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拝啓 ライダーねぇさん より  作者: ハンオン リョウヤ
17/19

『パール・ブルー』に帰る者よ

 「ほら、ヘレニック!!こっちこっち!見てみて!」


 「ミヨさん、そんなに急がなくても大丈夫だよ」


 それは————————待ちきれないとばかりに先へ駆けていくミヨゾティと、彼女に手招きされながらゆっくりと追いつこうとするヘレニックたちの、楽しそうな声。


 2人はただいま、デート中だ。

結婚してからの、というよりも、2人が出会って初めてのデートをしていると言った方が、順番的には正しいかもしれない。

プロポーズの返事をしてからというもの、結婚式までの日にちが思ったよりもなかったため、2人で悠長にデートに行くことすら出来なかったのだ。

そのため、今日のデートは2人にとってとても特別な日ということになる。


 そして、特別であるのにはもう1つ理由がある。


 「ヘレニック!ほら、ここ!ここ!」


 「うわっ、これ本当に全部星?」


 ヘレニックは、ミヨゾティが指差す先に近づいて、そこをじっと目を凝らすと思わずあっと声を上げた。

 

 —————————特別な理由、それはここが「宇宙」であるということ。


 2人はまさに、宇宙デートをしている。

以前、ヘレニックが宇宙に行ったことがないとミヨゾティに話したところ、彼女は初デートにその宇宙を希望してくれたのだ。

宇宙で釣り糸を垂らしたり、花を育てたりと、誰しもが簡単に宇宙に行き来できるこの世界では、宇宙デートなんてものは実にありきたりなのかもしれない。

それでも、この空間はミヨゾティにとっても思い出のある場所。

たとえ陳腐だと言われても、2人にとってはこの上なく素敵な場所なのだ。


 ちなみに、「パール・ブルー」ではもうとっくに真冬なのだが、宇宙ではその季節感に全く左右されないため、2人は防寒着を着こむことは一切せず、むしろその恰好は春に近い装いだ。


 そして、ヘレニックが覗き込んで凝視しているそれは、落とし穴である。

落とし穴と言っても、その正体は宇宙の所々で見られる、人の頭の大きさほどの歪みのことで、その歪み具合が穴のように窪んでいるということから、そのように呼ばれているだけだ。

ちなみに、この歪みには星が集まりやすいと言われており、1つの歪みに多いときで500個以上の星が見つかることがある。


 「ね!すごいでしょ?星がたくさん集まってるところは、ここみたいに白っぽく見えるのよ!」


 「確かに・・・。白っぽく見えるのって星が光ってるからなの?」


 ヘレニックは顔を近づけたり遠ざけたりしては、彼女の言うように、そこが確かに白色に見えることに疑問を抱いた。

それはまさしく、星がたくさん集まったことにより、それらが瞬く度に光の加減で白っぽく見えていると思ったのだ。

けれどミヨゾティは、「半分正解」と首を傾げて、ヘレニックに見せるようにしてその星々を両手で掬い取る。


 「実はね、この星の大半はもう光らなくなったものなのよ。ようは役目を終えて、あとは消えていくだけの—————————」


 ——————————立派な星たちよ。

ミヨゾティはそう言うと、そっと星を歪みへと流し戻す。

彼女の掌からこぼれ落ちる星たちは確かに光ってはおらず、白っぽく見えたわけも、それが星たちの二度と光ることがない証なのだと、ヘレニックは気が付いた。

役目を果たした星たちの体は白く、そのうち跡形もなく消え去ってしまうことを、目の前の無数のそれらが教えてくれたような気がした。


 「それでも、まだ光ってるみたいだ・・・」


 ヘレニックも、ゆっくりとその白い星たちを掬い、掌をうねらすようにしてそれをただ見つめる。

掌の中の星は確かに真っ白で、一向に光りだす気配はやはり無く、それでも、時折まだ明るい星が紛れているのを見つけると、彼らは生きている—————————そう思えた。

そして、掌から落ちていく感触は妙に冷たくサラサラとしていて、とても空を飾っていたあのキラキラとした星だとは想像もできなかった。


 「星は長い間、ずーっと旅をしてるだって。だから、どうにも元気が戻らなくなったら、静かに宇宙に帰るんだって、聞いたことがあるわ」


 「なら、もうこの子たちは長旅を終えたのか・・・」


 夜空には、数えきれないほどの億万の星が瞬いているが、どの星が消えてどの星が生まれてきたのかなんて知る由もない。

それほどまでに、絶え間なく生命は流転しているのだろうか。

儚く寂しい————————けれどそれ以上に、なによりも懸命で美しい。



 ヘレニックとミヨゾティはしばらく、辺りの落とし穴を見つけてはそこで星を見つめていた。

落とし穴は小さいサイズでビー玉ほどのものもあり、初めて見るそれに、彼は驚きと興奮を隠しきれていないようだった。


 落とし穴探しをしているうちに、気が付くと異様に眩しい場所へと行きついた。

そこは、星と太陽の位置関係でにより光が乱反射することで有名な池だった。

その池は、光の乱反射によってごく稀に鏡のようになり、覗き込むものをはっきりと映し出すというのだ。

そして、そこに映った姿こそが本来の姿である、などという言い伝えまである始末で、年中その言い伝え目当てで訪れる人が多いらしい。


 「ミヨさん・・・なんだか凄く目が痛いんだけど・・・。今がまさに、その《ごく稀》ってやつなのか・・・?」

 

 「あはは・・・!もしそうなら、もっともーっと目がバシバシするぐらいに痛くて、目をつぶってても瞼越しにその光ってる様子が分かるんだって!」


 「そ、そんなに強烈なのか・・・!」


 どうやらこの眩しさはまだまだ序の口といったところらしく、ヘレニックは伏し目で池をまともに見ることができなかった。

すると、ヘレニックの視界を何かが遮ったような気がして、彼はそっと目を開けた。


 「大丈夫!これならちょっとは痛くないでしょ?」


 それは日傘だった。

ミヨゾティの、真っ白なレースの装飾が施された日傘が、ヘレニックの視界に池の光が入り込まないよう、差されていたのだ。


 「あ、ありがとう、ミヨさん」


 ヘレニックは痛む目をゴシゴシとこすりながら、ぼやける視界が元に戻ったことを確認して、池を背にしながらミヨゾティの方を向く。

どうやらミヨゾティにしてみれば、この程度の光で目がくらむことは無いらしい。

それはおそらく、彼女の差している日傘のおかげではなく、長年月で暮らしてきたことによって、大方、目が光るモノに慣れてしまっている、といったところだろう。


 「ねぇ、ヘレニック。このままちょっと先まで行ってみない?まだ見せたいものがたっっっくさんあるの!」


 ミヨゾティはそう言うなり、日傘を差したままヘレニックの手を引いて歩きだした。

ヘレニックは言われるがままに彼女の隣を、手を繋いで歩く。

やっぱり、少し気になってしまった、眩さの塊のような光る池は、一度も振り返らなかった。

その間も、ミヨゾティはルンルンとした足取りで、ヘレニックと宇宙を散歩した。


ヘレニックは初めて訪れた宇宙で、釣りをする人や花を摘む人、スケッチをしている人たちにたくさん通りすがった。

やはり、幼いころから聞かされていたように宇宙では大概のことが、「パール・ブルー」と変わらずできるのだなと、そのことが実感となった気がするのだ。


 「ん・・・?え、ミヨさん!あれって、月じゃないか!?」


 ヘレニックはずっと先の方に丸い何かを見つけ、指差しながら興奮気味に話しかける。

宇宙にはっきりとした時間の感覚がないとは言え、まだ「パール・ブルー」では昼間だということを考えると、確かに光って見えるそれが月であるなら、夜になるとより一層美しく見えるのだろうか。


 「そうよ!月!あそこにアタシは住んでたのよ!」


 ミヨゾティは懐かしの故郷を見せるべく、ヘレニックをここまで連れてきたのだ。

月はまだ随分と遠くにあるのか、その大きさは広げた掌にすっぽり収まってしまうほどしかない。

ふと、ボーッという汽笛が聞こえたかと思うと、どこからか蒸気機関車の煙が上がっていた。

ヘレニックは、あれに乗れば月までひとっ飛びなのだろうか、などと2人で一緒に月へと向かう姿を想像して、すぐにそれをかき消した。


 「やっぱり、綺麗だな・・・」


「ずーっと昔からあのままなの!アタシが生まれたときから、アタシが生まれる前から!」


 ミヨゾティは、頭の上でクルクルと回していた日傘を閉じて、月に見とれるヘレニックへ一瞥を投げてフフッと微笑む。


 「俺は月に触ってみたいって、昔ミヨさんに話したことがあったよね」


 「あぁ、あったあった!アタシがヘレニックにプロポーズして、一週間ぐらい神父様の教会で世話になってた頃!まだ、小さかった頃の話ね」


 何の前触れもなく、ヘレニックは月を見て思い出したかのように昔の記憶がよみがえる。

———————小さかった頃、というのはすなわち、ミヨゾティがということではなく、年相応の反抗期に突入しつつありながら、見ず知らずの大人にまだその純粋な夢を話せていた頃のヘレニックが、ということ。

ミヨゾティも人の子である以上、流れる月の中で確かな歳を重ねてきてはいる。

だが、今も10年前も、ミヨゾティはそのことを一切感じさせないほど、変わっていない。

それは不老でも、彼女の中で時が止まっているわけでも無く、ただただ、月と「パール・ブルー」で過ごしてきた者の揺るがぬ些細な違いなのだ。


 「あのときはびっくりしすぎて、ろくに伝えられなかったけど・・・。ミヨさん、月を持ってきてくれてありがとう。俺はずーっと月は光ってるけど、冷たいものだとばかり思っていたから————————」

———————なんというか、正直にいうと、冷たくなくて良かった。


 ヘレニックは、握った彼女の手にぎゅっと力を込めて、今まで話せずにいた胸の内を明かす。

暗い夜の空を照らす月が、昼間の太陽のようにあたたかくて良かったと、夜に顔を出す月が、燦燦さんさんとする真昼の太陽のように輝いていて、良かったと———————。


 「言ったでしょ?案外、月も太陽並みに燃えてんのよ?月にいたアタシが言うんだから、間違いはないわ!」


 ミヨゾティは自信あり気なその答えを、同じようにぎゅっと握り返す掌に込める。

月に行ってみなけばその実態は確かめようがないが、彼女が言うに月では地表がほのかに光っているというのだ。

目が眩むほどではなく、そこで生活するうえで支障がないほどの微弱な輝きを放っているのだという。

けれど当の本人たちからしてみればその輝きは、遠くから眺めたときには、微弱というにはあまりにも眩しすぎることは————————月にいるときには、なかなか気が付かないことなのかもしれない。


 「じゃあ、ミヨさんは月にいた頃『パール・ブルー』はどんな風に見えてたんだ?やっぱり丸くは見えているんだろうけど」


 「んんー?そうだな~・・・、月からだとあの星は見えるには見えるんだけど、あんまり距離が離れすぎてるから、ぼんやり眺めるぐらいしかできなかったのよね。でも・・・、うん、なんて言うんだろう・・・透き通ってるみたいだった」


 「透き通ってる・・・?『パール・ブルー』が・・・?」


 「透き通ってるっていっても、もちろんガラスみたいに透明ってわけじゃないわよ?なんていうかさ・・・、何にも言い例えられないって感じの、澄んだ感じに見えてたわ」


 ——————————あぁ、やはりそうなのだと、ヘレニックは、一度も「パール・ブルー」が透き通っていると感じたことがないように、「そこ」を離れてみなければ分からないものなのだと————————、遠くで輝く月に思うのだった。

そして、何故だか侘しさに急き立てられたような気がして、隣で月を懐かしむミヨゾティの肩をそっと抱き寄せて、しばらく2人はその場を離れようとはしなかった。


 


 それからまた二人は、もう少し宇宙の奥の方を目指して、どこからともなく現れた川沿いを歩いた。

ときどき、小さな魚がパシャッという音を立てて、水面から顔を出すように飛び跳ねる姿を見ては、今度は

釣竿を持ってこようと2人して笑い合っていた。


 そのあとも、2人は目的地もないまま、ひたすら歩き続けては尽きることのない、色んな話をした。

夢中になっていると、行き交う人々の気配にはっと辺りをよく見渡して、向こうの方にぽつりぽつりと店が立ち並んでいたことに気が付き、せっかくだからと、2人は少し店を覗いてみることにした。


 店では、すべて宇宙で作られたものが売られていた。

青果店の商品棚はマッシュルームやグレープフルーツ、トマトにイチゴと、全く季節感に統一性のない品揃え。

服飾店では、やはり宇宙で裁断されたシャツやブラウスを着せられたトルソーが置かれており、本屋や雑貨屋にも足を運んでは、「パール・ブルー」にも月にも無いような変わったものを探したりした。


 そして、最後に2人が立ち寄ったのは、一軒のカフェ。

宇宙をバックによく映える白い壁の、こじんまりとした洒落た雰囲気の漂うカフェで、外の方には飲食用のテラスもあり、2人はそこで歩き回った足を休めることにした。


 「はい、お待たせ」


 「ありがと~!・・・ヘレニック・・・それ、何注文したの?」


 「え、何って・・・ただのコーヒーだけど・・・?」


 ミヨゾティは、注文の品を取りに行ったヘレニックが戻ってくるなり、それは自分の知ってるコーヒーではないから聞いているのだ、といった様子でトレイに置かれたそれを凝視する。

彼がオーダーしたのは、ただのアイスコーヒーである。

けれど、ミヨゾティに「それは自分の知ってるコーヒーではないから聞いているんだ」、とでもいうような訝し気な目を向けられているせいで、それを飲むことを躊躇う。


 「あんまり見られると飲みにくいんだけど・・・。なんか変なとこでもあるの・・・?」


 「だってさ、よく見てよ!なんか今光ってたわよ!ちょっとこう・・・、傾けてみて」


 「えぇ・・・?・・・あれ?もしかして、このこと・・・!?」


 ヘレニックは、言われたとおりにグラスを少し傾け、コーヒーをグラス越しにじっと目を凝らした。

そして、ミヨゾティが光ったと言っていたその正体は、コーヒーの中で浮かぶ氷だったのだ。

確かにそれは光っていて、ストローでかき回すたびにカランカランという涼し気な音を鳴すのだが、やはり、光るという時点でただの氷でないことには、おおよそ察しが付く。


 「ねっ!光ってるでしょ?なんか変な感じに揺らめいてたから、変だなーって思って。でも、それほんとに氷なの・・・?初めて見たわ・・・」


 「これ、ほんとに光ってるんだよね・・・?食べられるのかな・・・」


 ヘレニックは恐る恐るスプーンでそれを1つだけ掬って、えいと口に放り込み、ミヨゾティはそんな彼を見守る。


 ————————ゴリッ


 「あっ、氷だ・・・」


 砕ける音は聞きなれたもので、じわぁっと広がる冷たさはまさに氷の特徴そのまま。

光ってはいるものの、味も匂いも色も、何の変哲もない氷だった。

ぷつぷつとした気泡を含んだ、透明な氷————————。


 「これも宇宙で作られたのかしら・・・。なんだか、綺麗ね・・・」


 「でも、すぐに溶けるんだろうね・・・。氷は、星や月みたいには長生きじゃないから———————」


 ———————でも、だからこそ、一時の輝きは儚くも愛おしい。

長くあり続けることは難しいが、同様に短いうちに終わるのも難しいのだ————————まだ溶けたくないなんて、あたかも氷の気持ちを代弁するかのように、その思いがあるからこそ、余計に。


 「ねぇ、ヘレニック。今度また、宇宙に出かけにこよう!まだまだ宇宙は広いわけで、見せたいものがたくさんあるの!」


 ミヨゾティは飲みかけのアイスティーをテーブルに置いて両手をばっと広げると、何にも負けないぐらいのキラキラとした笑顔を見せる。


 「ありがとう、ミヨさん。確かに・・・ずーっと宇宙で暮らしても、ここの全部を知ることは不可能に近いんだから。だから、また来よう。それで、できる限りのたくさんの景色を一緒に見つけよう」


 宇宙はあまりにも広大だ―――――――。

いったい誰に唆されて、ここまで大きくなってしまったのかと問いかけても、その答えは返ってこない。

あろうことか、そんな愚問を誰に問いかければいいのかさえ分からない。

ただ、それでも――――――いい。

誰に唆されても、誰に問いかけても、そんなこととは関係なく、そんなことには囚われずに彼らは出会った。

何億光年という果てしない月日が経って、運命なんてちゃちな理屈が通じない、その最果てで2人は結ばれた。

そこにいたるまで、随分と長い歳月を要したものの、なるようになり、こうしてなんとか大団円を迎えることになったのだ。


 「アタシさ、これから先もずーっと変わることはないんだって、そう思ってる。月が輝くことも、星が瞬くことも、こうしてヘレニック、あんたが隣にいることも」


 横髪を耳にかきあげるミヨゾティの顔は、ヘレニックにあのときを彷彿と思い出させる。

――――――――あの日、確かにヘレニックにだけに向けられた、うっとりとした眩い笑顔。

それは今も、これからもきっと輝き続けるのだろう。


 ウェディングドレス姿の彼女は、ここにはいない―――――――。


 「ミヨゾティ、きっとどこにいたって、いつかなんて日は訪れない。けれど、やっぱり、生きてる限りは終わりを迎える。ただ、俺はそれが今じゃなくていいと願ってる。月の輝きも、星の瞬きも、俺を救うあなたの笑顔も。ただ、これまでの不甲斐ない俺のためを思って生きてくれたあなたに、今度は今の俺が、ミヨゾティに真っ向からちゃんと想いを告げられる俺が――――――――」


 ―――――――頬杖をつくミヨゾティの両手をさらっていった、ヘレニックの強かな想いは絶え間なく溢れる。

勢いよく彼女の手を握って、ガタッと椅子から立ち上がる。


 念願を果たした今の彼女に、きっと純白のベールは似合わない――――――-。


 「―――――俺があなたの傍にいる――――――!!!」


 それは、恥ずかしがり屋だったヘレニックでは伝えることができなかった、彼女へ渾身の叫び。

どれだけ不器用でも、時間がかかっても、それだけのために――――――気づいたときには忘れられないほどの存在になってしまっていた、はつらつとした彼女のために、彼は幾度も思い悩んだのだ。


 そして、一日をかけて宇宙を散策した2人は、「パール・ブルー」への帰りの特急列車に心地よく揺られていた。

微睡む中、ヘレニックが車窓越しに見えたものは————————


 「ミヨさん、ミヨさん・・・!起きてごらん!」


 うたたねをするミヨゾティを、ヘレニックは小声で呼び起こしながら小さく肩をゆする。

目をこすりながらあくびをする、夢心地なままのミヨゾティは、ヘレニックに外を指差されてその先に顔を向けた。


 「——————あぁ・・・!」


 月に住む誰しもが、否応なしに追い立てられた避難場所————————————。

 落ちていく月くずたちに、名をつけて愛でた人の不変の故郷—————————。

 窓が閉まっていることも忘れて、思わず身を乗り出しかけるミヨゾティの瞳に映ったその星は———————。


 「やっぱり・・・ロマンティックね!!!」


  確信的にきらめく彼女の笑顔のその先に、2人の帰りを人知れず待つ―—————————愛おしい「パール・ブルー」の姿があった。


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