ここから離れよう
ようやくここから離れる手段を手に入れた。
これからどうしょうと考えていたけど、優先的に解決しなければことがある。
一つ目は維持費の問題だ、さっき魂無き人形を召喚したから、かなり消耗したけど、DPはまだ半分ぐらい残っている。
しかし地面からチカラを吸い上げられない状態ではゴブリンなどを倒して魔石を入手するしかDPを回復する手段はないと思った。
もう一つは全裸だ、これは乙女として由々しき問題だ、しかもこの辺りにゴブリンがうろうろしている、もしこの状態でゴブリンに見つかられてしまったら、どうなるか想像するだけで鳥肌が立つ。
少なくとも服がほしい、とにかくすっぽんぽんはダメだ、これは元人間としても乙女としてもプライドに大ダメージになる。
もう見慣れたこの元コアルームが今はダンジョン廃棄によりただの洞窟に戻った。
設置した配下モンスターと防衛ルームも全部消えて無くなり、今では外から洞窟の中にある岩の傍に一人全裸の女の子が立っているという珍妙な場面が見える。
初日では色々ショックがあったから、あんまり洞窟を観察せずにそのままダンジョンとして設定した。
改めて洞窟内周辺を観察すると、初日で見たようにあちこちに骸骨が散乱している、しかし残念ながら破られた布切れは残っているが服や体を隠せるほどの布はなかった。
今の体はまだ慣れていないから、立ってるだけでも結構疲れるので仕方なく元台座の岩の後ろに隠れながら背もたれて座ったまま今後のことを考えることにした。
座ってから自分の様子を確認する、鏡などはないから顔はわからないが、触った感覚では、人間の顔と同じでしょう、手足は細い、体は一切筋肉が付いていない、触ったところぷにぷにしている。
また髪の毛は腰までありの長さで、黒に近い深い紺色。
(これも前の記憶に影響したものでしょう……)
筋肉が全然付いていないのも多分以前の私はあんまり運動していない、得意じゃないことを反映していると思える。
でもこれなら外見的には人間とほぼ同じであり、実は人形のモンスターと気づかれないでしょう。
ここを離れたら、人里を見つけて、普通に生活することもできると思ったが、やはり自分を維持するDPの確保手段もほしい。
なんとか仕事を見つけてお金を稼いで魔石を買うか、あるいは自分が冒険者となり自分で魔石を狩るしかない。
(しかし自分でオオカミやゴブリンなどと戦うか……)
後のことはまず人里に到着したら柔軟性のある思考を維持しつつ臨機応変にしよう。
少し落ち着いたら背中からある感覚に気付いた。
(これは……かなり弱くなったが前の台座にいると同じ感覚だ)
試しに背中に意識を集中すると、前と同じように岩を通してチカラを吸い込むことができた。
吸い込めるチカラの量は感覚的には前と比べて大分減ったが、一応徐々にDPに変換している。
(これならアレはできるんじゃない!?)
急いで意識をダンジョン内に戻る、【オブジェクト設置】リストから「宝箱」をコアルームに設置、内容物をリストから「布の服」を召喚した。
様式は色々選択できるけど、自分用だから素質なワンピースの選んだ。
これなら服や靴など手に入れると喜んだ次の瞬間に一つ問題を気付いた。
(どうやって取り出して、外にいる私に渡せる?)
ダンジョン内では私は相変わらず手も足もない動けない小石であり、宝箱を開けることすらできない。
ならば手足として配下を最小限一匹召喚する必要がある。
改めて【召喚】リストを見ると、コボルドを始め、見慣れたモンスターがリストから消えていた。
(そう言えば、前は【森林型洞窟ダンジョン】だった……つまり今はどんな感じでしょう……)
改めて自分を観察したら吹き出しが表示された。
【魔が潜む人形館ダンジョン】
『ダンジョンコアLv.9』
これは今ダンジョンの本体が人形だからの影響でしょう。
幸い「無機質」の項目がまだ残っているから、土のぷちゴーレムを一体召喚して、宝箱を開けてもらい、無事中身の服を取り出せた。
次の問題はどうやってダンジョン外の私に渡すことだ。
プチゴーレムに服を持ったままダンジョン出入り口に移動してもらった。
前のダンジョンでは出入り口から直接に外の森が見えるけど、今のダンジョンでは出入り口は人形の口に設定したから、出入り口は真っ黒で向こうは何も見ない状態になっている。
試しにプチゴーレムに服を出入り口に投げ込むよう命ずる、そうすると服が真っ黒の空間に飲み込まれたように消えていった。
そして意識を人形に戻したらちゃんと服が目の前にあった。
その後靴も同じ方法で手に入れたが残念なことに、どうやら宝箱では服と靴は召喚できるけど、リストには下着はなかったから、仕方なく追加でズボンを召喚することになった。
服と靴さらに護身用としてこん棒を手に入れて一安心した時、ふっと洞窟の天井近くの壁にどこかで見たような模様が描かれているを気付いた。
(白い掌とその中心に赤いナイフ……)
次の瞬間全身に冷や汗になった。
ここはあのオークの拠点だ、一応前は倒したけど、この模様は部族を表すものだから、何時また同部族のオークがここに戻ってくるか、あるいは前のオークが行方不明になったから別のオークが探しにくる可能性が非常に高い。
(早くここから離れないと!!)
もう少しDPを完全回復してから洞窟から出るつもりだけど、このことを気付いたらもうこんなに呑気でいられない。
まだ人形の体で動きはきごちないだが、急いで洞窟の出口を目指して歩いていたら、出口が大きな黒い影に塞がれいる。
オークがゴブリンを多数連れてきた。
しかもこのオークは明らかに前回のオークとは違い、体がさらに一回り大きい、それを加えて全身が鎧で固めて、今の私の身長とほぼ同じの斧を持っている。
「あ……あの……不法侵入してすみません……もう出ていくから、お邪魔しましっ!」
あんまり回らない舌で弁明しようとした次の瞬間、あの大きなオークが手を伸ばして私を捕まえるとした。
幸い一瞬の反応で後ろに避けたが、転んで尻もちをついてしまった。
そしてあのオークの後ろにいる数匹のオークとゴブリンがじりじりと私に迫ってくる。
(このオークとゴブリンたちは明らかに私を殺すじゃなくて、生け捕りするつもりだ!)
同時にこのオークとゴブリンたちはこの後なにをするつもりことも気付いた。
近づいてきたオークの手を護身用のこん棒で叩こうとしたが、逆にこん棒が簡単に掴まえられて奪われた。
どうやら私の抵抗がさらにゴブリンを刺激して、一匹のゴブリンが奇声を上げながら私に飛び掛かってきて、そのまま押し倒されていった。
(臭い!キモイ!私を触るな!顔を舐めるな!離れなさいよ!)
ジタバタとそのゴブリンを引き剝がすためにその顔にグーで殴った瞬間、私の拳がまるで柔らかい枕を殴ったようにそのゴブリンの顔面を深くめり込んだ。
急いでそのゴブリンをどかして、なんとか立てたが、周りの雰囲気が一気に変わった。
どうやら先の一撃でそのゴブリンが死んだから、オークとゴブリンたちが私を敵と認識を改め、素手で捕まえるでなく武器を使うつもりになった。
真っ先にオークにこん棒で体が殴られ、洞窟の壁に吹き飛ばされた。
一瞬死んだかと思ったけど、意外に衝撃を感じたが痛みはほぼ無かった。
さらに数回武器で殴られた、しかし服がボロボロになったけど、私の体にかすり傷以外の怪我はほぼ無かった。
あの大きなオークは最初から一歩も動かず、その隣に杖を持っている変なゴブリンと一緒に興味深く様子を見ている。
しかし他のオークとゴブリンたちはいくら攻撃しても私は立ち上がり、むやみに私に飛び掛かり捕まえようとすると顔面めり込む拳が待っている。
こういう膠着状態はしばらく続いたが、突然洞窟の外で何か戦いのような騒ぎ声が聞こえた。
「ゲオルク!報告ではここがワーウルフとコボルドのダンジョンであるはずだが、ここはオーク部族の前哨基地だぞ!」
「いいや、場所はここで間違えない、前回調査で残した印はまだあそこの木にある!」
「チッ!厄介なことになった!とりあえずこいつらを殲滅するぞ!」
「アルベール様、ゲッツ兵士長、洞窟にオークビッグウォーリアとゴブリンシャーマンがいるぞ!注意しろ!」
あの冒険者たちが戻ってきた。
【追記】
大変申し訳ございません、人名を間違えました。
アンゼルム様(✕)→アルベール様(〇)
次の投稿の最後で軽く今までの登場人物リストを整理します。