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SIDE-A-01

 九月六日。

 朝のニュースがテレビから聞こえる。

 外は曇天とは言わないまでも、晴れているとは言えない天気だ。

 朝のニュースからは明るい話題から凄惨な殺人事件のニュースまで多種多様な日常に溢れる情報が垂れ流しにされている。

 妻が淹れるコーヒーは少し苦くて、朝の眠気を覚ましてくれる。

 そろそろ仕事に行く時間だ。

 まだ熱さの残るコーヒーを一口に飲み干して、少し口の中をヒリヒリとさせながら妻に一言。

 「今日の帰りは遅くなるから」

 そう一言妻に告げ、僕は仕事用のリュックを背負い革靴を履いた。


 さて、今日は一日どんな日になるのだろうか。


 良くないとはわかっていても、歩きながらスマホのニュースを見てしまう。

 ここのところ、自分にとっての明るい話題を聞いていないから、ついつい世間の明るい話題を探してしまう。

 どこかに素敵な話題は転がっていないのだろうか。


 通勤ラッシュに揉まれながら会社に到着。

 朝の朝礼が終わり次第、午後にある会議用の資料の仕上げに取り掛かろうと思っていた。

 この会議のせいで今日は残業が確定してしまっている。

 でも、今日その会議が行われることはなかった。


 どうやら、会社の誰かが亡くなったらしい。

 会社の中は誰かが声には出さなくても、小さく小さく慌ただしくなっていくのを感じる。

 亡くなった人というのは僕の部署でも同期でもなかったけれど、僕の二歳程年下の社員だった。

 亡くなった。という情報は周りから聞こえているが、それが自殺なのか他殺なのか病気なのか事故なのか、そういった情報は出回っていないようだった。

 二歳年下といえば、妻と同じ年齢だ。

 社内恋愛で結婚した僕と妻。

 結婚を機に寿退社をしている妻だが、妻の同期だった彼のことを、もしかすると妻も覚えているかもしれない。

 今日帰ったら聞いてみることにしよう。


 「藤林さん」

 隣の席に座る三上さんが僕に声をかけてきた。


 「二宮さんって、山口さん、あ、今は藤林さんですね。奥さんの同期でしたよね」

 そうそう、亡くなったのは二宮くんという名前だった。


 「そうですね。今日帰ったら聞いてみよう思って」


 「ですよね。奥さん二宮くんと仲良かったから・・・・・・」


 そうか、やっぱり二人は仲が良かったのは間違いじゃなかったのか。

 そう思うと、早くこのことを妻に伝えたいと思う自分がいた。


 結局、今日の騒動があって、大事とされていた会議は流れて別の日となったので、僕は定時で帰宅することができた。


 「ただいまーー」

 早く帰れてうれしいのか、すこし声が大きくなる。


 「あれ、今日は遅くなるんじゃなかったの?」

 台所から顔だけこちらにのぞかせた妻が驚いている様子だった


 「今日、会社でこんなことがあってね」

 今日の出来事を妻に語って聞かせる僕は、どこか上機嫌そうだったに違いない。

 やはり、早く帰宅して、家族との会話は心が弾む。


 僕の表情に反して、妻はどこか暗い雰囲気だった。

 やはり、同期で仲の良かった相手の死というのは心に影を落とすのだろう。


 妻は結婚する時に僕が気にするといけないからと、スマホに入っている異性の連絡先をすべて消したと言っていたから、きっと連絡をとったりはしていなかったはずだが同期というのはやはりショックなのだろう。



 僕がしっかりと支えてあげなくてはいけないと思った。

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