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石ころになった少年

 ある日、小さな小さなイモムシが生まれました。


 その小さなイモムシは葉っぱの上から転がり、地面に落ちました。


 イモムシは道を歩くいたずら狐に蹴り飛ばされて子猿の心の中へと入って行きました。


 子猿は痛さのあまり、一粒の涙を流しました。七色に光る涙でした。


 七色の涙は地に落ちる前に綺麗な鳥になりました。その鳥の周りには、淡く鮮やかな光りが見えました。


 ひらひら翔んでいた綺麗な鳥は、おじいさん熊の瞳の中に入りました。


 おじいさん熊は驚いて声を上げました。ついでに尻餅もつきました。どすんという音は大きな立派な木になりました。


 それはそれは立派な木でしたから、いつしか大きな木の周りには沢山のイキモノが集まりました。


 沢山のイキモノ達は立派な木を切って家を作りました。暖かみのある家でした。


 ある日、温もりを感じた少年が家を訪れました。しかし、その家に住むイキモノ達は歓迎しませんでした。それどころか少年を追い返してしまいました。


 少年は外に漏れた温もりを一握りだけ持ち帰り、病気の母にあたえましたが、そのまま微笑みながら死んでしまいました。


 少年はあのイキモノ達を恨み、立派な家に火をつけました。木で出来た家はすぐに燃えました。


 怒った木の精は少年を丸い小さな石ころに変え、イキモノ達はそれを川にほうり投げました。


 少年だった石ころは海の底まで流されました。


 石ころは深く反省していました。すると可哀想に思った人魚が話しかけました。しかし、少年は長い間話していなかったので、言葉を忘れてしまいました。


 困った人魚は石ころを首飾りにしました。小さくて丸い石ころは、真珠のように輝きを放ってました。


 人魚達の話しを聞いているうちに、石ころは言葉を思い出しました。


 石ころは人魚にお礼を言いました。家に帰りたい、母さんに会いたいとも言いました。


 そこで人魚は、仲間に力を借りて一日だけ石ころを元の少年の姿に戻してあげました。


 少年は半日かけて住んでいた家に戻りました。しかし、そこには何もありませんでした。


 少年はいっぱいいっぱい泣きました。


 その一粒一粒が鮮やかな花になりました。


 その花はとても綺麗でした。虫達も沢山集まって来ました。


 一日が終わる頃、少年は歌を歌いました。それはそれは酷い歌でした。


 しかし、純粋な歌に惹かれた沢山のイキモノが足を止め、羽を休めました。中にはイキモノではないナニかもいました。


 その中の黒い翼の生えたナニかがにやにや笑いながら少年に囁きました。


 そして朝日が昇ると少年はまた石ころに戻ってしまいました。


 それから何年もたちました。


 ある満月の日に、イキモノではないナニかが少年の隣までやって来ました。


 少年の周りに咲いた綺麗な花を踏みにじりながらやって来ました。


 ナニかがぶつぶつ呟くと石ころは形を変えました。イキモノではないナニかとそっくりでした。


 イキモノではないナニかになった少年はお礼を言いました。


 ナニかはにやにや笑いながら、夜の闇に紛れて行ってしまいました。


 ずっとひとりだった少年は、またひとりになってしまいましたが、同じようににやにや笑っていました。


ナニかになった少年は、背中に生えた真っ黒な翼で、闇に向かい飛び発ちました。


 少年がいた綺麗なお花畑は全部枯れていました。


 ナニかになった少年は夜の闇の中で、にやにや笑いながら一粒の涙を流しました。




2007/08/17

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後がよくわかりませんでした。「にやにや笑うナニか」とは何を象徴するものだったのでしょう。
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