夜中の逃亡劇
と……とにかく何とかなった。
しかしなんで男爵が私を捕まえようとしているだろう。
って私は男爵の兵士を殺した!?
いきなり剣を向けられたけど、これは正当防衛に当たるかな……
絶対に面倒なことになると頭を抱えている間にアンジェリカはずっと周囲を警戒している。
「お嬢様、ここは危険だと、早めに離脱しましょう」
確かにここでモタモタしてはいけない、急いで死体を収納して証拠隠滅だ。
まさか今日で二度目の人間の死体を収納することになるとは……トホホ。
死体はなかったけど、行方不明者が出たから、罪状はわからないが多分今の私は指名手配犯だ、教会に行ってもルーテルさんの迷惑になるだけだろう。
宿屋に戻るのはさらにダメだ、下手するとエイラさんを巻き込むかもしれない。
「お嬢様、このままこの人間の町を出ましょう」
アンジェリカはこう提案しているが、もう夜になってるし、今ギルドに行って依頼を受けて町外に出る許可をもらえることはないだろう、しかも今は西門に行ってもその場で門番の人に捕まえられる未来しか見えない。
「心配はいりません、今は空を飛ぶことはできませんが、あれぐらいの外壁なら越えられる自信があります」
確かに今は夜だし、アンジェリカの本来の姿は翼を持っているけど、本当に大丈夫かな。
というより、ここでアンジェリカが人化を解除して見られたら大騒ぎになるだろう。
「大丈夫です、元の姿に戻らなくても一部の力を解除して翼を出すだけです、速やかに飛び越えれば気付かれることはないでしょう」
背に腹は代えられない、これが一番いい選択だと決めたらアンジェリカは移動が遅い私を抱きかかえて、近い外壁を目指して走り出した。
道中はなるべく大通りを避けて人目に触れないように移動したおかげで男爵の私兵と出会うこともなかった。
「アンジェリカ……本当に飛び越えられるの」
この町の外壁はそこそこ高い、大体三階建ての建物ぐらいの高さがある。
アンジェリカは私を抱きかかえたまま、まずは外壁近くの家の壁を蹴り、飛び上がり、その瞬間翼をだして、翼を利用して二段ジャンプをして、屋根の上に登る。
そしてアンジェリカが軽く助走して外壁に向けて二段ジャンプと滑空を併用して上手く外壁を超えた。
着地の時も翼を大きく羽ばたいて落下の衝撃をほぼ感じられないぐらい軽減した。
町を脱出できたのはいいものの、これからはどうしよう……
ちょっと早いだが、隊長さんから聞いた採取をした森の先にあるベルナという町に行こう、西門の街道を沿っていれば行けるはずだが、人目を避けたいから、ちょっと街道を離れて移動しよう。
今の所、私を探す範囲はまだ町外に及ぶと思えないけど、とにかくできるだけ早くこの町を離れたいから、アンジェリカに抱きかかえながら走ってもらう。
いつもの森の外縁部に到着したら、私は一つ心配なことに気づいた。
「アンジェリカ、外で活動できる時間の限界まではあの森に到着できそう?」
「大丈夫です、これぐらいは問題はありません、しかしその後は一度戻る必要があると思います」
つまり夜中の森に入った後、暫くアンジェリカの護衛に頼れないことだ。
アンジェリカを連れて森の中を進む、そろそろアンジェリカの活動限界が近いと告げられたので急いでどこかで隠れるところを探す。
微かに月の光が照らしているとは言え、さすがに自分一人で暗い森の中を突き進む勇気はないから。
ちょうどいいところに大木の根の元に穴が開いている、見たところ余裕で私が入れるぐらい。
ここでアンジェリカをダンジョンに戻す、ここに隠れて一夜を過ごそう。
夜の森はとても怖い、私はある程度夜目が利き視界があるけど、静まり返る森の中、わずかに虫と鳥の鳴き声が私の恐怖心を煽る。
恐怖心を凌ぐ話す相手もいないから耐えらずに私は意識をダンジョン内に戻した。
ダンジョン内で若干疲れた気味で隅っこに座って休んでいるアンジェリカを見て、安心感と申し訳ない気持ちが湧いてくる。
やはりダンジョン内守備を役目と決められたダンジョンボスが外での活動は彼女に大きい負担になっている。
出来ればせめて彼女を地べたではなく、ちゃんとしたベットで休んであげたい、金の余裕があれば彼女用のベットを買おう、あるいはDPを使ってベットのオブジェクト設置が出来ればいいと考えている時にある物が目に当たった。
そう言えばあの三人組の後処理はまだ残っている。
前回と同じように片付けた後、体が隠れているが放置しているとも言えるぐらいの無防備状態だから新たにプチゴーレムを三体呼び出し、そしてダンジョン外に行かせて、木の穴の外で私の体を守りながら待機と命じる。
同時に人形ちゃんもプチゴーレムたちと一緒に外に出て、同じく待機で、何かあったらすぐにダンジョン内に戻り、私に知らせるよう命じた。
今日は疲れたから寝る必要がない私でも精神的疲れで、何も考えたくないぐらい虚無状態になってしまった。
幸いに何のハプニングもなく夜が明けた。
意識を体に戻し、プチゴーレムたちをダンジョン内に戻す時に少し考えた。
この森ならある程度私自分でも何とかなるから、必要な時だけにアンジェリカを温存しよう、彼女には負担をかけるもあり、本当にいざという時にアンジェリカがグダグダな状態で戦ってもらうのも心が痛いから。
人形ちゃんに先頭偵察をして私はいつもののように薬草を採取しながら進んでいる、急いで森を抜けなければならないと頭はわかっているが、勿体無い精神が体を引っ張る。
新しい町に着いたら何をしようとしてもお金が必要だからと自分の行為を正当化しつつ、通る道の手に届く薬草などをどんどん集めた。
その結果、三日を過ぎでも未だに私は森の中にいる、方向的には人形ちゃんが案内しているから間違っていないと思うが、理由はわかっている。
ダンジョンコア室内で宝箱が三つ追加で設置したが中身は薬草などでパンパンになっている。
流石の私も反省しているから今は採取せずに森を出ることに集中している。
夕方になってそろそろ今日の隠れるところを探している時に急に人形ちゃんが私に危険信号のジェスチャをしながら走ってくる。
反射的にすぐアンジェリカを呼び出して人形ちゃんが走ってきた方向に警戒したら遠いところから黒い物体が突っ込んできた。
アンジェリカは剣を持ち、腰を据えてどんどんシルエットが大きくなる突っ込んでくる物体に備えて私をかばう。
次の瞬間で大きな衝突音がした後、ようやくあの物体の正体が判明した。
四足状態でありながら正面の高さだけで私の身長ぐらいあるイノシシだ。
アンジェリカは上手くあいつを受け止めたが、この前渡した剣が衝突の際に折れてしまった。
両者が力比べの姿勢で膠着状態になっている、アンジェリカは人化で弱体したとはいえ、まさかこのイノシシが力でアンジェリカと互角になれるとは思えなかった。
最初は私の後ろに隠れている人形ちゃんが急に飛び出して、明らかに何のダメージも与えていないけど一所懸命にそのイノシシの横でパンチとか飛び蹴りなどで攻撃している様子を見て、自分も手伝わなくちゃと気づいた。
恐る恐ると人形ちゃんの反対側に移動して、手持ちの唯一の攻撃手段である石礫の魔法を発動する。
一発で目に見えるほどにダメージを与えたが、まだ倒すほどには至らなかった、でもアンジェリカがイノシシを押さえているから、その後追加でその横腹に三発を撃ち込んだら、ようやくそのイノシシが力尽きた。
地面で横になって動かなかったイノシシをよく見ると私の石礫以外にいくつか新しい斬り痕と矢傷が残っている。
つまりこのイノシシが何かに追われてこっちに逃げてきた?
そうと考えている時にアンジェリカが折れたままの剣を持ってさっきイノシシが現れた方向を警戒し始めたと同時にそっちの森の奥から声が聞こえた。
「おーい、あそこの二人、大丈夫か?」
体調が崩れて更新が遅れてしまいました。
大変申し訳ございません;_;
まだまだ病院を通っていますがだいぶ元気になりましたから
これからも更新しますので、よろしくお願いいたします。




