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幻影道 第四巻   作者: SAKI
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「Sisters」

 ココアを作り、クッキーもセットで持って来ると姉さんは微笑んだ。好きな物くらいなら俺にだって覚えてるもんさ。


 数十分間俺と姉さんは話すことはせず心を落ち着かせココアを啜る。ホットミルクでも良かったんだが姉さんはココアが好きだこちらの方が喜ぶと思ってココアの方を選んだんだ。


「あっ、マシュマロ…」


 ポツリと呟く姉さんのココアのカップには小さなマシュマロが入っている。口角が上がりリラックスする姉さんは微笑んだ。


「ありがとう♪」


 優しい笑顔をする姉さんは何処までも美しくまだ幼い顔が輝いて見える……の筈なんだが幼い頃の瞳とは程遠い輝きをしている。


 淀み、燻り、復讐の怨恨を抱えたものが瞳の中に入り混じっている、大人といえこれ程の殺意に満ちた女性は早々いないだろう。


「どーしたの?お姉さんに一目惚れした!?」


 冗談でもキツイ妄想に姉は挙動不審にも照れている。


「んな訳ねぇよ、変わったなって」


 何がとは言わんがガキの頃と比べると童顔以外全部変わってることだな、思想と性格、喜怒哀楽、スタイルや癖も大分変わっている。


「そー?あっ、もしかしてローグちゃんも胸いじりするの!?」


 最大のコンプレックスであることを指摘されたと勘違いした奴の脳天を叩く、少しはネジが締まるだろうとな。


「冗談なのに〜!」


 むっと何故か怒られるがココアはもう飲み干してクッキーもなくなっていた。機嫌良いのか悪いのか分からねぇな。


「人ってのは変わるものよ?お姉さんが利き手変えたのも好きな物も大人が“大嫌い“なこともね」


 最後だけやけに感情が籠もってる言い方だ、だがやはり違和感を感じる大体は癖は意識して直せる人と治らない人の二つに分かれるのだが姉さんの場合まるで小さい頃の癖が違っていたような感覚だ。


 姉さんは一度誓ったら絶対守るし戦うのが大嫌いで人々が幸せになるような事を考えているちょっとおませな奴だったんだが今は全部真逆だな。


 平気で冗談を言うしころころと意見は変える、戦うのが趣味で子ども以外ゴミ扱いしてる、酷くなってるような気がするが姉さんは姉さんだ留めておこう。


「ま、そんな話してもつまらないし早く寝ようか♪」


「ちょっと待てアンタ俺の部屋で寝る気か?」


「うん?」


「正気か??」


「ローグちゃんこそ正気?お姉さんが弟を溺愛し過ぎて一時絡んでくる女性を皆ボコボコにして殺したの知らないの?」


「知り合いが消えてたのはそういう理由かよ!!中には武器屋の娘がいたんだぞ!?」


「知らないよ、ローグちゃんに気安く話し掛ける女なんてどうせ下らない目的があるんでしょ?」


「偏見と自己主張激しい姉さんだな…」


「それほどでも〜♪今は気を付けてるし自重もしてるよ?お姉さん偉いでしょ〜♪」


 これが噂のメンヘラ女って奴なのか?関わった女性が何十人にも居た筈だが全員消えたから何があったのかと思えば姉さんの仕業だったのか。


「因みにこれまで殺した人間の数は?」


 俺達にとっては日常茶飯事で殺してる上での素朴の疑問だがそもそも覚えているのだろうか?


 姉さんは少し考えた後曖昧な表情をする。


「大人なんて誰殺しても一緒だからな〜家族の事なら分かるよ?」


「姉さん本人は分からないのか?」


「うん、ざっと何万人??何十万??殺し過ぎて記憶にないなぁ…あはは♪」


 曖昧だが俺以上殺してるのかは分かったな。


「これからも子ども以外は殺していいから研究員達の殺害だけじゃなくて妨害もしてやろうかなって考えてるの!」


 何か思い出したかのように眠気が醒めた姉さんは灯りを点けて俺の机の上に計画書を見せてきた。


「これは炎星にある工事か?」


 見たことあるイラストの計画書を見て炎星にある工事だと察した、これが次の目的地か?


「察しが良くて助かるな〜実行日は水曜日、時間帯は夕方、任せたい人はなるべく近距離と指揮する人で四人で考えてるんだけど部隊はローグちゃんが決めてくれない?」


 事細かく作られた計画書と無力化するメリットや破壊方法まで完璧に作られている。


「だが危険じゃないのか?この場所で爆破なんかしたら部隊自体も吹き飛ぶぞ?」


「何も無力化するのは壊すことだけじゃない乗っ取りや機械を作動不可にさせればいいよ、後は研究員幹部が来てくれれば一石二鳥、一網打尽、ローグちゃんがいれば鎧袖一触よ♪」


「頼られてるのは分かるが俺の作戦は強引だぞ?」


「その時は全力で連れ帰って来てね?お姉さん家族の遺体なんか見たくないからね?」


「特にサクラか?」


 その言葉に姉さんは黙ってしまった、そう俺はこの任務をサクラと一緒にやろうと思っている。後はサナエ辺に頼めば良いだろう。


「ユカリちゃん…死なせないでね?あの娘にはまだまだ笑ってて欲しいからさ」


「死なせない保証は無いぞ?第い―――― 」


 俺は作戦の言葉で話そうと思った刹那

姉さんに強引に手を掴まれ真剣な表情で頼み込んだ。


「お願い、死なせないで」


 どのメンバーよりも露骨に感情の籠もった力強く握る手には姉さんのサクラに対する特別な感情を読み取った。


「分かったから手を話せ、作戦は後日話す」


 不承不承ながらも姉さんの願いは聞き入れることにした、体の良いサクラなら死んでも構わないと思ったがやはり姉さんは首を突っ込んで来たから作戦はまた日を改める事にした。


 約束だけ交わすと俺達は睡眠を取ることにした。

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