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11話 2人の冒険と取引成功

ソロン

金髪に丸眼鏡の小柄な少年。新人冒険者。

魔物との交渉に夢を見ている。


アテナ

茶髪に琥珀色の瞳の女の子。新人冒険者。

魔物との交渉は正直無理なんじゃないかと思ってた。


ティナ

人魚の少女。人間に友好的。

ー群青の洞窟ー


「改めて来てみて思ったんだけどさ。この前の魚人の大群やばかったんだな」


「うん。2人だけでくると少し心細いというか……なんかこの前よりも暗く感じるね」


「なんだ?アタシが頼りないって言いたいのか?」


「そ、そんなことないよ!」



ランプを手に入れ、前よりも明るい環境で挑むことができているけれど、

緊張と不安で以前よりも景色を楽しめずにいた。


ルナさんという存在がどれだけ頼もしかったのかが実感できる。


カランっと洞窟の奥で小さな石が転がり落ちただけでびくりと肩を揺らし、警戒体制に入る。

僕はもちろん緊張してるし不安なんだけど、アテナさんが僕からみても過剰に緊張しているように見えた。



「あ、アテナさん」


「っ!__びっくりするから急に話しかけんな!」


「そんなにずっと気を張っていたらすぐにバテるよ

もうちょっと気楽に……」


「アタシが気楽にいたら、お前が死ぬかもしれないんだぞ!どこから魚人がやってきても大丈夫なようにしないといけないんだ」



まるで他所に預けられた猫のように過多な警戒を続けるアテナさん

以前はルナさんがいたから多少のことがあっても対処してくれると油断することができていたんだろう。


やっぱり、噴煙の火山に行かなくてよかった。

知っているダンジョンの中でもこんな状態になってしまうのに、知らないダンジョンの中ならもっと緊張してしまう。



「……アタシがビビってるって思ってるだろ。悔しいけどそうだよ。この前はルナさんがいたから、何かあっても大丈夫だと思ってたんだよ」


「それは……僕もそうでした。最初の魚人の大群を薙ぎ払った姿を見てから、この人がいれば大丈夫だってほとんど観光のような気分でダンジョンに入ってた」


「だからお前も気張れ。とにかく身の安全が第一だ。お宝も大事だけど、アタシ達は大怪我せずに家に帰るのが一番大事なんだからな」


「うん!僕も単独で魚人を倒せるようになればきっとアテナさんにこんな苦労かけることもなくなるよ!

だから頑張る!」



僕がガッツポーズをとり、アテナさんに笑いかけた時だった。



「___っソロン!後ろ!!」



バッと振り返るとそこには魚人の姿が。

パクパクと口を開閉させ、何を考えてるか分からない魚の表情で僕を見つめる。


その手が僕に向けられていることに気がついたのは、一瞬間を置いてからだった。



___視界がブレる。


洞窟の壁に体がぶつかったことだけが分かった。肩や背中、頭が痛い。

衝撃に喘いでいる間に魚人はアテナさんに襲い掛かろうとする。



「__っアテナさん!!」


「おりゃっ!」



前に差し伸ばされた手を掴み、鱗の目に沿ってナイフで傷を与えた。

魚人は驚いて後ろに下がる。


魚人の腕は大量の出血をしている。



「よし!ナイフでも鱗の流れを見ながら切れば刃は通る!これなら!」



僕も体勢を立て直し、前後から魚人を挟み撃ちにする。

魚人はどちらから攻撃が来るか分からず、オロオロと警戒している。



「魚人の鱗の流れに沿って、ナイフを入れる!!」



アテナさんが魚人の懐に突っ込んだ。

しかし___



「やべっ……うまく入らなかった!」



魚人の鋭い爪を持つ手がアテナさんの肩を掴み、魚人の口がアテナさんの頭を狙う。



__ここでできなきゃ、アテナさんが死んじゃう!!



僕はナイフを握り締め、アテナさんに夢中になっている魚人の背中にナイフを当てた。

鱗の間にナイフを差し込み、突き刺す!!



ブシュッと音を立てて血が吹き出す。



魚人はアテナさんを手放し、その場に倒れ込んだ。

致命傷ではない。多分すぐに起き上がってくる………っ!



「やあああ!」



アテナさんが魚人の目を狙ってナイフを突き刺した。

完全に止めを刺された魚人はびくりと一瞬痙攣してから息たえたようだ。



「やった!ルナさんがいなくてもアタシ達だけで倒したぞ!」


「アテナさん!肩に血が……っ!さっき肩を掴まれた時に怪我を!?」


「こんなのつばつけてりゃ治るよ!さあ、先に行こうぜ!目指すはあのでっかい洞窟だ!」



__________



あれから魚人の襲撃はなく、大きな洞窟の空洞に出ることができた。

この前はこの大きな洞窟の大量にある横穴の中の一つを引き返したところだ。



「おいソロン、隠れろ!」


「魚人がいますね……魚人っていうくらいですから、やっぱり水上で戦うのはちょっと不利かもしれないです」


「あいつがいなくなるまで待機だな……

……ん?またあの歌が聞こえてこないか?」



耳を澄ますと僕らが隠れている場所の奥から微かにあの人魚の歌声が響いている。



「どうする?アタシ達のこと、食おうとしてるかも」


「でもルナさんの友達ですよ!?ちょっとだけ会いに行ってみませんか?」


「う〜〜〜ん………分かった。一応耳は塞いどけよ」


「……うん、分かった」



人魚の歌声による魅了は耳を塞いだ程度で防げるものではない。

__それは今、伝える情報じゃないと僕は考えた。



そして細い洞窟の道の奥。

道が陥没し、海と繋がっているだろう場所に彼女はいた。



「___!」


「うわ!やっぱりあの時の人魚だ!」


「歌うのやめたな……ってことはやっぱり魅了させたくて歌ってたわけじゃねえのか」



人魚は僕とアテナさんを順番に指差し、そして最後に虚空を指差した。

そしてコテンと小首をかしげる。



「……あ!もしかしてルナさんはいないのかって聞いてるのかも!

ルナさんは隣町に行ってて今はここにいないんです。師匠に会いに行くとかなんとか……」


「バカかお前。魔物に言葉が通じると思ってんのか?」


「ならジェスチャーで伝えます!」



手と頭を横に振ってここにはいないことを伝える。

すると人魚は少し寂しそうに眉をハの字にしてから、僕らに手を差し出す。



「気をつけろ!海に連れ込まれるかも!」


「っ……そう、かもしれませんけど……でも、僕は!」



怖がりながらも僕は人魚さんの手を取った。

人魚さんはにぎにぎと僕の手を観察するように握るばかりで、海に連れ込もうとはしない。


そして手だけではなく髪をわしゃわしゃとしてみたり、服をめくってみたりと色々観察されているようだ。



「あ、アテナさぁん……これ、どういう状況…?……」


「よかったな。モテモテじゃねえかお前」


「魔物にモテても仕方ありませんよ!僕だって可愛い人間の彼女が欲しいです!」


「……へぇ、お前もそういうのあったんだな」



アテナさんは面白がるようにカラカラと笑う。

助けてはくれないようだ。



「__?」


「あ!ちょっ……そこはだめ!お、男としての尊厳とか僕にだってあるから!」


「__♪」


「無理やりチャック引っ張んないでぇ!大した物入ってないからー!」



股の間の息子が気になるのか、人魚さんは僕の息子とご対面したいようだった。

僕は無理やりにでもそれを阻止しようともがく!だけど人魚さん、見た目に反して結構お力強いんですね!!



「ぐぬぬっ」


「ほら、こっちの方が興味あるだろ?そんな汚いもん見ても得しねえぞ」



アテナさんがランプを一つ差し出した。

僕の分とアテナさんの分があるから、一つくらいなくなったって帰り道に苦労はしないけど、それでもアテナさんが人に物をあげるなんて__


人魚さんはランプを手に取るとくるくると上下左右から見て気に入ったように笑った。



ぽちゃんっ



「あ!ランプそのまま持っていっちゃった!」


「普通に泥棒されたな……次会った時は懲らしめて……

……ってあれ?」



水面に消えてから数十秒後にすぐ戻ってきたと思えば、手のひらいっぱいの真珠を差し出してくる。

どうやら、あのランプのお代のようだ。


「すげー!こんなたくさんの真珠見たことねえぞ!これ全部売ったら金貨1枚くらいにはなるんじゃねえか!」


「こんなにいいの?ありがとう人魚さん」



「__ティな』



「え?」



人魚さんはそれだけ言うともう一度水面に潜り、今度は綺麗な珊瑚のかけらを3つほど持ってきてくれた。



「これをやるからティナって呼べってことか?ははっ、なんか言葉が通じてるみたいだな!」


「ごめん人魚さん……じゃなくてティナ!ありがとう!助かるよ!」


「___♪」



ティナはキュルルンと上機嫌そうに鳴いて、手を振ってから水面に消えていった。



「……魔物と取引、しちまったな……」


「うん……やっぱりルナさんが言っていたことってそんなに不可能な夢じゃないのかも」


「認めざるを得ないけど……でも知能の低い魚人みたいなやつは無駄だからな!」



帰り道

魚人と戦闘したところには魚人の死体があるかと思ったら、そこに落ちていたのは一つの大きな魔石。

4〜5cmくらいのボール状の魔石だった。



「これ、普通は倒した魔物から取り出すっていう魔石なんじゃ……」


「その前にあの死体はどこに消えたんだよ!?なんで魔石だけここに残ってるんだ!?」


「死体はダンジョンが吸収したんだと思う。ダンジョンは魔石を生み出す物なので吸収はしない。だから魔石だけが残ったんだね」


「じゃあこれはアタシたちで倒した魔物の魔石ってことか!これも持って帰ろう!」


「うん!」


こんにちは、ななみんです。

見てくれてる方、ありがとうございます。

これからも頑張りますので、どうか見捨てないでください。


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