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ダンジョンコアも世界を回りたい  作者: 二酸化炭素
13/25

まどろみの中の出会い

「■■■■起きなさい」


「うん……もうちょっと……あと5分……」


「起きなさい」


 何だか久しぶりに眠ってしまった。

 目を擦りながら起きたら目の前に紫色長い髪の女性が空中に浮いている、よく見るとこの女性は半透明で輪郭がモヤっとしてはっきりしない。

 周囲を見ると遥か昔に廃棄された神殿みたいな場所、所々に崩れた物と石像があったが、この女性の真後ろにあった一番大きな石像は辛うじて原型を保っている。


 私は確かに兵士さんと冒険者たちと森の中で野営しているはずだけど……


「久しぶりかな、ごめんね、今の私はこれでもう精一杯でかなり無理をしているから」


 この女性は誰何だろう?

 申し訳なさそうに穏やかな口調で私に向けて話している、私のことを知っているみたいだけど、私はこの人のこと全然知らない。


「そうですね、改めて自己紹介するわ」

「今の君はセレスティね、私は元困惑の女神ファナニスだわ」


「元……?」


「ええ、今の私は神としての権能を失われ、信者もなく、ただの忘れ去られた存在だわ」

「そして貴方の到来をある方々に頼まれて祝福を与え、見守る者」


 急に色々重要そうなキーワードが出てきて、頭の整理が追いつかない。


「それはそうね、貴方がこちらの世界に来て、下界に向かう前に貴方の記憶をほぼ消去したのが私だから」


「!!?」


 突然の事実で完全に目が覚めた。

 私はこの元神様に記憶を消された……どうして……?


「それは私と貴方の契約だわ」

「貴方がこちらの世界に来た時、まるで前の世界で全て悪意に遭い、自分の繭に引き籠っていた、貴方が繭の外にいる私の言葉に反応したのはこちらに来てから少なくとも300年以上過ぎたよ」


「300年!?それと私は別の世界から来たの?」


「ええ、貴方の元の世界の神々は貴方がその世界の全てに嫌気になって、輪廻を拒み続けた、しかし大した善行も悪行もなしで魂の帰属はどこもないと困っていたわ」

「だからせめての救いとして貴方をこの世界で困惑の女神であり、迷子の指針である私の元に送られてきたわ」


「私をこっちの世界に送り、何をさせるつもりなの?」


「特に何も求めていないわ、その神々はただ貴方が純粋しすぎたゆえに歪まれ傷だらけの魂をあの世界から遠ざかって、いつか繭から出てきて再び自分の意志でこの世界と繋がることを願っている」


「だから私の記憶を消したの?」


「ええ、それは貴方が繭から出てくる交換条件として私と契約したから、例え今の貴方が取り消しとかお願いとかしても記憶を戻すつもりはないわ」

「しかし完全に消去したわけでもないから、そうしたら貴方は貴方でなくなるので、魂にある程度残滓が残っている、今は忘れたようなもので、何かのきっかけがあれば少しだけ断片的に思い出せるかもしれないわ」


「じゃ私が人間ではなくダンジョンコアになったのは?」


「それは貴方が再び下界に戻る時の要望を最大限に答えた結果」

「出来るだけ人から離れたい、自分で静かに過ごしたいという要望ね」


 だから森の中の洞窟で自分でダンジョンを作り、完全に世界と隔離せずある程度引き籠れても自立できることになった……


「そういうこと、しかしあの洞窟がそんなに危険な場所であると気付かなかったのが私のミス、貴方をダンジョンコアとして転生させるために残りの神力をほぼ使い切ったとは言え、察知できなかったことを許してほしい」


「かなり危なかったけど、今はうまく逃げ出したからもう気にしなくていいよ」


「そう言われると嬉しいわ」

「それに貴方も面白いことをしたわね、まさか人形の体にダンジョンを形成して逃げ出したとは、これを見た時に数千年間神として過ごしてきた私も驚いたわ、貴方がこの世界の理の中でかなり珍妙で歪んだ存在だわ」


 私がこの世界の歪んだ存在!?

 そして神様にここに呼ばれて……もしかして処罰とかこのまま消されるの?


「えぇ……!?それって私はどうされるの?」


「いいえ、貴方が想像することはないわ、むしろ私が貴方を呼んだのはその融合の手助けをするためよ」

「そのままじっとしてね」


 目の前の女神様は目を閉じて神殿のあらゆる所から光の粒子を私の周りに集めてくる、中央にある大きな石像以外、神殿内で残り少ない崩れかけた石像がさらに数体は完全に崩れ去った。

 光の粒子が私に当たった瞬間体中に溶け込み、痛みこそはないが、しばらくの間に体の中が色々弄られてくすぐったいような感覚になった。


「ふぅ……これならもう大丈夫でしょう、ちょっと動いてみて」


 言われた通りに首と手足を動いてみて、歩いても先までのようにまるで着ぐるみの中にいるみたいな感覚がなくなり、動きが自然的になった。


「それとそのダンジョンの出入り口は貴方の口だけで不便だから、その左手の掌に裏口みたいなものを構築して、自分の意志でそっちから物の出入れを出来るようにしてあげたわ」


「ありがとうございます」


 確かに毎回私の口の中から回復ポーションなどが飛び出てくることはなかなかシュールな光景だ。


「いいえ、元々私が貴方の手助けをすることを頼まれたから、また私はかつて困惑を司る女神の誇りを持って、最後に別の世界より来た魂の迷子である貴方の指針になれれば私の使命は全うことができたでしょう」


「あの……それってことは……」


「ええ、そう遠くない未来に私は消えるわ」


 先までと変わらない微笑みながら穏やかな口調でまったく他人事みたいに自分が消えることを語る女神に自分がちょっと驚いた。

 色々世話になったから、今度は自分が何か恩返しとして出来ることはないかと聞いた。


「その気持ちは嬉しいけど、私はすでに信者を全て失って忘れ去られた存在だから」


「ならば私が女神様の信者になる」


「ありがとう、でもそれは無駄よ、ただ信者一人なら信仰として成り立たないわ」


 やはりそう簡単にはできなかったか……

 確かに信者一人で信仰してもらえれば神様として存在し力を振るえるなら、この世界は神だらけになる、最悪として自分を信仰するのも適用するかも。


「ならば私はこの世界中を回って女神様である貴方が存在していることを宣伝する!」


「それはやめたほうがいい、貴方は宗教を興そうとしたら色々巻き込まれるし、最悪の場合に邪教の信者として追われるわよ」


「でも……」


「いいのよ、私はすでに自分の運命を受け入れたから、でも出来ればちょっとした心残りを手伝ってほしいわ」


「それはぜひ教えてください」


「出来なくてもいいけど、私が下界に残した神格の欠片を回収してほしい」


「神格ですか?」


「ええ、神の力は各地にある自分のシンボルや聖遺物や肖像などを通して信者に伝わり下界で行使されるもの、そしてその物は長い年月で神の力が浸透し融合したら稀に神格の欠片という存在になる」

「神の力の欠片ともいえる物を求めて自分の物とするあらゆる種族や存在がある、もしくはその欠片が自分で意思を芽生える場合もある」

「良き方向に使われる場合もあれば、悪い方向に使われることもある、だから貴方に出来るだけの範囲でいい、私が残した欠片を回収してほしい」


 確かにこんな物を世界中に残して、もし悪用されたら嫌だね

 どこまで出来るかはわからないが恩返しとして頑張る価値はある。


「でも……どうすれば見つかれるの?そして回収したらどうすれば女神様に返却できる?」


「見つけ出すことは貴方ならそう難しくないわ、だって貴方も私の欠片みたいなものだから、近くに他の欠片があればすぐわかるわ」


「えぇっ!?私が!?」


「そうよ、だって普通のダンジョンコアなら負の魔力とか強力な瘴気や怨念などの溜まりから発生するものよ、貴方のコアは全部私の神力で構成するから、正確的では貴方がダンジョンコアの機能を持つ神格の欠片だわ」


「なるほど……」


「それともし回収できたら、貴方が持つといいわ、仮に私に返却しても私が消えた後また下界にばらけてしまうから」

「神として維持できるのは信仰の力であり、神の力ではないのよ」


 どうにもならないのか……でもまず女神様の欠片を悪用されないように回収しつつ、何か方法はないかを考えましょう。


「その気持ちは嬉しいけど、セレスティ……貴方はまず自分のことを優先しなさい」


「はひぃ……」


 色々自分に関するびっくり情報が得て、逆くに今の私自身もまだ色々問題を抱えていることを忘れてしまった。


「セレスティ、そろそろ時間だわ、最後にこれをあげる」


 そうすると女神様が私に近付いて自分の髪飾りを渡してくれた。


「これはまだ私の神力が少し残っているもの、もし必要な時があればきっと貴方の力になれるわ」

「それと今回のように直接会って話すことは多分もうないでしょう、でも私はいつも貴方を見守っているよ」


 女神様は相変わらずの笑顔で私を抱きしめながら頭をなでなでしている間に私はまた徐々に意識が薄れ、眠りについた。


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