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紅涙皇子  作者: 六道イオリ
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3.皇子と王女 【4】

 皇子の申し出に第十王女は慌てて、県令と共に皇子を諌めるが皇子は聞き入れない。

「これは北の国で対応しますから、方伯の皇子はお下がり下さい」

「引渡しは終了しました。罪人の娘は方伯国の花嫁。方伯で花嫁の身をどうしようと北の国の兵には関係のないこと」

 宣言をして部屋から出て行く用意を始めた。

「県令。お父様に、いいえ方伯に皇子は姫として東の大国に嫁ぎましたと伝えなさい」

 言い残し戸口に向かおうとする皇子の手首を掴んだ占星術師は、緊迫した状況に相応しくない質問をする。

「皇子は第十王女に初めて会った時、どのように感じられましたか?」

「重要なことなのですか?」

 皇子の問いに占星術師は力強く頷く。

 真直ぐな瞳に皇子は少々戸惑ったが、その戸惑いは皇子が第十王女に会った時の感情をも表していた。皇子は第十王女を見たときに、抗いがたい感情を覚えていた。

 皇子として育った少女が今まで感じたことのなかった異性に対する思い。一目で芽生えた感情を皇子は理解できずにそのままやり過ごした。

 皇子の態度を確認した後に、占星術師は振り返り第十王女にも同じ質問をする。今はそれどころではないと質問に答えようとしない第十王女だが、占星術師は非常に重要なことだ言い話を始めた。

「時間があまりないので要所だけをお伝えします。私が追っている占い師は嘘を語っております。嘘を多数重ねていますがその中でもっとも危険な嘘は第十王女、あなたの存在です。あなたは凶星の落とし子で、国を継ごうものならば必ず国は滅びます。それも周囲の国を巻き添えにして滅びるでしょう。ですから王となってはいけません」

 突然のことに言葉を失っている第十王女に、占星術師はさらに続けた。

 第十王女が北の国に災厄をもたらす方法は二種類。一つは王に即位すること、もう一つはある年に死亡することだった。

「詳しく説明している余裕はありませんが、第十王女が生まれた年と今年、どちらも死亡すれば災厄がもたらされます。自害もしてはいけません。あなたは凶星の生まれですが、ある人を救うことができます。それでもう一度尋ねますけれども、皇子を一目見てどのように感じましたか?」

 外の怒号に室内の誰もが焦りを感じていたが、同じほど占星術師の語りの続きを知りたくもあった。

 第十王女は幼さの残る皇子のほうをうかがう様に見て、占星術師にあなたが思っている通りだろうと言葉を濁しつつも答えた。その答えを受けて再び語り始める。

「皇子は吉星の生まれで、あなたの対極ですが一瞬でも触れ合うと引き合う関係となります。皇子が後宮から戻るためには、今あなたと触れあう必要があります」

 皇子と第十王女は顔を見合わせた。

 もはや猶予はないと謝りながら第十王女は膝を折り皇子の頬に軽く触れ、この程度で十分かと占星術師に尋ねる。頷いた占星術師は皇子の傍に近寄りお供させていただきますと頭を下げた。

 皇子は私のことよりも使命を果たしなさいと命じたが、凶星と共に北の大国に入っても今の私には何をすることも出来ません、なにより今は東の大国に向かうことが最良なのですと告げられた。書に目を通すよりも外で活動することが好きだった皇子は占星術のことは全く知らないので、そのように言われてしまえば返す言葉がなく、自らに従うことで道が開けるならばと従うことに許可を出す。

「東の国の後宮に向かう船上で説明させていただきます。第十王女、皇子が戻ってくるまでは決して死なないでくださいね」

 県令を先頭に部屋から出た二人に、沈黙していた罪人の娘が叫びながら駆け寄った。

「私を召使としてお連れ下さい!」

 叫んだあとに、彼女を連れて来た第十王女と兵と侍女に頭を下げる。

 皇子が何かを言おうとしたが、第十王女が召使として連れて行ってほしい。占星術師の言葉が本当なら、必ずまた会えるはずだからと言い三人を見送る。


 こうして皇子は罪人の娘と占星術師を供に東の大国へと連れて行かれた。


 三人が邸から出た後、叫び声が一層高くなりそして徐々にその喧騒が遠ざかっていった。その解りやすい音を聞きながら、第十王女は深い溜息をつきながら、方伯に詫びに行くことに決めそれを侍女と兵に語り、二人には戻るように言いつけた。

 兵や侍女は皇子が代わりに向かったことを責められ、殺されるかもしれないので国に戻った方がよいと進言したが第十王女は自ら事情を告げ、その後に国に戻り皇子を取り戻す行動をとることに決め、県令に同行を許可されたので共に方伯国へと向かった。

 侍女と兵は第十王女の命令を聞かず、県令に許可をえて方伯国へと向かう一行に従う道を選んだ。


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