⑪ ミッション
「どうかしたの?何て書いてあるの?」
残念ながら、まだ筆文字解析のスキルは未搭載の、雪子が貞子に尋ねる。
「…コレには、例の鳥居の件について書かれています。」
貞子が震える声で答える。
「一度でもアレを使って、他の世界に行った者には、定められた使命があると。」
「その通りです。」
節子が話の後を引き取る。
「貞子さん、貴女は、蛇男たちを逃がすまいと必死だったとは言え、あの❝時の門❞をくぐってしまいました。」
「…はい。」
「ですから貴女は、これから何度もあの門をくぐり、そこに示された七つの使命を果たさなければなりません。それが貴女の定めとなりました。」
「…巻物の内容は確かに拝見しましたが…それは、かなりの難題のように感じます。おばあ様の御助力はいただけないのでしょうか?」
「残念ながら、同族からの助けは禁止されています。ですから、この私は手伝えません。」
節子は厳しい表情でそう言った。
「しかし、旅の途中で出会った者に、助力を求めることは、禁止されておりません。」
貞子はすがる視線で、サン・ジェルマンを見た。
サン・ジェルマンは雪子を見た。
雪子は…両の掌を上に挙げて、あ〜あ、という欧米風のジェスチャーをしていた。
「イイわよ。どうせ暇なんだから。」
「それで…何をどうすればいいのかしら?」
雪子が尋ねる。
「まず一つ目の使命は…。」
「…ああ、ちょっと待って。録画するから。」
雪子はそう言って、セーラー服の左の長袖をたくし上げると、黒光りするブレスレットのようなものを出した。
そして何やらそれを操作すると、貞子を促した。
「いいわよ。続きをどうぞ。」
「…一つ目は、伴天連宗の祖が生まれる一万年前の金字塔から、その頂を持ち帰ること。」
と、貞子。
「つまり、紀元前10000年のピラミッドから、キャップストーンを取って来いと?」
余りの難題に呆れる雪子。
「二つ目の使命は、その頂を我が家の庭に埋めること。」
「…たぶん、何か結界めいたモノを作るためね。」
「三つ目は、伴天連宗の祖が生まれる二百五十年前の太陽神の巨像から、その左眼を持ち帰ること。」
「…それは、伝説のロードス島のアレのことだわ。」
「四つ目は、その左眼を持って、伴天連宗の祖が生まれてから六百年後の厩戸皇子に逢い、それを渡すこと。」
「…聖徳太子って実在したのね。」
「五つ目は、その見返りに彼から❝未来記❞を受け取り、我が家に持ち帰ること。」
「…今後の事態に、前持って備えるためね。」
「六つ目は、安倍晴明の式神を一柱もらってくること。」
「…安倍晴明も架空の人物じゃないんだ。」
「七つ目は、その式神を我が家の神棚に祭ること。」
「…これも結界作りの一環ね。」
「尚、この使命を始める時は、午前零時に下賀茂神社の鳥居の真ん中をくぐれば、その後の事は、この順番に必要な場所に出られる、と書いて有ります。祖母宅に戻ったら、またその都度、鳥居まで行かなくてはなりません。」
「よく分かったわ。善は急げよ。早速今夜から始めましょう。」




