「海にて」(エッセイ)
掲載日:2020/09/18
日々の生活に
疲れ切っていたある日。
よく行くバーの人たちと
海に行った。
一人、ボディボートに
うつ伏せに乗って波の上を
漂っている私に、バーテンの星さんが
近づいてきた。
「仰向けになってみぃ」
私はこわごわと、
言われるままボートの上で
仰向けになった。
「バランスとるの、
むずかしいやろ?」
ジタバタしている私に、
星さんは体全部の力を
抜くように言った。
すると不思議とバランスが取れた。
海のベッドの上で
輝く太陽と青い空を見上げ、
私はウトウトしてきた。
・・・ どこまで流されていくんだろう。
大丈夫かな。
星さんはそばにいるのかな?・・・
しばらくして目を開くと、
星さんは私の横に立っていて、
ニヤニヤしていた。
ボートは彼の膝丈くらいの浅瀬に
来ていた。
ずいぶん沖に流されていたと
思っていた私は
びっくりした。
そんな私に、
星さんは笑って言った。
「人生も、こんなもんやで。
どこまで流されたかと
不安に思ってたら、
案外背の立つ浅瀬や。
だからリラックスして
流されてたらいいんや」
了




