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1話 始まり

両親の事業が破産した。


お父さんが新しい事業に挑戦しようとして、それが見事に失敗。

そこから雪崩のように元々の事業も上手くいかなくなり、借金まみれの貧乏人になってしまった。


お母さんは烈火の如く怒り、怒り疲れて家を出ていった。実家に帰るらしい。

せめて僕も一緒に連れて行って欲しかったなぁ……


お父さんはあれからぼーっとすることが多くなり、収入は見込めない。

僕が声をかけても、一拍も二拍も空けてから答えることが多くなった。


これはいけない。僕がしっかりしなければ。

お気に入りの丸目メガネをかちゃりと上げ、お金を稼ぐにはどうしたらいいか考えた。


そこで思い出した。

確か、歴史の本か何かに元々普通の庶民だった人が冒険者になり大金を得て貴族となったというお話があるのだ。


そうだ!僕も冒険者になればいい!

ダンジョンは魔物が巣食う危険な場所だとされているが、浅い層なら冒険者初心者でも挑みやすいと本に書いてあったのだ。

幸いにも僕は今年で16歳。冒険者になれる年齢だった。


ボロ雑巾のようになってしまった自分の服を物干し竿に干しながら、僕は冒険者になることを決意した。



「おいお前!!ここはアタシの縄張りだぞ!勝手に入ってくるな!!」


「ひゃあっ!?な、縄張り……?えっと……貴女は誰ですか?」



家無しになってしまったので、雨風の凌げる路上で生活するようになったのだが、同じように路上で生活する者達とのそりが合わなくて、引越し(仮)をすること数回目の拠点。


また原住民との争いか?とビクビクしながら対応する。

もう出会い頭に殴られるのも、いちゃもんをつけられて有り金をカツアゲされるのもごめんだ!



「アタシはアテナ!ここに住んでる家主だ!

ここは私とビリーの家だ!勝手に入ってくるな!!」


「家って……ここはただの路上です。それに僕も家無しで……ここに住まわせてもらってもいいですか?その……ほんのちょっとの間だけでもいいので!」


「フゥン……お前あれだろ?この辺りのホームレスの中じゃ新顔だよな?ああそうか!なんかやらかして金を失ったんだ!ふん!ざまあみろ!」


「あ……あの……」



アテナと名乗った女の子は僕より少し年上のように見えた。

ブラウン色の髪をお菓子の包装なんかで使われる細いリボンで結んでいる。

こんな汚い場所なのに、琥珀色の目が綺麗な女の子だった。



「……ここに住みたいっていうなら、お前はアタシの下だからな!

ちょっとでも下手なことやってみろ!お前のことボッコボコにしてやる!!」


「い、いいんですか!よかった……どこに行っても殴られるかカツアゲされるかばかりで……っ!

雑用でもなんでもやります!ああ、でも……僕冒険者になりたいから日中はそんなにここにいないかも……」


「冒険者?あんな危険なだけの仕事の何がいいんだよ?それより金もちジジイの接待した方がよっぽど金が入るぞ!

お前は男だから金持ちのババアの接待をやれ!うまくやればチップも貰える!」


「冒険者は危険なだけじゃないんです!」



僕は冒険者の魅力を余すことなく伝えた。


運が良ければ浅い層でも宝石なんかが見つけられて手軽に大金が手に入る。

実力を挙げて深層まで行けるようになれば、生活に困るようなことにはならない。

冒険者は誰でもなれる職業で、自分たちでも可能性はある。

自分はダンジョンの本をたくさん読んでいて知識もある。


それを余すことなく……いや、ちょっと魅力を盛って伝えた。



「いいじゃねーか冒険者!よぉし、決めた!アタシも冒険者なってやるよ!」


「え?でも危険なのは本当で、女の子にはちょっと危険かもしれないっていうか……」


「お前、アタシのこと舐めてんのか!アタシは5つの時からここの縄張りを守ってきたんだ!

喧嘩も強いし、ナイフで人を切った事もある!お前みたいな軟弱者よりよっぽど強いんだぞ!」



確かにアテナは女の子にしては背丈がある。

僕より年上だから……って言うのもあるけど僕と同じくらいの身長だ。


それにホームレス達の縄張り争いで鍛えられたのだろう二の腕がその歴戦を物語っていた。



「ビリーももう10歳だ。アタシが家を開けてる時に1人で家を守ることくらいできるはずだ。

だからお前と一緒に冒険者になってやる!」


「僕と一緒に?」


「ああ。お前、元々結構金持ちだったんだろ?本とか読んでいろんなことを知ってる。情報は力だ。どこで誰が縄張りを張ってるのかとか、

誰と誰が喧嘩したとか。そういう情報も大事だった。きっと冒険者になってダンジョンに挑むのにも情報がいる。

お前、アタシに情報を渡せ!その代わり、アタシがこの家でもダンジョンでも、お前のこと守ってやるよ!」


どうだ?中々いいアイディアだろ?とアテナは自慢げだった。

そもそも1人でダンジョンに挑むのはちょっと怖かったし、仲間がいてくれるだけ心強い。


それに家の保証もしてくれるのだ。断る理由なんてない。



「うん!僕が知ってることならなんでも教える!僕はソロン!

元々商人をやってた両親の息子なんだけど……破産して借金まみれになっちゃって家を追い出されちゃったんだ。

だから君みたいにホームレスの土地勘とか経験がある人が味方になってくれてとても心強い!ありがとうアテナ!」


「アテナだって?お前はアタシの手下なんだから、アテナ"さん"だろ!」


「ヒィ!ご、ごめん。アテナさん……」


「ん。それでいい。

ああ、ビリーも紹介してやるよ。今は出稼ぎに行ってていないけど、帰ってきたらびっくりするだろうぜ!」


「僕も父さんを紹介するよ。……最近はちょっとぼーっとすることが多いんだけど、本当はすごい人なんだ。

今はちょっとそっとしておいてあげてほしい」


「そういう奴らもたくさん見てきた。だから気にしない。

ほら、これからはアタシらは仲間になるんだ。ちゃんとお前も働けよ?」


「うん!」


初めまして、ななみんです。

初めての投稿です。応援よろしくお願いします。

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