ダンジョンコアとしての生活①
とりあえず現状を把握したい。
自分がダンジョンコアだということはさっき確認した。
ダンジョンコアとして生きていけない、どうすればいいかは誰に教えてもらっていなが、意識の何処かでその知識がある。
あんまりにも自然に知ってるので違和感すら感じられないほど。
(一応自分が元人間だと思うだけど……)
記憶の片隅にダンジョンコアとして世間一般の認識は覚えている。
まずはモンスターを生み出し、人間の生存領域を脅かす存在、ただし稀に無限の資源を生み出し、人間に大いに恩恵を与える存在でもある。
また野生の獣やモンスターにとって、そのダンジョンコアを取り込めば一般的な成長による『進化』ではなく『変異進化』という変化を成し遂げることができる。
その『変異進化』は普通のゴブリンを一気にゴブリンキングぐらいまで変化させることが可能で、普通のモンスターが一瞬で災害級モンスターに変貌するほど恐ろしい効果がある。
だからこそ、ダンジョンコアは獣やモンスターにとって極上のご馳走みたいなものであり、人間として危険性があれば排除するもの、少なくともモンスターに奪われないために、確保できないと判断したら即座破壊するものである。
つまり今の自分はどっちにも狙われる存在であることを再確認した。
(食べられるのも破壊されるのも嫌だ!)
(これはダンジョンコアらしくダンジョンを防衛するしかない!)
こんな決意をした後、改めてこの洞窟を観察すると地面にいくつかの骸骨が散乱してある。
(もしかするとここは獣やモンスターの巣か!?)
その様子は明らかに何者かによって食い散らかしたようにバラバラになっている。
つまりその肉食の動物あるいはモンスターがここを拠点として生活していることが簡単に想像できる。
そして、同時に私がそのものにとって極上のご馳走である。
これは非常にまずい、何時自分を狙う敵が戻るかもしれない緊張感が一気に高まり、一刻も早く自分を守るための防衛体制を整える必要がある。
まずは洞窟を自分の領域にすることにするで全てが始まる。
加えて先から視界の右上隅っこにまた例の吹き出しが出てきて【ここをダンジョン領域にしますか?】と自己主張いる。
心の中で【設定する】と考えたら自分の感覚が一気に広がり、この洞窟が自分の一部になったような不思議な感じをしたところ、新たに【出入り口の設定】という項目を表示され、どうも世界の理として、ダンジョンコアは閉ざされた空間で引き籠ることが禁止されている。
どうやら侵入者がダンジョンに押し寄せてくる時に最終手段として「お客様、申し訳ございませんが閉店です!」という方法は神様の決まりでできないみたい。
とりあえず元にある洞窟の開け口をそのまま出入り口を設定したら、その吹き出しには【増築】と【召喚】の項目と【DP:325/325】に入れ替えるように表示された。
【増築】の項目に注目するとさらに【オブジェクト設置】【フロア設置】【階層増築】【環境改変】などが増え、自分のダンジョン領域を自由に弄ることができるみたい。
ただし【オブジェクト設置】と【フロア設置】以外の項目は必要とするDPの量が今所持するDPの最大値よりかなり上回っている、特に【環境改変】の必要量は桁数が違う。
【フロア設置】以外どうにもならないので、とりあえず放置するしかない。
今すぐの問題としては外から直接にコアが見えるのは不安なので、一フロアを増築し、DP的には選択できるのは一番安い【ただの洞窟空間(小)】しかできないだが、自分がいるコアルームと横隣接の感じでそのフロアが出入り口に連結することで自分を外から見えないようにした。
外からの光が遮ったので、コアルームは暗くなったが、コアとしての視界は何の問題もなくはっきり見える、そして気づいたのは自分が台座の上で淡く発光している、暗いコアルームでさらに神秘性を増していること。
外から直接見えないから一安心したができればそんな強い自己主張なしで、暗い洞窟地面の隅っこで目立たずに隠れることができればよかったのに。
増築をしたら体中に一気に力が抜き、軽く眩暈を感じたと同時に吹き出しの表示が【DP:75/325】になった、これは今自分がダンジョンコアコアとしての力でしょう。
(まぁ……今はLv.1だし、生き残ればいつかは成長するだろう)
今はできることをして生き残ることが最優先事項だから。
洞窟を自分の領域にした次に必要なのは、自分は手も足もないし動けないから、自分を守るために配下としてモンスターを召喚し、防衛活動や罠の製作などしてもらわないとどうにもならない。
むしろモンスターたちの活躍なしでダンジョン防衛は不可能であろうと思えるぐらい。
モンスターたちこそダンジョン防衛の主役であり、ダンジョンコアである私ははただ最深部のコアルームでモンスターたちがうまく外敵を撃退することを祈るしかすることがない。
そうと考えると残りの75DPで【召喚】しなければならない。
【召喚】という項目に意識するとリストみたいに色んな【種族】とその種族の派生型モンスターが羅列されている。
さらりと見たところ、どうやら今自分のダンジョン領域は【森林型洞窟ダンジョン】と分類され、相応的に召喚できる種族が限定されている。
ゴブリン、コボルド、ゲルン、オオカミ、バットなど基本的に森と洞窟で活動するモンスターが対象になっている。
イメージでは強い動物系モンスターとしてはクマもリストに載ってるけど、一番安いクマでも今持っているDPの上限より高い、つまりレベル上げてDP上限が増やさない限り召喚は無理だ。
その他ゾンビやスケルトンは一応モンスターとして召喚リストに載ってるだけど、配置すれば外敵を怖がらせることができるが、四六時中にアンデッドを自分の周りに徘徊させる勇気はないから無視。
またオークとワーウルフとスライムなどはそれぞれゴブリンとコボルドとゲルンの上位種として数倍のDPを消費すれば召喚することもできる。
そのリストを参照して残りDPで召喚できるのはせいぜいゴブリン・コボルド・オオカミ一種類三匹あるいはゲルン・バット一種類五匹しか召喚できない、しかも今持っているDPを一気に使い切るのも考えるもの。
(ゲルンとバットは数多く召喚できるがゴブリンやオオカミより弱そうだし、オオカミは罠作れそうにないし……)
色々考えた末は二択ゴブリンかコボルドまで減り、最終的にコボルドを選び二匹を召喚する。
するとまたさっきと同じように力が抜ける感覚と同時にコアルーム内で光とともに二足歩行のワンちゃんが現れた。
外見としてはちょっと頼りがないですが、一応牙も持ってるし、二足歩行だし、普通の犬とは違い、手にちゃんと物を持てる指もあるから石などの武器は使えるだろう。
(やはり外見的にはコボルドを選んだのが正解……もふもふして可愛い)
今の自分は触ることができないのがすごく残念だった。
二匹のコボルドが鼻で周囲を嗅ぎながら座って命令を待っている、その様子はまるで飼い主に「待て」をされたワンちゃんそのものだった。
君たちは隣のフロアで防衛しなさいと念じたら、そのコボルドたちがちゃんと命令通りに移動を開始した。
コボルドがコアルームを出たところ、彼らはどのように防衛活動をしているであろうと思いながら、自分の視線を動かそうとする時、一瞬的に視界が隣のフロアを俯瞰するようになった。
そして目に入ったのが欠伸しながらくつろいで、時に可愛くじゃれあうワンちゃんの姿であった。
彼らに番犬としてもうちょっと警戒心と危機感を抱いてほしいが、とりあえず今日はできることをしたので諦めてよしとしよう。