不審者、現る
宿屋の仕事をしながら、三日に一度冒険者として採取依頼を受ける生活も随分慣れてきた。
冒険初日で出会ったあの芋虫はどうやら木の上で待ち伏せして、小動物などが木の元に来たらいきなり飛び降りて丸呑みする厄介な魔物である。
普通の大人が注意しているなら対処できるが、子供にとってかなり危険な相手になる、だからこそ毎回採取依頼を受けようとしたらエルナさんが心配してくる。
幸いあの森は芋虫以外にオオカミも滅多に現れないので、今の私なら難なく対処できる、しかし油断していきなり頭がパクっとされたことがもう二度と遭いたくない、危うく下着と乙女の尊厳に汚点を残す大事件になる。
人形ちゃんも何度か丸吞みされたが、その都度無事に救出することが出来てよかった。
また薬草採取の報酬は安いなので一般的には不人気の依頼に分類されている、大体の冒険者たちが別の依頼の片手間に採取し、精算所で事後報告するのが普通になっている、薬草の供給が安定していないからギルドにとって進んで採取の依頼を受ける私は希少な存在になっている。
だからこそエルナさんは毎回心配しているけど、私を止めることができない。
宿屋が兼業する酒場は夜になると一般の人以外に冒険者も多数集まる、あいさつの代わりに色々と冒険者活動について話しを教えてくれる。
大半は自慢話になるが、特にダンジョンに関する話題が私にとって非常に興味深い。
この町の周辺は以前私のダンジョン以外にダンジョンを発見したことはない、ダンジョンの近くにある町は冒険者たちが集まり、商売も繁盛するらしい、特に遠く北にあるウェルネックがこの国でも有名な冒険者都市になっている。
確かにゲオルクたちの本拠地である町だから、やはりいつかそっちに行って他のダンジョンはどんな感じかを自分の目で見てみたい。
そしてとあるダンジョン探索の話しで私自身に関する疑問の答えが出た。
ダンジョンの構造は大体迷路になっている、例え地図を持っていても冒険者たちは探索中あちこちに迂回しながら次の階層に繋がる場所を見つけ出さなければならない。
ならばダンジョンの壁を壊して直線的に進めばいいと考えられたこともあったけど、ダンジョン自体どんな武器・魔法で攻撃でも多少壁を削られるが、ダンジョンの壁に穴を開くことはできない、攻略困難のダンジョンを外部から破壊することもできない。
つまり私がオークに殴られても、変な芋虫に噛まれても傷一つないのは「魂無き人形」が頑丈ではなく、「魂無き人形」の体がダンジョンだからということだ。
次の自由時間の日から実験を兼ねてもっと森の奥地に探索して、レベル上げと魔法練習のために積極的に芋虫を倒してきた。
その他に大体週一で兵士隊の隊長さんが宿屋の飲み場に来る、主な目的は私であった、話内容はやはり私がお家のことを思い出したかとさりげなく聞いてくる。
ついてに私からギルドを出たら時々に変な視線を感じたことを相談した。
「嬢ちゃんが見た目がすごくいいから、俺は治安を維持する兵士隊の隊長だけど、そういう人身売買目的な誘拐はいないとも言い切れん」
「だから、そろそろお家の人と連絡を取ったほうがいいじゃない?」
隊長さんの必死さが切実に伝わってくる、絶対ずっとそのなんちゃら男爵にチクチクと言われているだろう、ごめなさいと心の中で謝る。
今日の宿屋の仕事が終わり、ワクワクして自分の部屋に戻る。
採取をしながらオオカミとあの芋虫を倒し続けたことで遂に念願のLV.10に到達した。
ダンジョンに設置できるオブジェクトが増えたけど、なぜか召喚できるモンスターの種類は増えなかった。
しかしそれより一番大事なのは「ダンジョンボス」の項目が召喚リストに加わったこと。
ダンジョンボス、いわゆるダンジョンの最終防衛者であり、一番つよりモンスターであり、ダンジョン内では唯一無二の存在だ、どんなモンスターをダンジョンボスとして召喚しようかなとずっと悩み続けた、やはりドラゴンかな……
しかし「ダンジョンボス」を召喚するためにまずはかなりのDPを用意しなければならないし、仮にドラゴンを召喚できたとしても維持費がどれぐらい跳ね上がるのが心配になる。
採取と宿屋の仕事でもらったお金で魔石を購入し、維持費以外に少しずつDPを貯めることができたが、さすがにダンジョンボスを召喚できる量にはまだまだ届いてない、だから休みの時間でリストを眺めるながら色々と考えることが最近の日課になっている。
今日も依頼を受けて意気揚々と森で採取する、こうして地道にお金を稼いで魔石を買い、頑張ってダンジョンボスを召喚できるよう人形ちゃんと連携して薬草を集めている。
私がレベル上げするために乱獲したせいか近頃あの芋虫がほとんど見当たらなくなった、採取の邪魔にならないのがうれしいが、反面に経験値の素がなくなったのがちょっと残念と思っている。
だがこうして周りを気にせずに採取するに集中できるのも悪くない。
そしてこれは油断になってしまった。
突然後ろから鈍器で殴られたみたいな衝撃を感じた瞬間両手が後ろに縛られた。
「こいつが例のガキだな」
「間違いない、特徴は一致してる、それとギルドで町外の依頼を受けるのがこいつしねぇ」
「ならばさっさと片付けろ、あの方を待たせるな」
「しかしこいつはなかなかのべっぴんちゃんだな、もっと大きくなったらえらい美人になりそう」
二人の男が私をうつ伏せて地面に抑えている、足をバタバタと抵抗しながら大声を出そうとすると片方の男が自分の指と布の塊をともに私の口に詰め込んできた。
次の瞬間目の前の男が消えてしまった。
「てめぇ、何をしやがった!?」
ああああああ、ダンジョンに侵入された!!
しかももう一人にその瞬間を見られた!!
こうなったら絶対に逃がすことができない、ちょうどもう一人が私の手を押さえているから左手で何とかあいつを掴まえて、一緒にダンジョンに来てもらうしかない。
「何なんだここは……」
「クソッ!あのガキの仕業だ、きっと何かの幻覚だ」
急いで意識をダンジョン内に戻って見たのが突然暗い洞窟みたいな場所に転移されて混乱で立ち尽くした二人でしたが、その視線がすぐに台座の上で薄らに輝いている私を発見した。
「おい……見ろ……あれは宝石か?」
「おおおお、あれを売りさばけば山分けしても暫く遊べるぞ!」
二人が急ぎ足で私に向けて近づいてくる
久しぶりのダンジョン防衛だ、しかし今はワーウルフところかコボルドも召喚リストから消え、手持ちのDPで防衛に適するモンスターを検証する暇もない。
私が慌てふためいている時にプチゴーレムがヨタヨタしがならあの二人に突撃を敢行した。
「なんだこいつは!?」
二人が急いて武器を取り出しプチゴーレムを攻撃した、その土で構成された体で何とか耐えたがほんの少しだけの時間稼ぎにしかできないことが明白だ。
もう終わったと諦めかけの瞬間、私の横に置かれている女神さまの髪飾りが輝きを出し、リストの「ダンジョンボス召喚」の項目が突然開いた。
もう色々考えて厳選する余裕もなく、急いで一番上のモンスターを選んで召喚をした。
召喚の魔法陣は以前ワーウルフを召喚する時に比べできないほど大きく、そして召喚の光が消えた瞬間にダンジョン内が揺れるぐらいの咆哮とともに炎を纏う赤い巨体が現れた。
「嘘だ!なんでこんな所にデーモンが現れた!?」




