簡易ダンジョンで方針相談
アンジェリカはそろそろ活動限界になる、早く安全かつ人目が付かない安全なところを探さなければいけない。
私たちがこの場を離れようとする時にロイのおっさんは心配しそうで口を開いた。
「あの……厚かましい申し出かもしれませんが、夜も近いですがお二人で移動するのは大丈夫ですか?この近くでは俺たちの村しかいないけど……」
「心配してありがとうございます、しかし先を急ぐので失礼します」
「お……街道を沿えばそうそう危険はないけど、気をつけてください」
私たちが見えなくなるまでロイのおっさんはずっと見送っているが、一緒にいる人たちは早くこの場を離れたい気持ちを隠していなかった。
歩いている間にずっと悩んでいる、今日は森の中ではなく、ある程度整備された街道で、両側はほとんど木も撤去された平地になっているから、隠れるところはどこもない。
かと言って、道端で体を放置できるわけもない、さらに数はそう多くないが、さっきは小さい行商人一団のキャラバン隊とすれ違ったことほど街道ではまったく通行者はないわけではない。
そのキャラバン隊とすれ違った時に馬車の馭者が不思議なものを見た顔をしたが、気にしない、今は隠れるところ探すことが最優先事項だから。
さらに暫く歩くとアンジェリカは活動限界になったから先にダンジョン内に戻ってしまったので、その代わりに私が人形ちゃんを抱えて周囲の警戒を任している。
こうなる以上、夕焼けの野外街道で女の子が一人で人形のぬいぐるみを抱いて歩いているといういかにもおかしい光景が他者に見られる前に私はさっさと街道を見えなくなるまで離れてから歩きながらどこかに隠れるところはないかを探し続ける。
ふっと思い出した、私は「土属性魔法Lv.1」のスキルを持っているし、今使える魔法は「石礫」だけど、DP消費で他に何か魔法を追加できないかな、魔法で土壁とかが作ることが出来れば自前で安全な場所を作れるかもしれない。
思いつきですぐ行動に移しましょう、街道から反対側の小さい岩の後ろで人形ちゃんに警戒をしたまま、私は意識をダンジョン内に戻す。
「強化」のリストを見れば「土壁生成」がなかったので、たぶん私のスキルレベルは足りなかっただろう、しかし「穴生成」という面白い魔法を発見した。
体はまだ外であの恥ずかしい状態を野ざらしで放置しているから、ゆっくり時間をかけて考えられないので「穴生成」を取得したらすぐ意識を体に戻す。
早速この魔法が思い通りになるように祈りを込めて小さい岩の元に放した、すると地面が沈んで幅と深さはほぼ私一人分の穴が出来た。
よかった……これがあればどこでも臨時的な隠れる場所を作れる、そしてその穴に入って横に向けてもう一発魔法を放したが、私の拳一個分で止まってしまった、目の前に表したのが岩の表面、どうやらその小さい岩は大部分地中に埋もれているであり、土属性魔法は岩に対してほぼ効果はない。
仕方なく穴開く方向を反対側に移す、さらに数発を放したら小さい簡易的な地下洞窟が出来た。
私は一番奥で座り込み、いつものようにプチゴーレムたちを呼び出して、通路を塞いてもらって、人形ちゃんが警報要員として配置したら、即席のダンジョンらしいものを形成した。
とりあえずこれで安心できる。
意識をダンジョン内に戻して、アンジェリカからイノシシの魔石をもらって吸収しながら、アンジェリカに宝箱から彼女用で作った装備を取り出してほしいと伝えた。
「お嬢様、この装備は私専用であれば、同化してもいいですか?」
「同化?」
「はい、この鎧装備のサイズは今の私の体型にとってやや大きいから、もし同化の許しをもらえれば戦いの妨げを減らせる」
確かに私はアンジェリカのサイズに合うかどうか考えずに鎧を作ってしまったことに反省、そしてその同化に興味津々というところもある。
許可を出したらアンジェリカはそのたわわを隠すための私のエプロンを脱いで新しい服を着替え終わった後、鉄製の鎧に手をかざす、その鎧が次第に溶けるようにアンジェリカの手から体中全体を覆うようにくっ付いていく。
その同化が終わった時にアンジェリカは体にピッタリした鎧を装着している、その外観は私が作り出した時の特徴のない鎧ではなく、彼女のクラスである「ワルキューレ」に相応しい鎧になっている、さらに控えめであるが飾りの模様も追加されている、彼女が脱ぎ捨てた破れた服も同じく同化されマントになった。
私のアンジェリカは凛々しい女剣士から凛々しい女騎士になった。
アンジェリカの話しによるとダンジョン内のモンスターはこうして侵入者の物を同化して強化するのが普通であり、むしろダンジョン産の武具装備を宝箱から取り出してそのまま使うほうが珍しい。
そして一つの疑問を湧いてきた。
「ね……アンジェリカ……ちょっと聞きたいことがあるだけど……」
「私の知識で答えられることなら何でも答えします」
「アンジェリカは召喚して数日しか経っていないのに、その同化の知識はダンジョンボスの本能みたいなものなの?」
「なるほど、召喚の仕組みを説明します」
彼女が説明したことをまとめると
ダンジョンで生み出したモンスターはどこかにある存在のコピーであり、召喚された際に形成されたものである、能力的には弱体される場合はほとんどだけど、オリジナルの本能や一部の特性と知識は受け継いだままになる。
ついでに彼女のオリジナルはこの世界と結界の壁で隔たれた亜空間にいるとある悪魔であり、真名は彼女の記憶にはないがそれなりの強さを持っている。
確かに以前召喚したコボルドなどは生まれたすぐ自分の役目をこなせ、本能以上に私の命令で探索隊として動けたのはオリジナルの知識を受け継いだこそなら納得できる。
そして召喚で形成されたモンスターは自分がオリジナルと違う個体であることと自分がダンジョンの一部であることもはっきり認識している、だからオリジナルのせいでダンジョンに敵対行為をする心配はない、ただしオリジナルの知性が高ければ高いほど召喚されたコピー体の個性も鮮明になる。
最後に彼女は長時間で外で私を護衛することはできないから、私にこれからも外の体で活動するなら私の装備とスキルなどの強化、あるいは彼女と同じように外で共に行動できる人型モンスターの召喚を検討してほしいと嘆願してきた。
この数日はすっと森の中で過ごしたせいで私の服はそれなりに汚れている、そろそろ体を洗いたいと服を着替えたいだが、イノシシの魔石で補充したとはいえ、残りは維持費として温存したいから私の装備更新について今回は見送り方針でしかできない。
そして確かにDPの余裕があれば現状で召喚できるリストから新しいモンスターの検証もしたい、正直にいうと人形ちゃんとプチゴーレムたちは戦力として数えるものではない、アンジェリカの活動時間の問題を加えて彼女ひとりで数の暴力あるいは今回のイノシシ以上の強敵に遭ったら確実に私を守りきることは難しいだろう。
そうすればやはり安住の地と安定した収入がほしい、環境が整えれば魔石を自力で狩ったり購入したりして維持費以上のDPをどんどん増やしていきたい。
まず当面の目標は教えてもらった商業都市であるベルナを目指す、そこで出来ればアンジェリカを冒険者として登録すること。
私はこの子供の外見では雑務などの手伝い以外の依頼を受けることは難しいから、アンジェリカの二十代前半の外見なら大人として実入りのいい依頼を受けることができるはず。
一緒に行動するなら、私も町を自由に出入りすることができるだろう。




