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8話 魚人の生態

ソロン

冒険者になった少年。武器は小型のナイフ


アテナ

冒険者になった少女。武器は使い込まれたナイフ


ルナ

ダンジョン攻略者の冒険者。魔物に友達がいる。

幻想的な大きな空洞を抜け、再び狭い道へ入る。

道のあちこちに光る草や苔なんかが生えていて、ランプなしでも薄くまえが見えるくらいには明るかった。


「あ!みてください!なんか扉みたいなのがありますよ!」


「お宝か!?アタシ行ってくる!」


「あ!アテナさん!危ないですって!」



アテナさんは木造の扉へ向かって全速力で走っていった。

僕もその後ろを追いかけるが、アテナさんに敵うわけもなく、距離は引き離される。



「鍵は……かかってない!よし開けるぞ……っ」


「気をつけてくださいね!中に毒ガスとか、開けたらトラップとかあるかもしれないので……っ!」


「お、おう……すぐに逃げられる準備はしとけよ……」


アテナさんが扉に両手を当て力を込める。

ギギィと開けたその先は真っ暗だったのでランプを掲げた。


「なんかあるか?」


「いえ何も……でもなんか生活した後みたいなのはが残ってますね。

干からびた海藻、お椀、木の棒………食事でもしてたんでしょうか?」


「食事?あいつらって食う必要性あるのか?」


「魔物は基本的にダンジョンの中では食べ物には困らないはずだよ。

ダンジョンから直接魔力の供給があるからね。」


「じゃあこれは一体……?」


「このダンジョンの魔物は魚と人か人に近い生物が合体して魔物になったものだ。

生前の暮らしを思い出してやってみようとする個体がいたんだろうね。食べ物は海藻だけど、なんだか人間の食事風景に似ていると思わない?」


そう言われてみると……

お椀に入ったまだ干からびていない海藻も近くに置かれたいい感じの木の棒も、食器にしか見えない。


「魔物にも知性がある。魚人は人とつくくらいだからおそらく人と魚が混ざった生物だ。

頭が魚になってしまったからあんな行動ばかりしか取れないけれど、その根っこには人間と同じ習慣が根付いているのかもしれないね」


それ以外部屋には何もなかった。

なので次に向かうことにした………のだが



「行き止まりじゃん!」


「とりあえずきた道を戻って、別の横穴を調べてみるしかないですかね」


「その必要はないよ。ここであってる」


ルナさんは両手を壁に翳し、水魔法は発動させる。


「この群青の洞窟は水魔法を使わなければ入れない場所がいくつか点在している。

それは魚人達が生前の人間らしい生活を送るためのスペースで、魚人達が作った場所だ」


水が行き止まりの壁に当たると、不思議な模様が浮かび上がり、左右に扉が開く。

するとその先にはいくつも扉が設置された集団住宅のような場所にたどり着いた。


「魚人はダンジョンに作られて生まれる生物だ。その姿はすでに成人くらいの大きさで1匹づつ生成される。

だけど魚人同士で番となって子供が生まれる可能性ってあると思わない?」


それってもしかして__という前に答えが目の前に転がってきた。

頭が魚で体が小さな子供……多分、3歳くらいの子供が口をパクパクとしながら家から転がり出てきた。


「ここはそういう人間らしい生活を送れる避難所みたいな扱いだったんだろうね。いや、生物らしくって言った方が自然かな。魚だって交尾をするし、子育てをする種もいたりする。本能に従ってダンジョンの生き物らしくない生態を隠すために作られた場所なんだよここは」


魚人の子供は僕らに警戒心がないのか不用意に近寄ってきて、抱っこを要求する赤子のように手をあげてこっちに近づいてくる。


ルナさんはそんな子供を剣の鞘でこづいて、後ろに転ばせた。



「どっちにしろここから先は行き止まり。そろそろ外では夜に差しかかる頃だから一旦外に出ようか」


こうして僕らは一旦外に出るため踵を返すことになった。


___________



「待て、あの先なんかいる………っ」


「魚人…ですね」


「待って。なんかあの魚人達、何かと話しているような……

あの視線の先にいるの、なんだろう?」



魚人の言葉なんて僕らにはわからない。

だけど魚人達は固まって横を向いて、僕らのいる場所からは影になっって見えない何者かと話をしているように聞こえた。



「私、ちょっとみてくる。君たちは動かないで」


「あ!ルナさん!!」



ルナさんは魚人の群れ(5、6体)いるのに関わらず、剣一つで突っ込んでいった。

鮮やかに魚人の目や鱗の隙間を縫うような攻撃で、魚人達は一掃される。


そして僕たちもそれを黙って見ているわけもなく、戦っているうちにルナさんが疑問視していた魚人と話していた人物の方へと走り出す。



「何者だお前ぇ!!……って、あれ?」


「何もいない………ですね?」


「嘘……逃げた姿すら見えなかったよ!?もしかして瞬間移動とか使えるタイプの魔物だった?」


「あ、でもなんかここだけ生ぬるい。誰かが座ってた跡みたいだ」


「ってことは何かがいたことは確実……それも魚人じゃない何か………一体何だったんだろう」


「ルナさん、一つのダンジョンに二種類以上の魔物って存在できるものなんですか?」


「それはあり得る話だね。世代交代で若くて強い新種の魔物が牛耳る時だったり、隠れながら他のダンジョンを観察、警戒しにくる他のダンジョンの魔物だったり、放浪の魔物と呼ばれるダンジョンをあちこち移動するよくわからない存在もいるくらいだ」


「へぇ……ってことは今のは放浪の魔物だった可能性があるってことですよね!?放浪の魔物って一体何なんですか?」


ルナさんは剣について青色の血を払って、鞘に収める。

そして僕らに向き合って、放浪の魔物について教えてくれた。


「放浪の魔物の正体はわかっていない。人間だっていう説もあるし、特殊な魔物だという説もある。誰も姿を見たことがなく、気づいた時には消えている。幻のような存在だよ」


「そうなんですか……でも魚人と話してたってことは魚人とも繋がりがあるんですね」


「そうだね。これは一回ギルドに相談して見ないといけないかな。私の方でやっておくから、君らは忘れちゃって大丈夫だよ」


こんな事件があったものの、僕らはやっと元来た道を戻ることになった。



明けましておめでとうございます。今年もどうかよろしくお願いいたします。

新年のゴタゴタで投稿が遅れました。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。

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