「incident」
今日は仕事が休みだが姉さんは仕事もあるし最愛のサクラユカリは学校に行くから弁当と家事をしに朝早く出て行ってしまった。残された俺は今日の朝食を作ることにした。
至ってシンプルな食事だ、パンにスープにサラダ。味気ない気もするが俺にとっては久し振りな組み合わせな気がする。
俺は元々姉さんと一緒に暮らしていたが研究員に騙され姉さんは実験体、両親はまさかの研究員とグルで不要になった俺を痛めつけた後崖から投げ棄てられたが今は友と呼べる奴のお陰で九死に一生を得たのだがその時負った脳の傷により後遺症が残ることとなった。
主な後遺症とは記憶が不安定で曖昧且不規則な記憶維持のせいで覚えていることが疎らかその一日の記憶が消えてるかどうか今ですら分からない。
だがそれでもちゃんと覚えてることもある、その時は俺にとって大事な記憶と言えるものだがそれ以外は忘れてしまうかもしれないな。
そんな後遺症を患いながらも姉さんを変えた奴等を許す事は出来ない、悪辣な奴等の計画を潰す事が俺の一つの目標だ。もう一つは絶対に言わないことにしている。少しこっ恥ずかしいからな。
食事を済ませ研究員達の情報を纏めた後、午後になってから外出の準備をする。普段は本屋に行くことにしているが今日はぶらりと何処かへ行こう。気晴らしにもなるが今は兎に角記憶出来るものを見に行こう。
☆★☆★ 本屋
何か記憶に残りそうなものや記憶障害の生き方についてまとめてある本は無いかと探していると思わぬ人間と合うこととなった。
「あれ、もしかしてローグ君!?」
学校が終わったのか彼女が姉さんの最愛の女サクラユカリだ。茶髪でボブカットの髪型にルビー色をした瞳に制服は冬はブレザーで夏はYシャツにネクタイとなっている。そして彼女のお気に入りのミニスカートとニーソックスと今時の女子高校生のような女だ。
見た目は割と可愛らしい雰囲気だが腹の中はどうなってるかは分からんが俺達に対してはとても友好的だと思う。
「お久し振りだね〜ローグ君もお買い物?」
馴れ馴れしく寄ってくるが本心なのだろうか。最初聞いた話だと拒絶すると言われていたがそれは裏の方なのか?
「あぁ、お前もか?」
うんと頷くサクラはどうやら家の食材や日用品と服を見に来たらしい。
「あ、ねぇねぇローグ君。今暇かな?良かったら一緒に行かない?」
いつものように断ろうとしたがサクラを知る機会にいいかも知れない、こいつがどんな女なのかを見極めるのに最適かもしれない。それに今日は別にやりたいことがないからな。
「荷物持ちか?」
「ち、違うよ〜どうせなら人の意見も聞きたいなって♪」
然りげ無く下心を聞こうとその言葉を出して見たが怒らせてしまったようだな。
「分かった、なら行こう」
「本当に!?えへへ、ありがとう」
彼女は嬉しそうにはにかむと早速行こうと早足になる。
「その前に私服に着替えたらどうだ?」
「えっ、でも学校帰りだし…帰るまでに時間が…」
「なら運んでやろうか?」
返答に困惑するサクラ、女子高校生は学校帰りに何かするのが普通なのだろうか?
「い、いいよ…運ぶとスカートが捲れたりするし」
サクラはそう言って頬が少し赤くなりスカートを押さえる。
「お前よくパンツ見えるから別に良いだろ?」
「べ、別に!?恥ずかしいのに皆言ってくれないんだもん!!」
そのことについてサクラは憤慨しぷいっとまた怒ってしまった。
「ひ、酷いよ……」
ぷくっと膨れた頬にサクラは悲しそうに俺の服を引っ張る。サクラは思ったよりとても感情深く人間らしい女だと言うことか。
「悪かったな、さっさとのんびり済ませるか」
頭に手をポンと撫でるとサクラは少し嬉しそうな顔で照れている。
「うん」
「もし捲れてるなら俺が戻してやる」
「えっ?セクハラ?」
「おい、なら忠告すればいいのか?」
「セクハラ!?」
「どうしろって言うんだよ」
彼女は会話する中で俺にとても興味を持っているようだ、懐きやすいのかそれとも家族だからなのだろうか?調査はまだ始まったばかりだ、じっくり観察するか。