4話 初めてのダンジョン
ソロン
冒険者になった少年。
群青の洞窟にチャレンジする。
アテナ
冒険者になった少女。
群青の洞窟にチャレンジする。
??
白髪の女性。血のような真っ赤な目をしている。
「来たぜダンジョン!」
「わぁ……本で見た通りの見た目だ!海岸にある洞窟!
中はところどころ水溜りや池のような場所があるらしくて、防水装備は欠かせないんだって!」
「そんなものはねえ!寒くなったら出てくればいい!
今回はアタシたちの歩幅で30歩!それ以上奥にはいかないって約束だもんな!」
「最初だからね。時間も1時間を目安に一度出てきて、もう一度行けそうなら追加で30分ってことにしよう!
何度も言うけどダンジョンは危険な場所だからね!ここの地形は比較的最初は楽らしいけど、割と浅い所にも魔物が湧くらしいから気をつけて!」
「わかったわかった!もう何回も聞いたって!よし、行くぞ!アタシについてこい!」
僕たちの家(路上)から歩くこと数時間。
たどり着いたのは海岸の崖の下にあるポッカリと空いた洞窟……群青の洞窟と呼ばれるダンジョンだ!
他にもダンジョンに挑もうとする冒険者達の姿がある。
だけど装備もガッチリとしていて、多分奥まで進もうという人たちばかりなのだろう。
僕たちみたいに手持ちなしで挑むものは___あれ?なんか1人だけ手ぶらでダンジョンの前にいる人がいる。
腰に一本剣をぶら下げているだけの女性だった。
「ソロン!入ってみろよ!なんかゾワゾワするぞ!」
「あ!待ってよアテナさん!」
ダンジョンの中に入るとゾワゾワとした感覚がした。
まるで水と空気を足して割ったような重い空気……息はできるけどちょっと息苦しい。
それに足や腕を動かすたびに重さを感じる。軽い水の中、みたいな変な感覚だ。
「すげー動きづらい!なんか水の中みたいだな。すでに寒いし」
「……一回出る?」
「ばーか!始まったばかりだろ!じゃあ歩数数えるぞ!」
入ってすぐのところからいーち、にぃー、さーん、と歩幅を数えて奥に進むアテナさん。
心臓がバクバクと音を鳴らしている中、僕もアテナさんの後ろについていった。
「28……29……30!ちょっと空気が重くなったなぁ……ソロン、平気か?」
「うん。僕はなんとか……でも結構暗いね。これならランプか何かあった方がいいかも」
「そうだな。次に来るときはランプも持ってこよう!
もうちょい浅い場所の壁とか見て、宝石が埋まってないか見てこよう!一攫千金一攫千金!」
「あ!ちょっと走らないでよ!アテナさん!」
ほとんど裸足みたいなサンダルでよくあの速度で走れるなぁと思いながら、僕も後を追いかける。
__しかし、本で見るよりやっぱり実物は違うなぁ。
空気が重いとか書かれてなかったし、この場所がこんなに厳格で美しい場所だなんて思わなかった。
「うわっ!?」
そんなことを考えながら歩いてたら何かを足に引っ掛けて転んでしまった。
痛てて……と引っ掛けたものを見てみると、それはキラキラと輝く水晶のようなのカケラを含む手のひら大の石だった。
「見てくださいアテナさん!これ!魔石の結晶です!」
「マジか!もう見つけたのかソロン!」
「これくらいのものじゃ、そんなにお金にはなりませんけど……でもランプを買う資金にはなりますよ!」
「いいじゃねーか!お手柄だソロン!よくやった!アタシもなんか見つけないとな!」
この調子でもっと魔石のかけらでも集めていこう!と2人で手分けして探す。
__ふと、そうしていると視界に妙なあの手ぶらで来ている冒険者(仮)の姿が映った。
「おいお前!ここはアタシらの縄張りだ!横取りは許さねえからな!」
「ちょっとアテナさん!ダンジョン内での縄張りとかはありませんから!それにダンジョン内でのトラブルは一切犯罪にならないんです!
だからむやみやたらに話しかけるのは__!」
色の抜け落ちた白髪。燃えるような赤い瞳
その女性はふふっと笑いながら僕らを見下ろした。
「君たち、初心者でしょ?この場所を選んだのは正解だよ。この辺は危険も少ないし、魔石のかけらもよくあるからね」
「あの……すみません、あなたはここで何を?奥にはいかないんですか?」
「ダンジョンの奥に進むには、そのダンジョンの浅い場所で体を慣らす必要があるんだ。ダンジョンの奥に挑むのは明日。
今日はそのために体を馴染ませに来たんだ。なんせ、久しぶりの場所だからね」
「久しぶり……ってことは以前にもここに?」
「うん。前は1番奥まで行って、秘宝を手に入れた。
それからはあんまりこなくなってたんだけど、あれからどうなってるんだろうって様子を見に来たんだ」
彼女の言葉に耳を疑った。
秘宝を手に入れた?それが本当ならそれはつまりダンジョン攻略者と言うことだ!
「ほ、本当に……?」
「マジか!ダンジョン攻略者なのか姉ちゃん!なあ、アタシアテナ!あんたの名前教えてくれよ!」
「ちょっ、アテナ!この人が嘘ついてる可能性だってあるんだ!そう簡単に名前を教えちゃダメだよ!」
「え!?嘘なのか!?」
アテナが混乱している最中、女性はまたもや微笑むと、手のひらを上に向けた。
見てて。と言われて、素直にその手のひらに夢中になる。
すると手のひらから水が溢れ出し、手のひらの上に水の玉ができた。
「私が手に入れたギフトは水魔法。水を思い通りに出し、操る力」
「すげー!綺麗な水がこんなに簡単に出せるのか!?」
「簡単に見えるけど、手に入れるまでの過程が大変だったからね。
君たちはここが初めてのダンジョン?」
「はい!とりあえず浅い場所で探索して体を慣らしつつ、お金になるものを探していました!」
「このダンジョンの攻略者なら、なんかこうすごいお宝のある場所とか分からないのか!?
アタシ達、お金に困ってるんだ!だから頼むよ!」
身も蓋もなく全てをぶっちゃけたアテナに、その人はう〜んと考え込むような仕草をした。
「お話しする前に、私自己紹介もまだだったね。
私はルナ。君はアテナ。じゃあ君は?」
「僕はソロンと言います」
「そっか。ソロンとアテナ。
お金に困ってるならやっぱりそれなりに深い層までいかないとだめだと思う。そのために強くなることをお勧めするよ」
「アタシはもう強い!だから大丈夫なんだ!
ソロンがビビリだからこの浅い層で我慢してやってるの!」
「ビビりって…僕は本に書いてあったことを言っただけで……確かにちょっと怖いけど」
「強くなるって言うのは魔物を殺す術を手に入れることを指す。
魔物といえど、相手は自分と同じくらいの大きさの生物だ。殺すのは難しいし、抵抗だってある」
「でもアタシ、アタシの縄張りを勝手に使おうとしたやつをナイフで刺したことだってあるんだ!
魔物を殺すくらい怖くないね!」
「ここは攻略済みダンジョンだから魔物は魔法を使ってこないけど魔物は秘宝の力を使って魔法を使って侵入してくるものを攻撃してくる。
攻略されていたとしても、ダンジョンにいる魔物達は必死で冒険者を追い払おうとする。結構侮れないよ」
「怖くないって言ってるでしょ!だからお宝のある場所を教えろよ!
「__そこまで怖くないって言うならそこにいる魔物を倒してごらんよ」
そこ、と指を刺した先には見慣れない生物
二本足で立っているがその肌にはびっしりと鱗がついており、頭に至っては魚そのもの。
手と思われる場所には大きなヒレがついていた。
「ひっ……ま、魔物……っ!なんでこんな浅い場所に!?」
「秘宝を取り返しに来たんだろうね。私が持ってるから。
私がこのダンジョンで死ねば、秘宝はこのダンジョンの奥底へ戻る。
魔物達も魔法を行使できるようになる」
「っ……あ、アタシが守るって言ったんだ!ソロン!お前は後ろにいろ!
アタシがやる……っ!」
「アテナさん!」
やっときましたダンジョン。
ソロン達の活躍に期待していてください!