思わず襲撃
アンジェリカをダンジョンに帰還したら、時間的にもいいところになったからそろそろギルドに向かうことにする。
しかしやはり服の汚れが目立たがため、エルナさんにしつこく尋問された。
そうしている間に一人老紳士みたいな人がギルドの二階から降りてきた、しかも私を見た瞬間に僅かでありながらびっくりした顔をした。
「あっ、支部長、書類の作成は出来ましたので今そちらに持って行くところです……」
「そうか、いつまで私を待たせるかと見に来たが……」
そして老紳士が突然私に向けて口を開いた。
「君が例のセレスティ嬢だな、今日は依頼に行かなかったか?」
「いいえ、今日の採取成果が少ないですが、報告をしに来たところです」
「……なるほど、エルナ、私は急用ができて出かけるから、書類は後回しだ」
何か言いたそうな顔をしたが老紳士はそのまま早足でギルドを出て行った。
「エルナさん……あの人はここの支部長?」
「そうよ、セレスティちゃんは初めて見たの?まぁ……その方は大体二階にある自分の執務室にいるから」
何だかあの人はまったく冒険者関係の人には見えないし、強いて言えばどこかの上流階級の偉い人にしか見えない。
「そうね……それは今の支部長は就任するまではギルドの職員ですらない部外者だから」
「じゃ、どうしていきなりここの支部長に就任したの?」
「あの方は貴族の四男でありながら、元々は領都で有能な事務官僚だから領都にあるギルド本部に引き抜かれ、ここに派遣されたみたい、実際にあの方はここに就任してから町長である男爵様と良き連結を取り、ギルドも色々仕事がうまく進んだよ」
なるほど、勝手に冒険者ギルドのトップならここら辺に一番強い冒険者だと思ったけど、確かにギルドは組織である以上、こういう人脈で他所と調整や事務処理が上手い人が一番トップに適任するかもしれない、だからこそゲオルクさんのチームをこの辺境の町に呼び出せることできたのもわかるような気がした。
この前宿屋の飲み場で聞いた話しではゲオルクさんが所属するクラン「赤き角笛」はこのベルントフ領だけでなく王国中でも有名な冒険者クランであり、その中でゲオルクさんは探索に特化したチームを結成し、あちこちに難易度が高い指名探索依頼を達成している。
それほどの手練れな冒険者だからこそあの時の私のダンジョンがそう易々と突破され、配下モンスターは手も足も出ないまま全滅されたこともやはりちょっと悔しいだが納得した。
いつもなら依頼を受けた日には宿屋に戻たらそのまま部屋で休むだが、今日はそれほど動いていないから、給仕の仕事を手伝うことにしたら兵士隊の隊長さんがまだお酒を飲みに来た、というより愚痴をこぼしに来た。
そしてすでに慣例になったのように、隊長さんが来たらエイラさんかルルニッカは私を呼ぶようになる。
ちょうどいい機会だ、次から町外の依頼を受けたらこっそりアンジェリカを連れて獣や魔物と戦うために、出来るだけさり気なくこの町の周辺地理と狩場を聞いてみた。
隊長さんが今地図は持っていないから簡単な方位ぐらいしか教えられないと言ったが、それぐらい教えてもらえれば行動範囲が広げられる。
この町では西門に出ると私がいつも採取していた森はあるが、狩猟依頼を受けた冒険者が向かう本格的な狩場はほぼ逆方向の平原になる、また討伐依頼ならば採取の森の奥とその先にある街道が時に亜人や魔物が出没する。
こうすると採取をしてからこっそりその平原に行くのが時間的にはほぼ出来ないことになる、採取を疎かにするとエルナさんに疑われる可能性もあるから、選択肢としては森の奥と街道が一番いいかもしれない。
そして私が森に行く道をさらに先を進めると馬車で三日ぐらいでベルナという町に到達することができる、このベルナの町から二日ぐらいで冒険者の町ウェルネックになる、またはそのまま北上したら領都に行ける。
そうすればゲオルクさん達を会いに行くにしても、領都に行くにしてもそのベルナの町が中継地点になる。
お酒が進むと隊長さんがまたここの町長に対する愚痴を始めた。
どうやら以前騎士のアルベールさんが話した監視と防衛用の砦の建設が難航している、補給と資材などが不足のが一番近いこの町の町長が非協力的な態度が原因だそうだ。
この町と近隣の村々がいつオーク部族に攻められるかもしれないのに、一体何を考えているだとか、アルベール様が何度も資源要請と兵士隊の応援を求めたが町長はまさかの一切無視するなどと延々に文句を言う。
こうしている時、急に完全武装した四人が宿屋に入り込んだ、四人の装備は同じだが隊長さんと以前見た兵士隊の装備とは見た目だけでわかるほど質が違う。
「男爵様の私兵だ、こいつらは何しに来た?」
と先まで酔っ払いながら愚痴を垂れ流す隊長さんが一気に酔いが覚めた。
「セレスティという小娘はどこだ、出てこい!」
目標は私だ、しかもその態度は明らかに友好的じゃない、まさか私の正体が知らずの間にバレてしまったか!?
幸いいつも隊長さんと私がいるテーブルは飲み場の奥隅っこにあり、あの四人組はまだ私を見つけていない。
「セレスティ、理由はわからないが、君はあいつらに関わらないほうがいい、俺があいつらに事情を説明することを求めて足止めするから、君は今すぐこの場を離れよう」
隊長さんはそのまま席を立ってその四人組に向かう、そしてエイラさんと急いで奥の厨房から出たモッカさんも隊長さんと一緒に宿屋の入口であの四人組を対応している時、ルルニッカはこっそりこっちに来た。
「セレスティちゃん、エイラさんは早く裏口で外に出なさいって、私の後ろに隠れて早く行こう」
みんなの態度からその男爵の私兵はどういう存在と認識されているかを一瞬で察した。
ルルニッカのおかけで難なく厨房の裏口に到着した、外に出る前にルルニッカが心配そうで、私を教会に行くよう勧められた、あそこなら男爵様も迂闊に手を出せないはず、そして事件が収まったらまだ宿屋に戻るようと言われた。
とりあえずルルニッカに言われた通りに教会に向かおうとして、夜の大通りに出た瞬間、さっきの四人組とまったく同じ装備の三人組と遭遇してしまった。
「おい、こいつは例の餓鬼に違いねぇぞ、やはり裏口から逃げてきた」
「大人しくしろ!じゃねぇと痛い目に遭うぞ」
その三人組が剣を抜き出して、私に向けて歩いてきた。
こいつらに捕まれたらどうなるか分からないが、碌なことはないだけは知っている、だから全力であの人たちに背を向けて走り出す。
「待って!クソガキ、ただじゃ済ませんぞ!!」
あの人たちは鎧装備だから足はそこまで早くないが、身長差で走る幅はこっちが圧倒的に負けている、このままでは遅かれ早かれ追いつかれることになる、だから最終手段を使うしかない。
そうと決めた私は近くの裏路地に逃げ込み、急いでアンジェリカを呼び出す、 あの人たちにとって角を曲がったらいきなりアンジェリカが目の前で道を塞ぐような状態になる。
「おい、女、こっちはポンゼル男爵の者だ、邪魔するな!」
「お嬢様、この人間たちは敵対する者ですか?」
「ええ、アンジェリカ、この三人組は敵よ!一人でも逃がしちゃダメだ!」
「こいつはガキの手の者だ、抵抗するなら始末しろ!」
三人組が一斉にアンジェリカに対して攻撃を始めたが、アンジェリカは軽く剣でその攻撃を薙ぎ払う。
アンジェリカはそのまま踏み込み、一番前の人が反応する前に左手で腹パンを入れ、その人の体がくの字になり鼻と口から大量の血を噴き出したまま倒れ、同時にアンジェリカの右手が返す刀でもう一人を切り伏せた。
同僚の二人が倒されたが残りの一人が両手で剣を高く掲げてアンジェリカに向けて斬り下ろしたが、アンジェリカは左手でその剣を掴まり握り潰した。
信じられない顔をした私兵は逃げようとしたが、背を向けた瞬間アンジェリカに首を落とされた。




