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学校は意外と好き

 この世界が私の前世と同じ世界の未来であるのか分からないが、ほとんど同じような世界観を持っているのであれば、転生という二度目の人生を意外と上手に乗り切る事が出来るものだ。


 そんな風に思っていた時がありました。


 いや、前回は単なる普通の子だったから、私には漫画やアニメの事を語り合える親友や類友はそれなりに作れた。

 しかし、今の私は美少女で、町の有名な戦うお兄さんの妹設定だ。

 そして、世界は悪の組織に肩入れする人々の数も多く、子供達を公立に通わせながら政府打倒を唱える親も多いのだ。


 つまり、政府側のヒーローと一緒にいる私は、目立つ政府広報ともいえる。


 だが、やることはいじめってどういうことだ?


 雷光おにいさんに連れられて転校して来てから、私は男女を問わず完全にスポイルされており、教科書と机への落書きはいつもの事だ。

 さて、今日の私の机には、いんらんおんな、と新たな単語がマジックで書き殴られていた。


「あれ?淫乱?雷光と一緒だったんだし、世界の敵、ではないの?」


「あなた!葉桜さんを世界の敵って酷い事言うわね!何よ!偉いさんの娘だからって葉桜さんに朝から晩まで警護なんて独り占めしちゃって!」


 突然罵倒してきたのは、前髪をポンパドールにした黒髪ロングの女の子だ。


「そうよ!いい気になって!そんな暑苦しい顔のくせに!」


 同じように声を荒げたのは、赤っぽい栗毛ショートの女の子だった。


 うわお、それを合図のようにぞろぞろと女の子が私を囲み始めた。


 この私を囲んで罵倒してきたのは、クラスでも人気者の十市美理亜といちみりあのグループ五名だ。そして、十市のグループでも、陰険な十市が攻撃手としている訳が無い。彼女は煽り動かして、それで出来たパワーバランスで美味しい方につくのである。


 ここでクラスがこの五人につくのならば安心して私を攻撃してくるだろうし、同調が無ければ友人が自分の気持ちを代弁しようとしただけと涙物の友情話にまとめるだろう。


 まあ、どちらにしても私は責められる。


 前者だったらクラス全員に直接的に罵声を喰らい、後者であれば十市のグループをそこまで追い詰めた酷い人間とクラス全員からの冷たい視線だ。

 どちらがいいかなと想像していた私は意外と楽しい気持ちであると気が付き、これは、初めて無視でなく罵倒を受けたからだと思い当たった。


 前世で虐められていた子にその虐めグループから抜けておいでと誘った事があるが、その子は無視されるよりもいいからって来なかったのだ。

 当時は虐められる方を選んだ彼女の意味が解らなかったが、私はようやく理解出来たと思った。

 確かに今の私は罵倒されるというアクションを人から初めて受けれたと、無視といういない扱いを受けなかったと喜んでいるのである。


 ああそういう事かと、前世の記憶の疑問が解決したが、彼女を誘った時に断られた時の台詞まで思い出してしまった。


――そこまで身を落としたくないし。


 あ、あの子は私グループこそ下に見ていたのか!


 生まれ変わって初めて分かった自分のカースト。

 過去の記憶によって私はわなわなと震えてしまったのだが、現在の虐め相手は自分達の迫力だと勘違いしたようだ。


「あんたさあ、どこの高官の娘だか知らないけど、さっさとこの町から出ていきなよ。あんたが来るまでこの町は平和だったのに、最近は毎日怪人が現れるじゃないのさ!」


 ミルクティー色というぐらいに明るい茶色の髪の子に、私はドンと強く胸を押された。怪人の私が揺らぐわけは無いが、久しぶりの女の子と人体コミュニケーションが取れたと喜ぶ自分がいた。


 どれだけ実は落ち込んでいたんだ、自分!


「そうよ!出ていきなさいよ!雷光さんをあなたが貶めたのでしょう!」


 プードルのアプリコット色と同じような色合いどころか、プードルみたいなふわふわショートカットの子が金切り声で叫んだ。


「貶めた?」


 プードルな彼女は私をびしっと指さした。


「雷光さんが三日ぐらい行方不明だった後にあなたと街に戻ってきた。あれはあなたのせいで雷光さんが刑務所に入れられていたからでしょう。淫行で!あなたがそんなことを雷光さんに強請るかららあああ!」


「淫行だったらまだ出てこれないってか、公務員資格剥奪じゃないの?」


 ヒーロー肩書の政府公認人造人間が首にされるのか知らないが。


「だから、婚約者なんでしょう!雷光さんが言っていた!あなたとは将来を誓った仲だって!」


「いつの間に。」


 なんと、問い詰めねば!

 そして、私がクラスメイトと話せもしなかった二か月間、あなたはいつ私のクラスメイトとおしゃべりしていたのよ!

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