「思い馳せる少女」その2
「これで分かって頂けますか?誰が人を“殺せない”と?誰が高貴で名高い騎士団ですって?」
ふつふつと抱いていた彼女の火に油が注がれた。今までの彼女だったら押し殺していた、だが今は違う、勇気を振り絞りそしてついに噴火した。まるで鬼神に取り憑かれたような彼女は更に銃を頭、心臓に弾が切れるまで撃ち抜いた。
全弾命中、百発百中。誰も知らないアスカの素顔が露呈する。
「何が高貴ですか!!何が名高い騎士団だ!!私は知ってる!!蹴落とされ自殺していった女の子を!!何百人自殺しても貴女達は上の人に報告せず【戦死】扱いした!!貴女達がいびり倒した女の子は皆思い馳せて入隊した!!でも現実は残酷だった、先輩は手抜きで汚職にさえ手を付け平然として目を背け誰も助け合い、分かち合い、笑い合うことをしない上っ面の世界で私は五年新米として生きてきた!!それなのに何も変わらなかった!!貴女達が手を掛けた心弱い女の子は皆私に【貴女は生きて本当の騎士団に入って】と言われてこの世を去って行った!!これは私だけじゃない死んで行った唯一の仲間の報いだ!!」
アスカちゃんの怒りは止まらなかった、銃を失った後片腕だけで剣を取りこの場を殺戮の限り尽くした。
彼女達もまた剣を取り、殺してやろうとしたが何故か全く刃が立たなかった。剣ごと叩き潰す程の筋力は片腕の騎士とは思えなかった。怨念と憎悪に満ち溢れた亡くなった者の怒りが身体に纏い破壊したような惨劇だった。
「あの娘、相当鍛錬と剣の腕を磨いているね。筋肉の付き方が他と比べ物にならなりない程発達してるね♪」
ゆいゆいはとてもご満悦に眺めている、これがアスカちゃんの本気?
大勢の人を一網打尽にし、たった一人で根絶やしした。そして残り一人となったシスターズにアスカちゃんは問う。
「もう二度とこんな事が起きないように上に報告してください。女の子の憧れを奪わないで誠心誠意で女の子の気持ちと痛みを分かる騎士団になってください!!」
そう言って最後に女性の脚を剣で叩き潰した。それは一瞬でまるで麩菓子のように粉砕された脚はもう二度と戻らないだろう。もし私もあの時叩かれたら命が無事で済まなかっただろうな。
「わ、分かったから!!だから殺さないで」
女性は膝を震わせながら瞳に雨を溜める、まるで殺人鬼にあったかのような状態だ。
「・・・・・・」
アスカちゃんは今にも手を下してしまいそうな目で剣を振り翳し、こめかみギリギリのラインで地面に叩きつけた。
「なら消えてください、私はもう”神様“なんざ信じません、私は自分の力と勇気をくれた人達への恩を返す為に闘います」
鬼神の顔に怯えながら女性は足を引き摺りながら消え去って行くのを見送った。
「・・・・」
そして彼女はシスター服に飾ってある綺麗な首飾りを外し地面に投げ棄てた。
「ふん!」
そしてそれを踏み潰して破壊した。
「あれ、売ればお金になるのに」
ゆいゆいはポツリと呟いた、アスカちゃんは申し訳無さそうに頭を下げた。
「ごめんなさい……私………もうあんなのを見たくないのです………これからはシスターズの腰巾着ではなく幻影守衛騎士団の戦闘員として生きていく為のケジメなんです」
アスカちゃんの決心は揺るがない、だからこそ私は本当にアスカちゃんが格好いいと思った。私みたいな訳の分からない女より誠実で自分の道を決めた娘の方が頼られるのだろうなと思ってしまった。
「よっし!後はノアちゃんプレアちゃん回収して撤退しよーか!」
事が全て終わるとゆいゆいはノアちゃん達がいる仮説用テントへ向かう。
「あ、ゆいゆい!!」
私はゆいゆいに声を掛けると顔を此方に向けた。
「あの……………………………ううん………何でもない」
私は誰なのか、私は何者なのか聞きたかった。私は本当にサクラユカリなのか。それともハルカお姉ちゃんなのか分からない、ゆいゆいに言って欲しかった“貴女はサクラユカリ”だと。でも相談するのが怖くなって止めてしまった。
「・・・・・」
きっと私の異変に察したのだろう、ゆいゆいは寄り添ってくれた、けど私は歩いた。
「だ、大丈夫だから!本当に些細な疑問で今さっき解決したから!」
私は顔を見ることもなくテントへと足を運ばせることにした、そして後ろから感じたのは不安そうな二人だった。




