」

「貴女の居る所より、時間的にずっと後で、私と真田雪子という者が、それを預かる約束になっているのです。」

「ええっ…そんな?」


「分かります。急にそんな荒唐無稽な事を言われても、信じられませんよね?」

「…。」

「でもそれが事実なんです。そんな訳で、このままだと来たる将来、私も困ることになるので、一緒に箱を取り返しに行きましょう。」


「私を…手伝って下さるというの?」

「そうです。是非、お手伝いさせて下さい。」

 彼女はしばし迷っていたようだが、やがて自ら決意を固めた。


「分かりました。他に頼る方も居ませんから、貴方を信じることにします…ところで、ここはどこなんですの?」

「ああ、それもお伝えしなくてはですね。いいですか。信じられないと思いますが、ここは西暦1836年、つまり和暦なら天保7年の7月31日、午前1時過ぎの、仏蘭西国の巴里という街なのです。」

「???」


「ああ、未来の和暦を言われても、ピンと来ないですよね。お察しします。ここは貴女の居た場所から、地理的にも遠く離れていますが、時間的にも、およそ40年程未来なのです。」

「う〜ん…。」

 貞子はすっかり参ってしまったようだった。


「無理に理解しなくても、大丈夫です。いつかきっと分かる日がきますから。」

「…いえ、過去や未来に行ける鳥居の話は、以前お祖母様に聞いていたので…あれ、本当だったんだ…。」


「少なくとも、さっきの二人組は、鳥居の使い方を理解していたようですね。」

「…私はとにかく、危ない目に遭うといけないから、鳥居の真ん中は決してくぐるなと、幼い頃から常々、お祖母様に言われていました…でも凄い、本当だったんだ。」


 彼女はもう、ただただ感心しきりだった。


挿絵(By みてみん)

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