町に行く道中
はっと急に目覚めた。
ぎょろぎょろとして周りを見るとやはり森の中の野営地だった。
しかしさっきまでの出来事は夢じゃないことがわかる、その証拠はマントの中で自分の手があの髪飾りを握っている。
早速だが、左手に設置された裏口を使ってみる。
見た目的には左手の掌には何の変りもないだが、髪飾りを取り込もうと思った瞬間、髪飾りが消えて、意識をダンジョン内に戻したらちゃんと地面にあった。
急いてプチゴーレムに拾って私の所に持ってきてもらい、私の本体であるコアの隣に置いて、大事に保管しましょう。
もう一度心の中で女神ファナニス様に感謝の言葉を述べたら、ことの整理とこれからの方針を考えることにする。
まずは言われた通りに自分のことを優先する。
今のダンジョンと体とプチゴーレムの維持にDPの回復方法を確保しなければならない、理想的には自分で魔物を倒して魔石を手に入れること。
配下モンスターに戦ってもらえればいいけど、今は1DPも大切したいから、追加の召喚は望めない、ましてモンスターを出すところが他の人に見られたら大変なことになりそう。
やはり魔物から魔石を取るにはしばらく自分で戦わないといけない。
自分は戦えるかな……今日はゴブリンに襲われた時、反射的に出したパンチがゴブリンの顔面にめり込みして倒すことができるが、多分今の体の性能として倒せると思う、しかし心の準備はもう少し時間が要る。
もうひとつ気になったこと、今日は洞窟ないでゴブリン・オークを始め、加えてあの大きなオークに何度も叩かれて蹴飛ばしされたが、かすり傷以外大きな怪我はないし、衝撃感は多少感じたがほとんど痛みを感じなかった。
この魂無き人形の体はこんなにも頑丈なの?
召喚の時にDPの消費量はかなり使ったけど、あれほど攻撃を受けたにも関われずちょっとしたかすり傷はあるがすぐに治り、大きな怪我は一つもないのはさすがに私も異常だとわかる。
まぁ、わからないことをずっと考えるのも仕方ない。
まずは目先のことを考えましょう。
現実的にはやはり町に行って、仕事を見つけて給金で魔石を買うかな。
しかしこんな子供は本当に仕事見つけられるのが問題になる、あのゲオルクとハンネスという冒険者に子供でも出来る仕事を紹介してもらえないかな……後で聞いてみよう。
次には住む所、町に行ったらさすがに女の子一人で路上生活は嫌すぎる、さっき騎士の人とゲオルクの話しでは私を孤児院みたいな所に送るつもりみたい、これなら少なくとも住む所はあるけどお金を稼ぐことができなくなってしまう、後でちゃんと断るしかない。
ならばやはり理想的には住み込みの仕事がほしい、子供を家政婦として雇ってくれるところはあるかな。
それに問題になるのは……掃除は多分できるけど、料理には自信がない。
色々考えている間に日が昇ってきた、休んでいた人も次々と起きて食事の準備を始めた。
「嬢ちゃん、ちゃんと眠れた?明日の昼辺りに町に着くと思うから、もうちょっとの辛抱だ」
ハンネスが朝ごはんを持って話しかけてきた。
メニューとしては昨日の晩ご飯とまったく同じでした、これは野営生活だと思うとやはり兵士と冒険者の人は大変だった。
冒険者と騎士は他の兵士の人と違い、明らかに自分が背負っているリュックより大きな物を出し入れしてるけど、食べ物についてはやはり簡単な保存食しか持っていないみたい。
私は食事について多分要らないと思うけど、やはり人前ではちゃんと食べたほうがいい、味を楽しむこともできるから、ちまちまと食べながらみんなが野営の片づけと出発の準備を見ていた。
出発する時またハンネスがこっちに来て昨日のと同じようにハンネスに抱きかかえたまま移動を始めた。
確かに楽は楽だけど……やはり恥ずかしい。
森を出るまでの道中でずっとオオカミの集団が遠巻きでうろうろしていたことがあった。
多分負傷した兵士の血の匂いで惹きつけられただろう、明らかに襲うタイミングを窺っていた、しかしこっちには人数があって、さらに先頭は騎士と最後尾では冒険者の隊長であるゲオルクが警戒しているから、何とか無事に森を出た。
森の外に出たら一気に視野が広がる平原であった。
遠目で見れば人が住んでいる所すら見える、そして一応踏み均された道があるから、ここからその村には行けるだろう。
久しぶりに開けた風景に感動しているところ、向こうから革で作られた胸当てを着て槍を持っている三人組が近づいてきた。
見た目的には盗賊の類でもないし、こっちでは騎士という明らかに強い人いるし、人数も上回っているから警戒する必要はないでしょう。
その三人組は急いて先頭にいる騎士の前に来てで片膝をついたまま聞いてきた。
「騎士様、森の中はもう大丈夫でしょうか?」
「脅威は排除した、しかし瘴気の浄化はもう少し時間がかかる、伐採・狩猟及び採取は通達があるまで禁ずる、以上だ」
どうやらこの人たちはこの森を頼って生活している近隣の住民だった。
騎士の人がそう宣告すると明らかに落胆した顔になっていたけど、さすがに騎士の人に対して反論する勇気はなかった。
三人組は一度騎士にお礼をした後、がっかりした様子で別々の方向に歩き出した、近隣の村は一つだけではないみたい。
このやり取りをした後、再びこっちも移動が始めた、兵士の隊長は騎士に近付いて二人は歩きながら相談をしている。
「アルベール様、オークの話しをして、村々に警戒態勢を取らせたほうがいいでしょうか?」
「いいや、前哨基地を潰したから、しばらくは問題ないだろう、あいつらはまたこっちに来るとは限らないし、また来るとしても時間はかかる」
「そして俺が領都に戻ったらすぐ領軍を編成してここに簡易な砦を作り駐屯させるつもりだから、今のところは不安を煽りたくない」
「そこまで考慮してありがとうございます」
「でも君らは厳重な警戒態勢を取ってもらうぞ、このことは俺からポンゼル男爵に伝える」
「はっ、周辺地域に対する巡回警邏を強化します」
二日目の野営の時に私はいつも騎士の後ろに控えている金髪青年のことが気になってきた。
この人は移動中ほとんど話しはしない、兵士とは装備が違うし、何だか周りからも敬遠されている様子、しかも兵士の隊長は年下である彼に対して口調は結構丁寧になっている。
どうしても気になっていたから、ハンネスが食事を持ってきたときに我慢できず聞いてみた。
「あぁ、ユーク殿のことか、彼は騎士見習いだ、確かにどこかの貴族様の息子さんで、騎士のアルベール様が彼の教育係だ」
「なるほど、だから彼はあんまり皆と話しもしない、ずっと騎士さんの後ろに控えているだけ、でも騎士さんは普通に兵士の人とおしゃべりもしたけど……」
「それはアルベール様は気さくな方だから、普通の貴族様ましてあの人はまだ若いだからそんなことはしないよ」
「自分が偉いと思っているから?」
「そうかもしれないが、多分交流する必要がないと思っているだけでしょう」
「それと今日は騎士さんが話した瘴気はなんでしょう?」
「君は知らないのか?あれは森の中にあった霧のようなものだ、そう言えば君はよくあの洞窟で無事だったな」
「外見的には君は瘴気に汚染された様子はないから、皆もこのことを忘れた、大丈夫か、体に何か違和感はないか?一度神官のルーテル殿に診てもらった方がいいかも」
「大丈夫です、何の違和感もない」
色々検査されたら、この体がモンスターであることがバレるかもしれないから、多少は慌てていたが、はっきり断らなければならない。
「そうか、もし体に異様な腫れや黒ずんだ所とかがあればすぐ教えろよ、痒くなって腐れ始めるなどがあったら大変なことになるぞ」
「はい……ところで先言った森の中の霧のようなものは瘴気……?」
「あぁ、元といえば俺らはこの瘴気により魔物が狂暴化になったので調査とその発生源を突き止めるために来たから」
この話を聞いて、ものすごく心当たりがあった。
瘴気ってのは多分私がずっと出したあのモヤモヤだ、ただ配下モンスターたちが元気になったと思っていたけど、まさかこの冒険者たちを呼び寄せった原因は自分だったと思いもよらなかった。
「それにあの瘴気は多分ダンジョンコアか上位の魔物が地脈のを吸い上げていたからだろう、あの洞窟周辺の土地がかなりやられたよ、止めないと森だけでなく、被害がどんどん広がっていくぞ」
地脈を吸い上げる……あの地面からのチカラのことか!?
あれは気持ちよく簡単にDPを回復できるものだと思ったけど、実は私がかなりやばいことをしていた……だからこそダンジョンコアは敵視されるのも納得できた。
「とりあえず食ったら今日はもう休みしろ、明日町に到着したら君はこれからのことも決めなければならないから、そこまではよく考えてな」
今朝とまた同じメニューを食べながら、反省した。




