女子高生の罠
女子高生と会話できない私をあざ笑うように、女子高生達と楽しく会話していたなんて!
私は雷光へ怒りを持ち始めたが、雷光ファンだったらしき十市グループこそ私に抑えきれない程の怒りを抱いていたようだ。
「雷光さんを奪うなんて!奪うなんて!奪うなんて!奪うなんて!」
プードルは私を大きく突き飛ばした。
何と、怪人の私が尻餅をついたぞ!
「ちょっと、リンリンったら。ってきゃああ!」
意外と力が強いな、と嬉しくなってプードル娘を見あげたら、なんと、もっふもふのプードルみたいな外見の巨大ぬいぐるみに変化していた。
モフモフの身体は二メートルぐらいの着ぐるみサイズに膨らみ、当り前だが彼女が着ていた制服はビリビリに破れて紙吹雪のゴミのようになっている。
「え、普通の人間だったはずじゃないの?」
巨大プードルは茶色の毛むくじゃらの腕を友人達に向けて振り回した。
「って、それどころじゃない。」
「きゃあ!リンリン!」
「いやああ、リンリン!」
「あぶない!」
私は一番手近にいた二名を片腕でそれぞれ後ろから抱きかかえ、そのまま後ろに倒れるようにして床に転がった。
友人を殺し損ねた大きくて太い腕は宙を空振りし、その動作のまま自分の後ろに控えていた二人に対して体を回しながら襲い掛かった。
私は飛びあがり、プードルの両肩に両腕を掛け、てこの原理のようにしてやっぱり後ろに倒れようと後ろに引っ張った。
ドドーン。
よし、倒れた。
では、一般人の避難をって、誰もいない?
教室の扉は完全に閉められ、誰もいない教室の中には私とプードル怪人だけになってしまった。
ええ?
「ちょっと!何をしているの!」
「あんたなんか死んじゃえ!」
締め切った教室の廊下から聞こえるのは恐怖どころか嘲笑を帯びた声だった。
その声を合図に、次々と揶揄いにも近い軽い声での残酷な言葉が投げつけられた。
「リンリンに喰われちゃえ!」
「頑張れリンリン!」
「その女を殺っちゃえば元に戻れるって!頑張れ!」
「そうそう!殺したら元に戻れる薬を上げるって、キャハハハハハ!」
女子高生って、下手な悪の組織よりも有能で極悪だ。
気に入らない奴の抹殺の為に友人を怪人化しちゃうなんて。
いや、このリンリンは最初からグループの中のいじめられっ子なのかな。
――そこまで身を落としたくないし。
私は立ち上がっていた。
「よっし!私が勝ったら私のお友達になりましょう。私の仲間がカーストの下だなんて言わせない!さあ、ぶつかり合いますわよ!鈴野凛さん!」
どうやったら怪人化を治せるのか分からないが、取りあえず行動抑制だ。