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第1話 ランドセルとリコーダー、人間観察は楽しいぞいっ

先生「よし、桐原ゆみ、3行目から読んでくれ」

ゆみ「はい!」

ゆみ「ミズト先生はとても頭がよく、勇敢でいつも私のピンチに駆けつけて守ってくれます。そんな彼の部屋にやってきた新妻の私は、真新しいエプロンに身を包み、トマトケチャップでハートを描いたオムライスを、私の愛する旦那のミズト先生に振る舞ってあげました。」

先生「デュフフ...」


俺の夢は、小学校の先生だ。今のは俺が先生になったときの簡単なシュミレーションだ、極めて現実的なもので、妄想ではない。小学校の先生とは、まだ純粋無垢な子どもたちに、この辛く厳しい世の中でも、強くたくましく生きていくことができるように、手とり足取り教えてやる、崇高な使命を帯びた職業である。特に女児は、世の変態共の汚らわしい魔の手から救ってやるヒーローが必要だ。それはもちろんこの俺である。

そういうことで、今年高3の俺は進路志望の紙に「教育学部」をと書いてやったぜ。


俺はこれでも受験生なので、勉強を怠ることはない。放課後毎日欠かさず、近所のショッピングセンターに通っている。予備校?いやいや、そんな勉強ばかりしていては、児童から愛される素晴らしい教師なんてなれないですよ。実際の子どもたちを見てこそ、彼らのことをちゃんと理解した良い先生になれるというものだ。そんなわけで、今日もこのファーストフード店の前の席に座った。


ここは近所に小学校があり、学校帰りにたくさんの小学生が立ち寄り、席で宿題や携帯ゲーム、スマホを触りながらワイワイ騒いでいる。小学生女子たちは、自分よりも大きいであろうランドセルをおろし、それぞれの可愛らしい私服でおしゃれをしながら、買ってきたおもちゃ付きのセットを見せびらかしあっている。


そういった光景はとても微笑ましい、ヨダレが出るくらいに。しかし、こういったいたいけな少女に劣情をいだき、とんでもないことをしでかす輩は世の中にはいっぱいいる。昨日だってネットニュースに出ていた。本当にけしからんやつだ、羨ましい。

そんなわけで、私は受験勉強の傍ら、彼らを魔の手から守るガーディアンをしていたのだ。この功績はおそらく履歴書に書けそうだ。


進路志望を出してからしばらく立って、7月。ショッピングセンターによってみると、何やら小学生が何やら通路の一角に集まっていた。そこには一本の笹があった。七夕か、なるほど。短冊とペンが置かれており、願い事を書いて、自由に飾り付けられるショッピングセンター側の企画だろう。私はその光景を横目で見つつ、その小学生達が立ち去るのを待っていた。もちろん、彼らの書いた願い事を見るためだ。


しばらくして、そのコーナーに誰もいなくなったのを見計らい、笹に近づいた。もうすでに100を超える短冊が吊るされていた。よし、最初の短冊だ。

「お金がいっぱい手に入りますように」

つまらん、次。


「家族が健康でありますように」

くそつまらん、次。


「受験、受かりますように」

まあ、俺も受験生だし、この願いはいいだろう。俺も便乗するために、その短冊に自分の名前を書き足した。よし、次。


「異世界に転生して、俺の好きな世界にしたいです」

は?なんだこいつ。異世界、か。俺が想像する世界、想像する女児... なんだ、とても素晴らしいじゃないか。よし、今年はこれで行こう。すぐさまその短冊をむしり取り、こう書き換えた。


「異世界に転生して、俺の好きな世界にしたいです。女児に俺が書いた作品を教科書として音読させてやる」


ーーーーーーーー


俺は夢を見た。

それはもちろん、俺が教師になったときの夢だ。っと思ったが、今日は様子が違うようだ。


目の前には大きな川が流れており、空には異様な数の星が輝いている。意味不明。女児いないやんけ、つまらん。起きてネトゲして、寝直すか。


そう思ったとき、川の向こう側に、人影を見つけた。俺は目が悪い、手を伸ばした爪の先がぼやける、というのは言いすぎだが、テレビはメガネなしでは見れないくらいには悪い。まあ、夢の世界では関係ないが。目を凝らしてみると、そこにはなんと、小さい女の子が手をふっている。しかも赤のランドセルを背負っていて、リコーダーがぶっささっている。


うひょーーーーー!!

おれのテンションはバク上がりだった!小学生女児が俺に手を振ってくれてるんだぜ!こんなことありかよ、まじか、デュフフ。よし、すぐさまあの女児を抱きしめに行こう。結婚を前提に付き合ってもらわなきゃ。しかし、目の前にはよくわからんがでかい川がある。橋はないのか?


いや、待てよ、これはおかしい。まずここはどこだ?警察署...?ではないよな、善良な市民である私が捕まるわけはない、まだ法を破ってないし。

だったら...ん?三途の川?いやいや、そんなわけ無いだろ、なんで小学生女児が向こう側で手を振ってるんだよ。そんなこと今まで読んだどのラノベにも書いてなかった。だとしたら…


ここで、聡明な俺は気づいた。今日は七夕だ。七夕といえば織姫と彦星が会う日だろ。ってことはこれは天の川?

あー、完全にわかってしまったわー。なるほどね。はいはいはい。ということは向こう側にいるのは「織姫」で、俺が「彦星」ってことかな。なんともロマンティックなことだぜ、まったく。そうと分かれば今すぐ俺の「織姫」を迎えに行って、二人で幸せな家庭を築こう!それで毎日料理を作ってもらって、出かけるときはお別れのチューをするんだ。あ、もちろんおかえりのチューもな。よし、織姫!まってろ、俺が結婚してやるぜ!!


ドサッ

急に目の前が暗くなった。重い..いや、そんなに重くない。が、誰かが背中に乗っている。


俺はとっさに起き上がった。そこにいたのは対岸にいたはずの俺の織姫様だった。ちゃんとランドセルも背負っている。手にはリコーダーも持っている。


よく見ると可愛い。な、なんかいい香りがする。こ、これはまさか女児の香りというやつか?ほのかに香る柔軟剤と滴る汗が混ざりあった最高のオリジナルブレンドだ、一杯くれ。俺はすかさず

「織姫さん、おれが迎えに来ました。おまえと結婚... してやってもいいぜ。よろしくな」


決まった、これで俺の教師になって女児に囲まれる生活の一人目の女児ゲットしてや…ドン!

痛い、俺は倒れた。が、すぐ頭を何かが押さえつけた。

「この汚らしい豚が、おとなしく家に引きこもってろ」

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