1/1
-序章-『彼』
君達は、身内の死を経験したことがあるだろうか?
もう少し、深く言おう。君は、
いや、あることのほうが少ないのだろうか?彼にはもうわからない。
けれど、まだ小さかった頃の彼には、その衝撃はとてつもないものであった。
母は言った。逃げなさい、早く、と。
姉は言った。あなたまでいなくなったら、私は———
……まだ子供だった彼には、泣きながら従うことしかできなかった。
そして……すべてが白と灰の景色と化したその場所を見た時、彼の中で、何かが、壊れた。
———嫌だ!
———嘘だ!
———そんな事実を受け止めたくない!
……そして、何もかもを嫌いになった。
人を信用できなくなった。
何もかもを失った僕は、絶望の果てにいた。
———僕は、復讐を決めた。