意外な恥ずかしい事実
どうやら先までこのイノシシと戦った者がこっちに近付いてくる。
声と共に現れたのが三十代軽装備の剣士の男と後ろに二人若い弓持ちの男だ。
その剣士の男が地面にあるイノシシを見てアンジェリカに向けて困りそうな顔で声を掛けてくる。
「あちゃ……君がこいつをしとめたかっ……わぁ!!」
あれ……このイノシシを倒したのが何かまずいことでもあるのか?
「あ……あの……話し合いをするから、とりあえず目のやり場が困るから先に何とかして!」
アンジェリカに何かがあったのか!?
急いでずっと私の前で警戒しているアンジェリカの正面を見るととある女性的たわわな物が衆目に晒している。
さっきイノシシのタックルの衝撃か或いは抑えている時にその牙でアンジェリカの服が破れた、幸いそれ以上の傷はない。
「アンジェリカ!!おっぱい!隠して!!お前らもじっと見るな!!」
当の本人は眉一つ動かさずにそのまま目の前の三人を警戒しているが私と彼らがパニック状態になる。
手早く私が着ている服のエプロンを脱いでアンジェリカに掛ける、サイズ的には大きなよだれかけみたいになるけど、とりあえずこれ以上アンジェリカのたわわがあいつらに晒さらずに済む。
こんな騒ぎの中でこの人たちが来た森の方向からさらに槍を持つ二人が現れた、ただし一人は明らかに負傷してもう一人の肩を借りて歩いている。
「おーい、ロイ、大丈夫か?」
「あっ……あぁ、大丈夫だ、惜しいぞお前ら、もういい物が見えなくなったよ」
「はぁ?」
こいつらに拝観料でも徴収したほうがいいかな?
と思っている時に急にそのロイの人が真面目な表情に変えた。
「コホン、君がこいつをしとめたのが分かるが、元々こいつは俺らの獲物だ、全部渡せとは言わないがこいつの所有権はこっちだ、君一人分は分配するつもりだ」
なるほど、そいうことか……
多分リーダーであるロイという剣士は真面目な話しが始める、一応敵意はないと剣を下げたが彼の後ろにいる弓持ちがこっそりと右手を矢筒のほうに動いている。
ここは穏便に済ませましょう、向こうの人数ではアンジェリカなら勝てそうだが、無意味な人殺しはするつもりはない。
「どうだ、悪い話ではないはずだが?」
しかしアンジェリカは警戒のまま無言を保つ、現場の空気がどんどん険しくなっていく。
「あの……その条件で結構です!みんな落ち着いて!」
「嬢ちゃん、すまないが大人の話しだからちょっと黙って」
「お嬢様がそう言うなら私は従います」
「お嬢様!?」
アンジェリカの発言で向こうの視線がいきなり私に集中してくる。
「とにかく私たちは敵意はないから、あなた達も武器を収めてください、アンジェリカもだ!」
「あ……あ、はい、失礼しました」
何とかこの場を収めてよかった。
あの人たちが何か動きを見せたら間違いなくアンジェリカは大暴れにするから。
剣を収めた剣士のおっさんは仲間に武器を収めるよう指示したら、こっちに話しかけてくる。
「あの、先の条件でいいならそろそろ後処理に入りたいだが、いいですか?」
後処理?ギルドの解体所じゃなくでここで解体するの?
一応いいよと答えたが、私は手伝えないことも伝えた。
そうすると剣士のおっさんは服の中から小さいな笛を出して合図みたいな音を出す。
暫くするともう一人が荷車を引いて現れた、その荷車にすでにウサギと鳥が数羽を積んでいる。
「ロイの大将、これはでけぇ獲物だな、さすが大将!早速片付けようぜ」
どうやらこの人たちは近くの村の人みたい、そのロイという人は猟師であり、村の自警団のリーダーも兼任している。
「お嬢さん、このイノシシの分配は先話し合った通りに一人分を渡しますが、お金と現物のどちらがほしいですか?」
現物って……イノシシの肉は特に欲しくないだが、このイノシシは魔石を持ってるかなと聞いてみる。
「イノシシは魔石を持つ場合はそう多くないだが、こいつぐらい大きいやつなら持ってるかもしれませんな」
「ならばもし魔石があったらそれを下さい、なかったらお金のほうをもらうわ」
相談が終わったから、彼らの解体作業で魔石が出るかどうかを待つしかない。
私は適当に近くの石で座ってちょっと考えることをする。
アンジェリカの装備、剣が折れて服も破れた、今の所まだDPに余裕があるからこれを機会にアンジェリカの装備を一新するのもありだが、今は人の目があるから、渡すのは後にしよう。
ちょうどあの人たちが解体作業に集中しているし、私もその血生臭い作業を見るつもりはないから、こっそりと意識をダンジョン内戻す。
武器装備品の召喚リストからアンジェリカの武器を考えている、せっかくだから出来るだけアンジェリカの装備を強化したい。
まずはアンジェリカなら先に折れた普通のロングソードより私の身長以上ぐらい両手大剣も使いこなせそうけど、今にいる森の中なら小回りが利かなさそう。
やはりロングソードを渡ししよう、ただし素材は普通の鉄製よりいい物に変えよう、現状で私が召喚できる最高素材の鋼製で決定。
次にアンジェリカの防具も考えなければならない、むしろ今まで普通の服だけで前衛で私を守ってもらうのが申し訳ない気持ちになる。
ロングソードと同じように鋼製一式のフルプレートにしようとしたけど、DPが足りないので断念、さらに維持費もある程度確保しなければいけないので、暫くの間に鉄製の一式で我慢してもらおう。
盾のほうには使うかどうかはアンジェリカと相談して彼女戦いスタイルで決めましょう。
もちろん、アンジェリカの新しい服一式も忘れずに召喚した。
これでこの前で吸収した六人分のDPを大分使ってしまったが、アンジェリカの戦力は私の安全に直結するから必要経費と考えよう、まだ多少お金持ってるし薬草もいっぱい採取したから、次の町に到着したらすぐ換金して魔石を買えばいい。
とりあえずこれぐらいにしよう、そろそろあの人たちも解体作業が終わるだろうと思って意識を体に戻す。
「良かった……一時どうしようかと思ったよ……」
意識を外にしたら急にあの人たちはアンジェリカを挟んで私のところに集まっている。
「どうしてそうなのかは聞きませんが、この護衛さんは大丈夫しか言いませんし、貴族様のご令嬢がここで何があったら俺たちも罪を問われそうだから勘弁してくださいよ……」
あのロイというおっさんがいきなりわけわかんないことを言っている、しかしその顔が本気で心配してほっとした表情になっている。
「それはお嬢さんはいきなり目を開けたまま気を失って、いくら呼んでも返事がないから、心配するのも当然でしょう」
えっ!?
つまり私が意識をダンジョン内に戻した時、体が「魂無き人形」に戻るから目が開けたまま壊れた人形みたいになっている。
恥ずかしく穴を掘りたい……これからはむやみに人がいるところで意識をダンジョン内に戻らないようにしよう……
どうやら解体作業はすでに済んでいる、要らない内臓と骨などすべて土に埋めた、毛皮と肉など有用な部分だけ荷車に載せている、それだけ大きなイノシシだから、その肉だけで荷車はすでに山積みになっている。
「魔石はすでに護衛さんに渡しましたから、俺たち今日はもう引き上げるけど、お嬢さんたちはどうします、俺たちの小さい村に来ても大したもてなしはできませんけど……」
「この森の外までだけに案内してもらえればうれしいです」
「そうか、ならここで解体作業をしたから匂いで他の獣がまだ来ないうちに移動しましょう」
何を誤解しているのが分かるし、あの村に行く必要も感じないし、むしろ村に行ったら指名手配かもしれない私が迷惑をかけてしまいそう。
それと早くアンジェリカに新しい装備を渡したい。
私は歩き幅が小さいけど、肉を満載する荷車が二人で引き、二人が後ろから押しているから、ちょうど私の歩くスピードぐらいになっている。
途中でロイのおっさんは村人たちと今日の収穫に楽しく話し合ってる。
今日は宴とかこのイノシシの肉を燻製すれば、皆の今年の冬の準備は大分楽になれるとか、皆が大きい仕事をした顔になっている。
燻製のイノシシ肉か……出来たてならすごく美味しそう……
元々荷車が森の外で待機しているが、私たちがイノシシを倒したところにもそう離れていないから、そう時間掛からずに森を抜けて街道に出た。
「では、俺たちは村に戻ります、お嬢さんたちも気をつけてくださいな」
「ありがとうございます、では失礼します。」
そろそろ日が暮れる時間だから、とりあえず今日の一時隠れ拠点を探しましょう。




