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「迷い巫女と青年サン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第16巻)  作者: サナダムシオ


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⑱ リトル・プリンス

 次の瞬間、貞子は古風な宮殿の門の内側に立って居た。

 季節は春だろうか?ありがたいことに、ここは穏やかな気候のようだ。

 そこまで考えた時、もう後ろに、雪子とサンジェルマンが追いついて来た。


「今回はまた、早い到着ですね?」と貞子。

「だんだん座標微調整のコツが掴めて来たみたい。」と雪子。


「ここは元欽明天皇の別宮よ。近くに6歳くらいの少年が居たら、きっと彼よ。」

 雪子にそう言われて、サン・ジェルマンが辺りを見回す。

 するとすぐ近くに、明らかに上級貴族の出で立ちをした、聡明かつ品の良さそうな少年を見つけた。


「あそこの縁側に座っているのが、そうかな?」

「ああ、ビンゴね。お手柄よ、サン・ジェルマン。」

「…うん。」

 彼は大人になっても、雪子に褒められると何だか嬉しいのだった。


 早速三人は連れ立ってその少年の前まで行ってみる。

 彼等が目の前に来るまで、その少年はそちらに別段注目もしていなかった。


 それどころか、虚空を見つめてボンヤリしているようにさえ見えた。

 が、しかし、いざ彼等と目が合った瞬間、その少年は、とんでもない事を言い出したのである。


「ようこそいらっしゃいました。あなた方が来るのを、ここで待っていたのですよ。藤原貞子さん、真田雪子さん、それに…異国の方?」


 サン・ジェルマンはとても驚いたが、それ以上に自分だけ名前を呼ばれなかったことに、少なからずガッカリしていた。

 もちろん、他の二人はショックを隠せないようだった。


 特に、これまで何が起きても、余裕タップリの態度で対処して来た雪子の表情が、かつて見たことが無い程に、恐怖に歪んでいたのが印象的だった。


「ああ、申し訳無い。私の千里眼は国内の過去・現在・未来のみに有効に働くので…自己紹介が遅れました。私は、かみつみやのうまやどのとよとみみのみこと。どうぞ厩戸とお呼び下さい。」


「はじめまして。私はサン・ジェルマン伯爵と申します。」

「はじめまして。御明察の通り、私は藤原貞子です。」

「はじめまして。真田雪子です。厩戸様、それでしたら、私どもの用向きも、もうご存じですね?」


「もちろんですとも。」

 彼はそう言うと、傍らに置いてあった金色の軸に巻かれた巻物を差し出した。

「あなた方は、コチラをご所望でしょう?」


「ありがとうございます。それは未来記ですね?」

 そう尋ねたのは貞子だった。

「そうです。その中でもコレは、京都の下鴨神社に先祖代々仕える、あなた方藤原家専用にしたためたモノです。」

 つまり未来記は、コレ一つだけではないらしい。


「では、それを頂くのと引き換えに、どうかコチラの玉をお納め下さい。」

 彼女はそう言うと、例の巨像の左眼の玉を差し出した。


「ありがとう。コレ、欲しかったのですよ。この世の本当の姿形を表す玉。異国に有るとは聞いていましたが、なかなか出かけることが叶わなくて…。」


 厩戸は無邪気そうに笑った。

 それは、初めて彼が6歳の少年に見えた瞬間だった。


挿絵(By みてみん)


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