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二度目の修学旅行。二日目〜part3



白木の先輩が開催した展覧会を見終えた、別れ惜しそうに一向に白木を離そうとしなかった先輩と揉めながらも何とか別れ、小腹の空いた彼女らは観光名所を巡りながら食べ歩きツアーを開催していた。


「ーー・・うぅーん。京都の抹茶アイスは本当に美味しいわねっ!」


「やばいですね、抹茶と名の付く物全部が美味しそうに見えてしまいます...」


彼女らは神社の麓で、そこそこ歩いて火照った体をアイスで冷やしていた。


「ふふっ、すっかり術中にハマってますね。」


「何っ?!いつもまに抹茶プロパガンダに洗脳されていたのね...恐ろしいわ...」


「ソフィアさん、かわいいね。」


 本当か冗談か分からないソフィアの反応に、白木は純粋な笑顔を振りまいていた。


「「「.....。」」」


「...?」


「..か....かわいいっー!よしよしよし、春ちゃんは本当に可愛いですねー!」


白木は突然黙りこくってしまった彼女らを不思議そうに見ていると、久留米は瓶の蓋が弾けるように愛で愛でモードを全開にして、白木を抱きしめていた。


「うわっ...へへ、くすぐったいよぉ..」

 

こういった絡みにはもう慣れてしまっているのか、白木はただ純粋に心地良さそうに彼女に愛でられていた。


「...こういう可愛さが必要なのかしら..」


「春ちゃんさん、本当に男の子なのですか...もう、どっちか分からないです。」


そして、ソフィアは女の子としての可愛さを、彼から参考にしようとしており、一方で、青鷺は今まで見たことのない奇跡的な存在を前にして、頭を悩ませていた。


「...あれ、そういえば海道くん。どこ行きました?」


 そして、大体こういう状況になったら海道が白木を救出するのだが、一向に白木を救出しようとしない海道を不思議に思った久留米は、彼の姿を探した。


「え、いや、後ろにって...ん」


 いつもなら、彼は変な奴が来ないように周囲を見渡しているはずが、そんな彼の姿はどこにもなかった。


「トイレじゃないですか?」


「うーん、それだったら、清澄は誰かに伝えるはずだよ?」


「「「.....。」」」


 トイレとかなら誰かしらに行ってくると言い残すはずのため、その線は消え、だんだんと状況が掴めてきて、空気が嫌に静かになってきていた。


「....神隠しかしら..」


「えっ?!っちょ..怖いこと言わないでくださいぃぃ...」


 そして、ふとソフィアが考えうる事態をぼそっと言うと、青鷺は妙に信憑性のある怖さに駆られ、ソフィアにしがみ付いていた。


「..まぁ、あくまで推測だから。多分大丈夫よ、なーち。」


「うぅ...」


思ったより怖がっていた青鷺にしがみ掴まれながら、ソフィアは彼女の頭を優しく撫でて慰めていた。


「...うーん、確かに..ここの神社は山を神様として祀っているので、もしかしたら..山の神様かもしれないですね。」


 一方で、それを聞いた久留米は神妙な面持ちで顎に手を当てて、他の可能性を挙げていた。


「...海道くん。何かしたんですか....」


ソフィアの説がよりブラッシュアップされ、さらに真実味が帯びてきており、青鷺は仮にそうだとしたら海道は相応のことをしたのかと勘繰っていた。


「うーん、確かに優秀な芸術家やアーティストは、あまりに素晴らしい輝きを放っているから、神様が早くに持っていってしまうって話もあるからね....」


そして、白木はそトドメを刺すかのようにそのような話していた。

 

「え...じゃあ、海道くんは...本当に....」

 

青鷺は言ってしまえば、本当にそうなってしまうように思えてしまい、途中で言うのを憚り、今できるのは下山してきたお山を見つめる事だけだった。





しかし一方で、神隠しとか山の神様に連れて行かれたとか、そんな事は全くなく、彼はいつの間にか辿り着いていた、観光地でもなんでもない住宅地を目の前にしていた。


「...あれ、どこいったんだ...あいつら。」


 小山の途中にある神社から下山する際に、風に揺られる竹藪の音と新鮮で綺麗な空気に耽っていた彼は、まんまと彼女らと逸れてしまい、いつの間にかここに辿り着いていた。


「....って、充電切れか...」


とりあえず連絡を取ろうとしたが、こういう時に限って携帯の充電がきれており、万事休すとなった。


仮に、山に遭難していれば一大事ではあるが、運がいい事に、ここは只の住宅地であったのでどうとでもなった。


(...まぁ、ここが杜王町の、いわくつきの所じゃなければだが...)


 嫌な想定が頭をよぎったが、その時はその時で後ろを振り返らなければ良いだけであったため、兎角、その変な想像は片隅に追いやり、まずは連絡方法を考えた。


「..まぁ、同校の奴に借りるか」


 観光地の方に行けば、久留米の無限の友人ネットワークからアクセスできると踏んで、散歩がてら京都の街並みに酔うことにした。



「・・...。」


 京都の街並みというのは、築百年は裕に超えていそうな歴史ある建物ばかりで、まるでその時代にタイムスリップしたかのように錯覚してしまう。


 そう、まるで誰も俺のことを知らない世界で、足を歩ませるたびに時間がゆっくりと暖色の灯籠に溶け込む。


 まぁ、今も似たようなもんか。


 そんななんでもない事を考えていると、ずいぶん前から聞き慣れていた声が聞こえ、酔いが覚めてしまった。


「ーー・・なぁ、そんなヒョロい奴より俺らの方が絶対良いって。」


「あんた、バカぁ?!」


 丁度、路地の向こうにいる桜楼が不良?に絡まれていた。


「あ"?」


「ちょ..うみちゃん...」


 そして、よく見るとチラリと芝春がなんとか穏便にやり過ごそうとしていた。


「あんたみたいに口臭い奴なんかと、比べないでくれる?」


「このアマ...ちょっと面が良いからって言い気になりやがってっ...」


 金髪のいかにもな不良くんは、右腕を振りかぶって桜楼に平手打ちをしようとしたが、一寸で路地裏まで吹き飛ばされていた。


ドゴっ!


「け、けんちゃんっ!このぉっ!..ぐふ..」


「うーん、あんま手荒にしたくなかったんだけど....」


 吹き飛ばした張本人の芝春は軽く手首をほぐしながら、どこか仕方なしに不良らの相手をする事にしていた。


「お、おい、フクロだっ!!」


「「おうっ!」」


他の者たちが一気にかかるが、案の定数秒足らずで


「グアっ..」


「おふぅぅ...」


「キャァーっ!かっこいいっ!さっすが、私のしーくんっ!!」

 

 発起人である彼女は、金持ちの遊び的なポジションで芝春のパフォーマンスを称えていた。


「ははっ、絶対わざとだよね...うーちゃん。」


 こういった事態は前にもあったそうで、芝春のかっこいい姿をみたいがままに、挑発的な態度をしていたと見れた。


(..まぁ、俺の出番はないか...)


 一応、いつでも出れるような体制をとっていたが、案の定の結果に一息ついいていた。


 そして、結局、主人公な芝春くんは、引き立て役を叩き潰して、好感度爆上がりのヒロインに抱きつかれ勝利?の美酒を浴びていた。


(....ん?)


「....ぐ...て、メェ...」


ビリビリッ!


 そう、なるはずだった。


「っ!..うぅ...み...ちゃ」バタンっ


「っ!?...しーくんっ?!」


 まだダウンしていなかった者が、桜楼に抱きつかれ身動きが取りにくかった芝春を後ろからスタンガンで倒していた。


「しーくんっ!起きてっ!!」


 ダウンしてしまった芝春に必死に声をかけるが、完全に気絶していた。


「...ゴホッ..くそっ、ヒョロガリのくせに調子乗りやがって...」


 芝春が加減しすぎたせいで、回復し始めたそいつは桜楼に近づき腕を掴んだ。


「いやっ!なにっ!?」


 芝春が心配でそっちに気が取られている中、そいつに腕を掴まれ怯えていた。


「そいつは、後でフクロにするとして...先にオメェを教育しないとだなぁっ!!」


 先の口くさい発言がクリティカルだったのか、根に持っていた彼は改めて平手打ちを喰らわそうとしていた。


「いやっ...」


 今まで彼に守られていた中、経験ことのない恐怖に駆られ、彼女は目を瞑るしかなかった。


ドゴォォンっ!!


「ぶごっ?!....ぐぅ...ぅ」


先まで目の前にいたそいつは壁に打ち付けられており、コンクリの壁にちょっとしたクレーターが出来ていた。


「っ?!....ん?」


突然の大きな音に驚いた彼女は、瞑っていた目を恐る恐る開けた。


「ぇ...」


先の不良は壁にめり込んでいたが、芝春は気絶していたままだった。


 そして、生まれてからずっと知っている、優しい声が彼女の耳に透き通った。


「...立てるか?」


「あ...う、うん。」


 自然に出された彼の手を取り立ち上がると、いつの間にか遠くなってしまった彼の綺麗な横顔から覗く、キリッとした綺麗な瞳に射抜かれる。


「...しょ..っと...少し、重くなったな。」


 彼は気絶している芝春をお姫様抱っこして、ぼそっと何処か弟の成長を嬉しそうにしていた。


「ぁ...」


 彼女は手早く事を進めている彼に呆けていたが、彼の胸に響く重低な声が彼女を気付かせる。


「とりあえず、旅館に帰るぞ。タクシー呼べるか?」


「あっ..うん・・ーー」


 その後、近くのコンビニに来たタクシーに乗って旅館へと向かった。 


 そして、タクシー内では、ダウンしている芝春を挟んで桜楼と彼が後ろの席に座っていた。


「ーー・・.....。」


 一人気絶しているとはいえ、かなり気まずいメンバーであったため会話らしい会話はなかった。


「....。」


 それはいつもおちゃらけている彼女でも同様で、先の事案は彼女のせいでもあったため罪悪感のためか、いつもより塩らしかった。


「...あ、」


 一方、彼はぼんやりと窓から見える景色を眺めていると、ふと思い出したかのように済まさねばならない用事を思い出した。


「桜楼。久留米にメッセージで、色々あって先に旅館に帰るって言っといてくれ。」


「え?!あ、う、うん。わかった。」


 突然、彼の低い声に気起こされた彼女は、あわあわとしつつも彼の頼みを遂行した。


ぶーぶーぶー


 メッセージが送信されると、間髪入れずに彼女の電話がなった。


ピッ


「はい。もしもし、えっ...いや、それは...あー、変わるね。」


 電話に応答した彼女は、何処か電話の主からの投げかけに言いずらそうにしており、電話の主は俺にも用があるようだった。


「?...もしもし、海道だ。」


とりあえず受け取り、電話をかわるとその主は久留米だった。


『何してるんですかっ?!なんで、元許嫁さんといるんですかっ?!』


『え、まぁ....携帯の電源が切れてな、丁度、桜楼たちと会って携帯でメッセージを送ってもらった。』


ちらっと、元許嫁さんを見ると借りてきた猫みたいに塩らしくしており、先の事案を詳細に説明するのは控えた。


「....ほっ。」


 先まで、うるうるとした目を浮かべながら、こちらをチラチラと見ていた彼女は、彼がそういうとわかりやすく胸を撫で下ろしていた。


「....。」


 いい意味で裏表がない彼女のそういった様子は、どこか懐かしく、芝春が気絶してなければ昔を想起させた。


『それは、わかりましたが....なんで、旅館に帰っているんですか?』

 

海道くんは勝手に逸れた挙げ句、久留米が考えたスケジュールを無視して旅館に帰っているため、久留米さんは電話越しでもかなりご立腹のようだった。


『あー...それは、芝春がちょっと体調がすぐれなくてな。桜楼だけじゃ、ちょっとな。』


 経験したことのないはずの、浮気の尋問に近いものを感じ、おそらくそう言った時にしか働かない脳の回路のお陰で、彼女は納得してくれた。


『そ、そうでしたか...すみません。不躾でした。お大事にしてください。』


 事情を素早く理解してくれた彼女は手短に済ませてくれ、彼は彼女のことを本当によくできた人だと感心していた。


『あぁ。』


ピッ


「・・・....。」


「うん。」


 必要な連絡は終わったため、彼女に携帯を返した。


そして、待っていたかのように沈黙が流れる。


「「.....。」」


「...あ、あのさ。さっきはありがとう。」


「....。」


 珍しく彼女は感謝を口にしたが、彼からの反応はなかった。


「?....っ!」


 不思議に思い、彼の方を向くと、眉間に皺が寄り、咬筋がピクピクと筋張っており、煮えたぎる怒りを沈めようとしつつも、確かに怒っていた。


「...芝春を...困らせるな。」


初めて見た彼の怒った姿は、無条件に彼女の考えを改めさせた。


「....わかった。」


 怖さもあったが、それ以上に彼女は今更ながら、自分のせいで芝春が危ない目に遭ってしまった、後悔と懺悔に打ちひしがれていた。

 




許嫁幼馴染が弟に純愛寝取られたので、俺は変わることにした。第二巻



dlsite、bookwalkerにて配信。

https://www.dlsite.com/home/work/=/product_id/RJ01174454.html

〜修学旅行編 先まで読めます。

https://bookwalker.jp/dec1d7be82-1ac8-4ed3-9543-0320d06df409/

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