㉓ サーヴァント
「私の式神が欲しい、というお話でしたね?」
「はい。大変ぶしつけなお願いですが、是非とも…。」
貞子は両手を合わせて懇願する。
「そうですね。ただ差し上げるというのも、いささか興ざめなものです。ここは一つ、この暇な田舎貴族のお遊びに、付き合っていただけますかな?」
「…と、仰っしゃいますと?」
「私と勝負して、勝ったら式神を差し上げましょう。いかがです?」
「…他に手段が無いならば。」
「よし!決まりですね。では、そちらの異国のお方。」
彼は後方のサン・ジェルマンに声を掛けた。
「はい?」
「貴方に、私の式神と勝負をしていただきましょう。」
「ええっ!?」
「…因みにコレも私の式神ですが。」
そう言って彼は、それまで隣に居た少女に手をかざすと、その少女は1枚のヒトガタの紙になってしまった。
「…コレは私の話相手専用なので…」
と言いつつ、笑顔で彼はその紙をしまう。
つまりそれが、先程までの貞子の違和感の正体だったのだ。
その様子を見ていたサン・ジェルマンは、すっかり度肝を抜かれてしまった。
「貴方のお相手は、こちらです。」
そう言うと晴明は、懐から別のヒトガタの紙を取り出し、それにフッと息を吹き掛けた。
するとそれは一人の屈強な武人の姿に変わった。
「この式神は少々変わり者でね…。」
晴明は言う。
「…生まれ変わったら、人間になって、ヤマトだかムサシだかの名を名乗り、どこまでも強さを追求する、剣聖として生きていく、などと常々言っているのですよ。」
そう言いながら彼は笑ったが、サン・ジェルマンは笑えなかった。
何故なら、日本の歴史はまだまだ勉強不足とは言え、普段から剣の鍛錬を積んでいた彼は、流石に天下の剣豪たる、宮本武蔵の名前ぐらいは、知っていたからだった。
「はい、こちらをどうぞ!」
そう言って晴明が、腰につけていた刀を鞘ごと投げて寄越した。
それを受け取ったサン・ジェルマンは、取り敢えず抜いてみる。
初めて見る日本刀は、片刃で反りが入った物だった。自分が普段鍛錬で使っている物との違いに、彼は戸惑いを隠せない。
式神の方も、大刀を抜いた。
そしてそれを両手で握り正眼に構える。
「ちょっと待って、まさか真剣で戦うの!?」
貞子が今さらのように言った。
「そうですよ。他に何だと思っていたのですか?」
何食わぬ顔で、晴明が答える。
「いや、てっきり私が勝負するものと…それなら術のかけ合いになるかと思っていたんです。」
「それは残念でした。そっちも面白かったかも知れませんね?」
この状況で、晴明はニコニコしている。
「しかしこの式神は、本人が納得するまで引っ込まない性格なので…出してしまった以上、もう後戻りはできませんねえ。」




