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第2話 リコーダーで殴られるの、嫌いじゃないぜ

目の前のいたいけなランドセル「織姫」は、俺に向かって罵倒の言葉を浴びせた。


こんなかわいい女児が、こんな汚い言葉を使うだなんて、信じられない。誰だこんな言葉を教えたのは。とても気持ちよい。生まれて始めて味わった快感だった。素晴らしい。

誰だこんな言葉を教えたのは。これはいけない、こんなことをする女児には、国語教師志望の私がきっちり教えてあげなければ。


俺「もっと...」

ランドセル女児「え?」

俺「いいぜ!もっと、罵倒してくれ!!!先生を罵倒してみろ!!」


俺は力の限り叫んだ。女児は驚いた顔をしている。よし、先生として初めての教育をしてやったぜ。良いことをした子にはちゃんと褒めて伸ばしてやらないとな!


ランドセル女児「これは、逆効果ね...本当に手の施しようのないクズだわ」


うひょーーーまた言われちゃったおおおーー最高!!

ゴミを見るような目で見つめる女児を尻目に、俺ははしゃぎまくっていた。


そのとき、俺は頭になにかぶら下がっている紙を掴んだ。なんだこれ?それはショッピングセンターで書いた短冊だった。そういえば、今日七夕だし、その現場にいるんだから直接願ったほうが、っていうか俺が彦星なら俺が叶えられるんじゃね?


おれは、改めてランドセル織姫女児を見ながら、短冊を掲げた。それを見た女児は焦った表情で

ランドセル織姫女児「おい、冗談だよな、やめろよ、おい!!」


俺は大きく息を吸って叫んだ

俺「俺が国語教師になって、たくさんの女児に囲まれてウハウハ生活で世界を救いたいです!」


おっと、アドリブが入った。異世界ものだと、世界くらい救ってやるのが定番なので、まあついでならやっても良い。


その瞬間白い光に包まれた。どうやらこのふざけた夢ともおさらばのようだ。また今日もショッピングセンターに行って女児を眺めるか、起きたら3時位だし、丁度いいだろ。俺は朦朧とした意識の中、体を起こした。


畳間に敷かれた汚いカビの生えた布団...じゃない?ふかふかの白い布団?どういうことだ?全くわからない。見慣れない天井、まさか俺は人形決戦兵器のパイロットにでもなったのか。妄想がすぎる。目を覚まさなくては。しばらくベットでぼんやりしていると、遠くから足音が聞こえた。ドンドンドンドン...!


バタ!扉が開いた、と思ったら何かが俺に飛び込んできた。

「お兄ちゃん!おっはよーー!」


突然のことで混乱した。女児だ、女児がいる、俺の懐に女児がいるぞ!!うひょーー

「お、おはよう..」

えっと、お兄ちゃん?ん?お兄ちゃんってことは俺の妹?俺に妹はいないはずだが...?

「お兄ちゃん、今日からあんじゅと一緒の学校だね!早く学校行こうよー!」

そういって、彼女は俺の手を引き俺を部屋から連れ出した。


「お兄ちゃんはやくー!」

オロオロする俺を自称妹のあんじゅ?がせかした。あんじゅは赤いランドセルを背負い、真新しい制服に身を包んでいた。リコーダーもランドセルに刺さっている。どうやら本物の小学生女児のようだ。一緒に学校行こうってことは、俺は小学生にでもなってしまったのか?


「あんじゅ...ちゃん?俺のランドセルってどこかなー?」

「ランドセル?もー変なこと言ってないでさあー!お兄ちゃんは先生でしょ!」


先生!!!!???おれが???小学校の先生ってことか??

全く状況がつかめない、どういうことだ?


いや、待てよ。よく考えてみたら、俺が小学生教師になるのは宿命。高3の夏頃から記憶はないが、大学受験やら採用試験やら難なくこなして、今日から待ちに待った教師として女児たちに教育を施してやる日が来たのだろう。なるほどね、完全にわかりました。


「ふふ、そうだったな。すまない。それじゃあ、学校に向かうとしよう」

「しゅっぱーつ!!」

俺は女児と手をつなぎながら、小学校に向かったのであった。


小学校に着くと、そこには大小様々な大きさの小学生がランドセルを背負いながら元気よく登校していた。ここは天国かな?俺はあんじゅと一緒に校門をくぐった。


「おはようございます!」


校門では元気の良い声であいさつをする子達がいた。あいさつ運動だっけ?そういうのがあったのを思い出した。

しばらくすると、あんじゅは


「あんじゅ、1年生だからこっち。」


教えてくれたのは良いが、あんじゅは手を握ったまま離れない。


「行かないのか?」


俺はあんじゅに問いかけたが、あんじゅは下を向いている。うーん、これはおそらく...不安なんだろう、はじめての小学校生活で友だちができるか不安なんだろう。わかるぞ。俺はしゃがんであんじゅの目を見た。


「あんじゅ、お兄ちゃんも学校にいるから、なんかあったらいつでも来いよ」

そう言って、少しでもあんじゅの不安を取り除いてやりたかった。


あんじゅは俺を見て笑った

「うん、行ってくる。お兄ちゃん後でね!」


俺の手を離したあんじゅは1年生の下駄箱に向かっていく。嬉しかったが、少し寂しかった。まあ、おれもここでいつまでも感傷に浸っている場合じゃない。職員室であいさつでもしてやるか。


そう思って、振り返ると、そこにはビシッと決まったスーツの黒縁メガネのおばさんが立っていた。保護者か?


「山田先生ですか?」


山田は俺の名字だ。

「はい、そうですが、あなたは?」

「教頭の黒縁です。」


黒縁メガネの黒縁先生?????!!!

「えっと、下のお名前はメガネさんですか?」


黒縁先生は深い溜め息をついた。

「それは良いとして、あなた、今日の始業式で話す原稿、書いてきましたか?」

ん?原稿?


「原稿ってなんですか?」

「本当は先月にチェックするはずだったのに、ズルズルと期限を延ばして、結局当日の朝になってしまいました。さすがに、もう仕上がってますよね。」

えーっと、俺が全校生徒の前で話すのか?この学校のすべての女児の前で?純粋無垢な女児の前で?まじで?ちょっとワクワクしてきた。


「ちょっと、ニヤニヤしてないで、ロッカーで荷物置いたらすぐ私のところに原稿持ってきてくださいね!」

そう言って黒縁先生は行ってしまった。


よし、待ってろよ黒縁!いまから俺が女児たちに聞かせる素晴らしい演説文を執筆してやるぜ!


ロッカーに荷物を打ち込んだ俺は、かばんにあった適当な紙とペンで、演説文を書き始めた。


「全校生徒の女児の諸君、私は山田ミズト、ミズト先生で構わない。俺はこれから国語教師として君たちに俺の作った素晴らしい文章を読んで...」

「それじゃあ、黒縁先生のチェックは降りないだろうね」

後ろから声がした。振り向くとそこにはこれでもかというほどのイケメンの若手教師が呆れた顔でこちらを見ていた。


上司か?先輩だよな、流石にまずかったか?もう少しオブラートに包んだほうが良かったかもな、よく考えれば女児女児言い過ぎてたかもしれない、言い訳しよう。

「えっと、まだこれは...」

「君は女児が好きなのかい?」


「はい!!!!!(脊髄反射)」


おっと、これは詰んだか?今の発言は流石にやばかったかもしれない...いや、まだ弁解できるかもしれない、えっと、好きというのはですね...


「いいよなー小学生女児って!」


予想外なところで、同志を見つけてしまった。なんと素晴らしい職場だ、あんじゅよ、俺も友達ができたぞ!


しかし、この学校はこんなやつが2人もいるとは、俺は良いとして、少し不安になってきた。


「いやーでも、流石に全校生徒の前では隠さないといけないですよねー」

俺は笑いながらこう言うと


「え?そんなことないでしょ?今どき普通でしょ女児が好きなの」


????え?、どゆこと?


「大人も?おじさんも?変じゃないんですか?」

「いやいや、変じゃないよ。だってこんな可愛い子たちの他に好きになれるものないでしょ?」


言っていることは訳わからんが、共感できるやつだこいつは。

「この学校は女児しかいない女子校ですし!」


なんてことだ、女児しかいないだと??

それって、音楽室においてあるリコーダーのどれを舐めてもあたりじゃないか!!!


「私が黒縁先生の代わりに、原稿をチェックしてあげるよ!」

「お願いします!」


これは最高の文章がかける予感がする。

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