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「迷い巫女と青年サン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第16巻)  作者: サナダムシオ


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㉗ クリスマスイブ

 あれから約15年。サン・ジェルマンは35歳になっていた。

 その後も彼は、タイムトラベルを何度も繰り返した。

 安定して炎を操る術も身に着けて、剣技にも更に磨きをかけていた。

 そしてパリの社交界にも顔を出し初め、少しずつ頭角を現していた。


 つまり、今まさに、彼は中世のオトナの男として成熟し、一人前になりつつあったのだった。


 そんな1726年12月24日の夜10時を過ぎた頃…。 

 突然、彼の部屋の窓を「ドン、ドン」と叩く音がしたのだった。


 彼は久々にフランスから生家に里帰りして、ベッドに入ってウトウトしたところだったので、ビクッとしてしまった。

 

 そして、この部屋が3階であることに気がついて、更にビクビクしてしまった。

 こんな夜中に、バルコニーも無い3階の窓を叩ける者など、モノノケの類と相場が決まっているのである。


 しかし、今の僕には、火球を出す術がある。それに剣技も相当磨いた。何がやって来ようが、負ける訳がないのだ…と、布団を被ったまま、彼は自分に言い聞せる。


「ねえ、いい加減、開けてよ。外は寒いんだけど?」

 それは、懐かしい日本語の声だった。

 彼は思わず自分の耳を疑ったが…直ぐにベッドから飛び出して窓に向かった。


 窓の外で空中に浮かんで居たのは、果たして紛れも無く愛しの真田雪子だった。

 しかし、彼は戸惑いを隠せなかった。

 何故なら、彼女が着ている服の色が、真っ赤だったからだ。それに何だか白くて大きな袋を担いでいる。


「何ボンヤリしてるのよ?は・や・く!」

「あ、ああ、今開けるよ。」

窓から外の冷気とともに、赤い服の雪子がフワリと入って来た。 


 ふと外に目をやると、月明かりの中で、庭に薄っすらと雪が積もっているのが見えた。道理で寒い訳だ。


「ああ、寒かった。目立つのは悪いと思って、ビートルを少し離れた所に停めたのよ。失敗だったわ。光学迷彩を使えば良かった。」


 久しぶりに逢えた雪子は、相変わらず、分からない単語を使っていた。またそのうちに教えて貰おう、とサン・ジェルマンは思った。


「やっぱり暖炉はいいわねえ。視覚的にも暖まるわあ。」

 と白い手袋を取って、炎の前で手を擦り合わせる雪子。


「あの、今日は急にどうしたんですか?それにその赤い服は、一体…?」

「ああ、コレ?だって今日はクリスマスイブでしょ?だから良い子のサン・ジェルマン君に、プレゼントを届けに来たのよ。」


「僕はもう、結構なオトナですけど…。それに、だからって赤い服じゃなくても…。」


「ああ、そうか。ごめんなさい。赤い服はずっと未来にコカ・コーラがCMで定着させたんだった…。」


挿絵(By みてみん)

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