⑬ デザート
さっきまで居たところは、2月上旬の京都だった。
だから当然寒かった。
しかし次の瞬間、信じられないくらい暑くなった。
しかもなんだか空気が乾燥している。
そして何より眩しい。
エジプトのゲートは、スフィンクスの前足の間に有ったのだった。
貞子は何だか眩暈がした。
しかし、ぼうっとしているヒマは無かった。
何故なら、長槍を持った蛇女たちが、周りにどんどん集まって来たからだった。
貞子は直ちに槍を持った手を凍らせようとしたが、できなかった。
空気中の水分が圧倒的に足りないのだ。
彼女は途方に暮れたが…。
「お待たせ!」
元気な声とともに、雪子とサン・ジェルマンが、貞子と蛇女たちの間に割って入るように出現した。
と同時に、雪子が念動力で10名ばかりの蛇女たちを吹っ飛ばす。
次に雪子は、黒いブレスレットをサン・ジェルマンにパスした。
サン・ジェルマンは、そのブレスレットで光学迷彩を展開し姿を隠した。
残りの蛇女たちがそれに気を取られている隙に、雪子が貞子の腰に腕を回す。
「行くわよ!」
そう言うと同時に、貞子を連れて飛び上がり、雪子はそのまま三段跳びで、後にクフ王のピラミッドと呼ばれることになる、金字塔の頂上までたどり着いてしまった。
そこにはキャップストーンが確かにあった。
それはまるで透明な黄金のような不思議な色をしていた。
「やはりオリハルコンだったわね。」
雪子は呟いた。そして貞子に促す。
「さあ、早く!」
言われて貞子がオリハルコンに手を掛ける。
その透明な四角錐の物体は、底面が30cm四方程の大きさで、思いのほか軽く、簡単に彼女の腕の中に納まってしまった。
すると、それまで光り輝いていたピラミッドが、火が消えるようにただの黄土色に変化してしまった。
「まるで電源が落ちたみたいね。」
また雪子が呟いた。
「どうやらピラミッドは、蛇女たちの発電所もしくは変電所だったようね。」
「そうなんですか?コレ、持って帰っても大丈夫なんでしょうか?」
貞子が心配そうに言う。
「たぶん、彼女たちのこれ以上の活動を阻止することも、この使命の目的の一部なんでしょうね。」
「さあ、長居は無用よ。行きましょう。」
雪子はまた貞子を抱えて、三段跳びでスフィンクスの前足の間まで戻った。
「お先にどうぞ!」
彼女はオリハルコンを抱いた貞子を送り出す。
貞子はスフィンクスの胸に向かって走ると、フッと消えてしまった。
「サン・ジェルマン、ブレスレットをこっちへ!」
雪子の一言で、彼は光学迷彩を解除し、彼女にブレスレットを投げて寄越した。
雪子が映像を出し、貞子の行方を追跡した。
「あら?座標は確かに藤原家だけど、時間が?…まあ、いいわ。このままを入力して!」
言われるままにサン・ジェルマンは、ポータブルタイムマシンを起動した。




