家族
幼い頃からよく千年弦也は人の死を身近にした。父親は弦也が三歳の頃に交通事故に巻き込まれ死亡。仲が良かった隣の家に住んでいた筈の家族は強盗殺人で亡くし、今弦也の目の前では母親が心臓の病気で病床に伏せていた。
「弦也」
「何母さん?」
「貴方を一人にして、ごめんなさい」
「……」
「お父さんの所に先に逝く私を…許して」
そう言うと母親は力が入らない体でも精一杯手を伸ばし弦也の頭を無でようとし、そこで力尽きたのか最期に弦也の頬を掠めて息を引き取った。
「…許すも何も、母さんは何も悪くないじゃないか」
こうして小学校二年生にして弦也は家族を失った。弦也は母親も息を引き取ってしまってもう古びた一軒のアパートには自分しか生きる者が居ない場所で、亡き母親の横で座りながら頼る親戚も居なくて途方に暮れていると背後から聞こえて来た声に振り向いた。
「これからどうすれば良いのかな」
『なら遊ぼう』
「え?」
弦也が振り向いた先は視界いっぱいに広がるのは大きな口と、口の中の赤。赤、赤、赤。それは大きな口の中で弦也の左腕と僅かに左脇腹を食い千切貪っていた。
「あ、あ、嗚呼あ"あ"あ"ぁ"ぁ"…!!!!」
『ニヒッ』
「い"だぃっ…!!」
『美味しい、楽しい!ニヒッ、ニヒッ』
大口を開けた化け物は刹那の内に弦也の体を食い千切っていたのか、口の中にあった弦也の肉を咀嚼し終わると、ニタニタと変な声で笑って再び弦也を喰らおうと近付いて来た。
「ぐる、な、…」
『次は何処がイイかな〜ニヒッ』
弦也は近付いてくる化け物に欠けた体を痛みで涙を流して横に転がって見上げ声だけでも抵抗を示すも、近付いてくる化け物は止まらずに次は何処を喰らおうか品定めしていた。そして化け物は品定めを終えたのか弦也の右足を持ち上げ大口を開けた。
「ぃや、やめ、ろ…」
『ニヒッニヒッ』
「っ…、やめろーー!!!」
『ニヒッ…ヒ…?』
大口の化け物は弦也の右足を持ち上げ、舌で一度舐めて味見をしてから小さな声で抵抗を示す弦也に笑って弦也の右足を喰らおうと大口に力を込めた瞬間、弦也が体の痛みも無視して必死に叫ぶと目の前には青い五芒星の光が現れて、喰らおうとしていた大口の化け物の体半分を消失させた。そして化け物は何が起きたのか分からないまま体を床に打ち付けて倒れた。
「…何が…、あ…はぁ、はぁ、死ぬ…の…かな」
弦也は何が起きたのか分からなかったが、大口に喰われ痛む傷にや出血し過ぎた体に力が入らず思考もままならないまま、自分も父親や母親、仲が良かった隣の家に住んでいた家族達の様に死ぬのかと細くなる呼吸に更に涙を零した。
一旦別視点になるので、ここで投稿させて頂きます。
今日中か明日中には続き上げます。