「Iris」
そして当日、エインデとノア、プレアは予定通りに生物兵器破壊の為炎星へと向う……はずだった。
当の本人のエインデが来ない、ノアとプレアは不安に思いユイの家へと訪問する。
「ん、どうしたんだ?」
まるで何事も無かったような素振りに二人は驚愕する。どんなに質問しても彼は首を傾げることしかしなかった動揺する二人だったがノアはエインデにある物を手渡した、それはこの前エインデが考えていた物を書き留めたノートだった。それを精読するとエインデは小さく頷く。
「悪かったな、忘れていた。お前等の準備は良いか?」
エインデの素振りに若干の違和感を感じるがノアはそれでも彼に何も問わなかった、プレアが煽てようとした口を塞ぎ慎ましく笑った。
「はい、それでは行きましょうか」
彼女は友達や大切な人を疑わない、些細な事もきっと何か事情が有ることを察しいつか自分に話してくれる事を願って疑わない。その機会が無くとも彼女は“家族”を信じると救われた時から心に決めていた。
父は「君に不幸が降り注いでもそれ以上の幸せが君を待っている、だから逃げないで前を向きで本当に信用出来る人を疑わず信じること。そして待ち続けようその事情を話すまで気長に本を読みながら世間の変化をのんびり見ていこう」と言っていた。母は「大切な人をとことん好きになりましょう、その人の欠点を見つけるのではなく良い所を沢山探して貴女なりの優しさでその人を包んであげなさい」と言っていた。
もう会う事も話せる事も一生叶わないがノアは家族と一緒に過ごせて少し明るくなれた、だから彼女は絶対に裏切らないと信じることにした。家族で唯一の幸せな家庭を築けたからノアは誰よりも家族を信じている、身体が変化しズタズタにされた心を押し留め我慢し、家族の絆を優先していることをユイ以外誰も知らない。
☆★☆★ 炎星工場前
「そう言えばゆかりんは?」
彼女の所在はノアが答えた。
「一応言っておきましたが朝から何やらユカリさんの様子がおかしいんです……何というか…怒りに取り憑かれるというか………」
「つまりは裏の人格が出てきてるという訳か」
その事を聞くと急に二人の態度が変化した、やはりまだ抵抗意識があるのかあまり裏の人格は好まれていないようだ。元々サクラは表の性格が本来の人格なのだが他者や環境によって表の性格を封じなければいけないまで追い込まれた、だがそれには多大なるストレスを抱え、しまいにはハンマーで頭を叩かれた時に負荷とストレスが爆発を起こし凶暴且つ攻撃的生命体が生まれてしまったのが事の発端らしい。
そして人間不信となったサクラの中身は大量の怒りと憎悪が詰まっている状態で俺達に引き取られたのだが姉さんが持つ特殊の才能によってなんとか暴走を押し留められている状況だ。だからあまりストレスを与えてはイケないのだが人材不足のせいでやたらサクラをコキ扱うのも原因で恐らく裏の人格が出て来てるのだろうな。
「ま、大丈夫じゃん?寝れば直るんじゃん??」
プレアは相変わらずサクラをモノ扱いするな……
「そう思う?」
「うん、だからさ――――― うわっ!!?」
いつからそこに居たのかプレアの背後からご本人が姿を現した。乱れた髪に戦闘服は崩れた服装で胸元を大きく開けている、普段のサクラとは思えない程雑な着こなし方をしている。
「アンタ………あの緑頭と同じ目に遭いたいの?」
もう攻撃態勢じゃねぇか、このままだと作戦開始前にサクラを止める時間のせいで徒労となるぞ。
「う、嘘に決まってんじゃん〜ゆかりんごめ―――― うわっと!!」
強烈な回し蹴りを放ったが寸前で避けられたようだ。
「あ、あっぶな〜!?作戦前はヤバイって!!」
言葉に聞く耳を持たないサクラは間合いを詰めて獅子奮迅に攻撃的に剣を取り出す。
「ちょ!!ゆかりん!!」
「アンタも“他人”なんだ!!殺してやる!!!」
サクラは有無を言わさず剣を振りかざすとプレアは巨大な剣を取り出して防いだ。
「サクラ、今は問題事を………」
「うるさい!!アンタもアンタ等皆ぶっ殺してやる!!」
こんな狂人的だったかと言うぐらい変貌ぶりだな、呪血は使えないのかはたまた仕様には条件が有るのか今のサクラは素体だ少し黙らせてやるか。
「はあぁぁぁ!!」
横に剣を振るうが遅い、俺は剣先寸前で躱すと目の前から回し蹴りが飛んできたので爪先で避けると今度は腕のワイヤーを伸ばしながら突っ込んで来る。
「・・・・・・・」
ワイヤーはブラフか本命は逆手に持ち変えた剣での斬撃、なら簡単だ振られる前に突進すればいい。
「っ!?」
ワイヤー伸ばした位置より低く躱され振るう直前で腹に頭突きしてやった。
「ちっ、こいつ!?」
動きは単調ではない、何かの攻撃に混ぜて隙を最小限に減らして連撃するのが裏の特徴のようだ。普段のサクラがとても可愛らしく思えるな、隙だらけで脇が甘くゆったりした戦い方でなるべく傷つ方法だがこいつは完全に破壊させて機能を停止させるのが得意だな。だからある意味分かりやすい最小限の行動でいい。
「なっ!?」
隙があるのは連撃して構える直前の時だけ、ならば拳を振るうとサクラは予想通りに距離を取るその時に俺は闇魔法で股下に移動し背後から首を締め上げる。
「ぐっ…………離せ!!」
だがサクラも馬鹿じゃない無理矢理解こうとワイヤーや剣を突き刺そうとするので解いた瞬間に背中を蹴っ飛ばして地面に叩きつけた。
「ぐ、うぅぅぅぅぅ…」
さて次はどんな行動をするのか期待していたがサクラは起き上がらない、地面は鼻血が吹き出ていて藻掻くことすらしなかった。
「ユカリさん!!」
倒れたサクラに安易に近付き反撃………ということも無く起こすと鼻から大量の血が流れ分かりやすく弱っていた。




