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体育祭

※本作品は、日本航空123便墜落事故を元にしたファクション作品です。登場人物の名前は全て仮名であり、実際の人物にあった出来事とは異なるストーリーで構成しています。


再び望夢が、受験勉強に励む中で、高校での思い出を作る為、高校で開かれる体育祭に参加する事になる。その時望夢は、リレーのアンカーを務める事になったのだが、走る事が苦手であった為、不安でたまらなかった。いざスタートすると、それと同時に、望夢は足をくじいて転んでしまうのだが、望夢はどうなってしまうのか。



 その途中、学校で体育祭が開かれる事になったので、受験勉強の息抜きに、望夢も参加する事にした。


最後の一年であることもあって、この学校での思い出も作っておきたかった。


その体育祭の観戦者として、詩音も誘ったが、その日はバイトが休めないみたいなので、途中から参加する事になっている。


しかし、望夢は運動が苦手で、どうしても不安だったので、普段は使う事のない自転車を漕いでみたり、病気の治療の時にやっていたジョギングよりも、速いスピードで走ってみたりして、体育祭に備えた運動を頑張っていた。


走る事は本当に苦手で、少ししか走れない感じだったが、自転車で遠くに行ったりして、様々な風景を楽しむ事ができたのが、本当に楽しかった。


川沿いの道路を走ってみれば、鯉や、ブラックバス、小魚などが泳いでいて、望夢は魚釣りに関しては、全くの未経験だったが、ここにいる魚を釣ってみたら、楽しいだろうなと想像していた。


すると、その川で釣りをしている人の釣り竿が大きく曲がり、何やら大物が掛かった様子だったのだ。


どんな魚が釣れたんだろうと、その姿を眺めていると、体長80センチ以上はあるであろう、巨鯉がその姿を現したのだ。


そのあまりの大きさと、魚が掛かった後の、パワフルな魚との駆け引きに望夢は感動した。


そして、引き籠っていた自分とは反対に、外へ出掛けては、自然と触れ合う事の楽しさを知る事ができたのだ。


体育祭まであと一週間しかなかったので、いきなり体力をつける事は難しいというのは分かっていたのだが、少しでも自分の頑張れることをやっているという実感が得られたので、運動に対しても、少し自信が持てた。


 そして一週間くらいが経って、体育祭当日の日が来た。


赤チームと、青チームに分かれて、戦う事になったのだが、望夢のチームは青チームだった。


綱引きや、玉入れといった、望夢にとって、懐かしさも感じるような種目で盛り上がっていて、楽しかったのだが、望夢は、リレーに参加する事になっており、それが不安だった。


綱引きや、玉入れであれば、自分が頑張れなくても、誤魔化す事ができるのだが、リレーはそうはいかないので、自分のせいで負けてしまえば、周りにどんなことを言われるか不安だったのだ。


しかも、望夢の順番は、くじ引きで、最後のアンカーを任される事になり、自分のせいで、勝敗が決まってしまうのが、とにかく不安だった。


 そして、リレーをみんなで走る時がくる。


スタートすると、周りの生徒のみんなが、自分よりも遥かに速いスピードで走っており、これはまずいと望夢は思った。


しかも、の青チームがリードしており、望夢のチームはとても盛り上がっていた。


実況「現在青チームがリードしています。赤チームもかんばってください!」


これは、望夢にとっては、最悪の状況だった。


相手にリードされた状態であれば、望夢が逆転できなくても、仕方ないと思えるのだが、自分のチームがリードしている状況であれば、せっかくリードしていたのに、自分のせいで負けてしまう事になる。


しかも、自分より明らか足が速いと思われる生徒が、相手チームのアンカーを務める事になっていたのだ。


「これはだめかもわからんね」という父さんの言葉が、またしても思い浮かぶ。


それでもその後の「どーんと行こうや!頑張れ頑張れ!」という言葉が、頭の中から聞こえて来たので、もう何を言われてもやるしかないと思い、バトンを受け取る位置についた。


怯えたいときは怯えても良い。しかし進むべき時になったら前を向くのだ。


青色のハチマキが、青信号みたいに見えて、もう前に進むしかなかった。


青チームは、大きくリードしており、これは青チームが勝つだろうと、誰もがそう思っていた。


そしてついに、望夢が前の走者からバトンを受け取った。


しかしその時だった、緊張で体が震えていた事もあってか、バトンを受け取った直後に、足をくじいてしまい、そのまま転倒してしまったのだ。


望夢は酷く足を痛め、捻挫しており、これでは走る事ができない。

精神の次は、体が操縦不能な状態に陥ってしまった。


「あーだめだ、終わった」という父さんの言葉がまたしても思い浮かぶ。


これはもうゴールできないだろうと望夢は思ったのだが、その時、またしても、あの時の父さんの言葉が望夢を励ます。


「頭上げろ!頭上げろ!」


墜落前の警報音と共に、その言葉が聞こえてきた時、望夢は、勝負に負けてしまう事が分かっていても、そこで投げ出さず、最後まで走り切る事にした。


123便の機体をコントロールするように、片足で、時々手を下につきながら、足の痛みに負けないよう、懸命に前へと進んでいく。


その時だった。バイトが終わり、望夢の体育祭を観戦しに来た詩音が到着したのだ。


するとそこには、足を捻挫しながらも、懸命に前に進んでいく望夢の姿があったのだ。


すると詩音は「望夢ー!頑張れー!」と励ましの声を掛ける。


望夢も、詩音の応援の声に気付く事ができ、来てくれた喜びで、少し安堵する事ができた。


そして実況や、青チームだけではなく、赤チームの生徒も、望夢に応援の声を掛ける。


実況「足を痛めながらも、青チームのアンカーは、懸命にゴールを目指して、前に進んでいます。頑張って下さい!」


生徒の声「頑張れ頑張れ!」


そんなみんなの姿や、応援の言葉に励まされ、望夢は、このまままっすぐ走ればゴールというところまで来た。


するとそこには、ゴールテープを構え、これまでに走っていた走者が懸命に望夢を励ましている姿があったのだ。


最初は、誰かに笑われているような気がして怖かったが、この学校の生徒は、みんな温かかった。


詩音もそんなみんなの姿に感動して涙が溢れた。


そして望夢は、操縦不能に陥った体を懸命にコントロールし続けた後に、ゴールテープを切った。


実況「青チーム、足を痛めながらも前に進み続け、今ゴールしました!」


よくやったぞ!という生徒の言葉と共に、すぐに学校の先生が駆け寄り、望夢を保健室に連れて行った。


望夢が、最後まで諦めずにゴールした事で、学校中に感動を与える事となった。


 保健室のベッドで少し休んでいると、痛みはかなり引いてきた様子で、先生達も安堵した。


 すると、望夢が横になっている保健室に、心配した詩音がやってきたのだ。


「足を怪我したみたいだけど、大丈夫?」と詩音が尋ねる。


しかし望夢は「ちょっとリレーの時に、足をくじいちゃってさ、でも、もう痛みも引いてきたし、大丈夫。ちょっとカッコ悪い姿を見せちゃったな」と平気そうな姿を見せた。


すると詩音は「うううん、足を痛めても、負けると分かっていても、そこで投げ出さずに、懸命にゴールを目指す姿、本当にかっこよかった!感動して涙が出たし、望夢が走るリレーに間に合って本当に良かった」と望夢を讃え、望夢は諦めずにゴールできて本当に良かったと思った。


そして、これまでに打ち砕かれた青春が、取り戻されたように感じたのだ。


そして詩音がこうつぶやく。


「墜落現場で私が死にそうになってる時、隣でお母さんが言ってた。期待した事の全てが裏切られて、最後の希望が絶たれても、決して諦めないでって。私もそんな人間になれるかな」


そんな詩音の言葉に対し望夢は「きっとなれるよ。諦めない人間になる事を諦めなければ。仮に心が折れて、もうだめだと思っても、そこから立ち上がれれば、いつでも諦めなかった事にできるんだ。だから約束しよう。この受験を終えるまでは、お互いに決して諦めないって」と伝え、その言葉を聞いた詩音は嬉しくて、本当に喜んだ様子で望夢に対して頷いた。

読んで頂き、本当にありがとうございます。

520人の命と、4人の生存者、そして遺族の方々と、関係者の方々の犠牲や尽力があった事を元に、こちらの【ラストメッセージ】を届ける事ができたという事を忘れないで下さい。

どうかよろしくお願い致します。

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