クマのスケート
それは、赤黄色のじゅうたんがキレイな時期のことでした。
「ねえねえ、みんな何の話をしているの?」
クマさんは、イヌさんやネコさん、キツネさんが楽しそうな話をしているところを見つけました。
「やあ、クマさん。実は、もうそろそろあれができるんだよ」イヌさんが答えました。
「あれ?」
「寒い時期にしかできないことなんだ。僕もこれが楽しみで、寒い日も我慢できるんだ」
「ええ! 我慢が苦手なネコさんが!」
「そうなんだ!」
「それでそれで、何ができるの?」
キツネさんが湖の方を見て答えました。
「それはスケートさ!」
「すけーと?」
「そう、スケート。寒い時期になると、あの湖が凍るんだ。それでその上を、こう、スゥーって滑るんだよー」
キツネは前足で滑る様子をクマさんに見せました。
「うわー、とても楽しそうだね!」
「クマさんもやるかい?」
イヌさんがそう言うと、ネコさんとキツネさんもクマさんを見ました。
「うーん、やりたいんだけど……」
「それは難しいかもしれないのぉ~」
「タヌキのじいさん!」
楽しそうな話をしている4匹のところに、ニコニコしながらタヌキのじいさんがやってきました。
「クマは寒い時期は冬眠と言って、ほらあななどで眠って過ごすのだよ。だから、スケートは難しいかもしれないの~」
「そうなのかー」
「うん、だから寒いときは一緒に遊べないんだ」
クマさんは寂しそうに答えました。ほかの3匹も寂しそうな顔をしました。
そして、寒い時期になりました。
クマさんはいつも通りたくさんのエサを食べ、ほらあなの中で眠っていました。動かないけれど、やはり少しずつおなかがすいてきます。
すると、どうでしょう。ほらあなの入り口から、おいしそうな食べ物のにおいがしてきました。
あー、たべたいなあ。
クマさんは目を開けて、のっそりのっそり入り口の方へ向かっていくと、見覚えのある3匹の姿が見えました。
「おはよう、クマさん!」イヌさんが元気に言いました。
「早く行こう!」ネコさんが嬉しそうに言いました。
「な、なんでみんなここにいるんだい?」
「それはだね」
キツネさんがウキウキと説明をし始めました。
「タヌキのじいさんになんで冬眠するのか聞いたら『食べるものが少なくなるから』って言っていたから、食べ物を置いておけば出てくるのかと思ったのさ。だから、みんなで食べ物を持ち寄ったんだ!」
キツネさんもイヌさんもネコさんも、みんな笑顔でした。もちろんクマさんも。
食べ物のことなんて忘れて、クマさんは言いました。
「僕もやりたかったんだ、スケート!」
そうして4匹は湖へと走っていきました。
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