第38話 怪獣空中戦と富士山麓の危機
お久しぶりです。
本作、1万PV超えました。ありがとうございます。
関西にいた3つのギドンの群れ――淡路島南北と氷ノ山にそれぞれ一体ずつ――に一斉に変化があった。
3匹の大型ギドンが西の空を見たかと思うと、一斉に空を飛び立ったのだ。
自衛隊の監視部隊がこれを各所に報告した。
メゴスもこれに気が付く。
彼は東に向かっていた。ちょうど関西地方上空を通るルートだ。
メゴスは超大型ギドンに向かっていたが、それを妨害するかのように、3匹の大型ギドンが空に現れたのだ。
メゴスは東をギッと見る。
その先から、1つの光線が飛んできた。
メゴスは自分の右側に体を倒す。
光線がメゴスの横を過ぎ去っていく。
さらに2つの光線、メゴス今度は自分の左側に体を倒し、光線を回避した。
東から延びた光線2つは、そのまま西へと向かっていく。
メゴスは3つの大型ギドンを超能力的と言っていいほど良い視覚にとらえた。
2体は比較的近くにいて、もう1体はその2体の左――北の方にいるのがわかる。
メゴスも最高速度で飛行しており、大きな進路変更はできない。
そのため、少しだけ角度を変え、2体の群れと1体の間を突っ切ろうとした。
大型ギドン3体にもメゴスの微かな進路変更はわかった。
しかし、動きが早すぎる。
3体は予想進路上に向かって、飛行を開始した。
同時に、メゴスめがけて3体一斉に光線を吐いた。
少し高度を下げて、光線2発を避けたが、1発が背中に当たる。
ギドンが低く、苦しい声を上げる。
しかし、ギドンは口から光球を3発連続で発射した。
ギドン3体が光球を避ける。2体は上昇し、1体は降下。
もう肉眼でメゴスが確認できる。ギドン3体はギドンにめがけて超音速で走っていく。
青い空の中で、彼らはついに近接戦闘を開始。
淡路島西方の瀬戸内海上空。
下降していた1体が上昇しながら高度を上げ、ギドンに突っ込む。
しかし、ギドンは口から光球を放つ。
一瞬の差。1体のギドンは突っ込む前に光球の直撃を受ける。
頭部に命中し、頭を燃やされたギドンはふと力を失い、惰性でギドンへと向かう。
メゴスは片手で思いっきりそのギドンを叩き落す。
ギドンは一気に力を失い、メゴスの腕力と地球の重力のされるがままに海へと落下した。
残り2体はメゴスと距離を取った。
メゴスが以前戦った時よりも力が強くなっている。
ギドンの、超大型を中心としたネットワークと分析能力がそう言っていた。
瀬戸内海上空にいた2体のうちの1体は、特にそれを感じていた。
腹に大きな傷跡をつけた個体だ。広島市での戦いで、メゴスに付けられた傷跡だった。
メゴスは2体が距離をとった、その一瞬のスキをついた。
先ほどよりもすさまじい速度で、大阪湾の方角へ飛ぶ。
2体は置き去りとなる形になり、それを追う。
メゴスはあくまで超大型を狙っていた。
あれがきっと親玉だ。結の話だと、一番小さな奴は人間でも倒せる。
ならば、先に親玉を倒し、それから大型を倒して、あとは人間とともに小型を倒せばいい。
何にせよ、まずは大型だ。
このとき、ギドンの速度は音速の倍以上で、すでに東海地方上空に達していた。
メゴス2体もギドンを全速力で追っていた。音速を超えるとはいえ、まだ関西地方を脱したばかり、追いつけそうにない。
しかし、これがメゴスという集合体の作戦であった。
駿河湾。
富士山が眼前に見えるこの海に、護衛艦『まつゆき』と護衛艦『あさゆき』がいた。
2隻とも『はつゆぎ』型護衛艦の同型艦である。昭和から平成にかけて、『はつゆき』型は海上自衛隊の主力護衛艦であった。
2隻は艦齢も長く、退役間近であった。
臨時で2隻の護衛隊を組んだ2隻は、静岡沖のギドン探索の任務に就いていた。
対潜哨戒を厳としていた護衛隊は、自衛艦隊司令部からの指令を受けた。
『メゴス、福岡沖から飛翔。マッハ3以上と推測。関東方面に向かっている。大型ギドン2体も続く』
「総員、対空も厳となせ。対潜警戒も引き続き厳とせよ」
『まつゆき』艦長兼護衛隊司令の二等海佐は艦橋で、指揮下の2隻に発令した。
全員が疲労困憊する中でのさらなる発令。
この状況がいつまで続くのわからないなかでの任務。
『まつゆき』艦内は緊迫と不穏に包まれている。『あさゆき』もそうだと、同艦長が言っていた。
当然だろう。『まつゆき』艦長の二佐は思った。
理解できない、抗えぬ敵と2週間近く――まだそれしか経っていないのか!――対峙している。
自衛官は肉体、精神ともに鍛えられた者たちだと、この二佐も思っている。
しかし、自衛官とて、普通の人間だ。英雄なんかじゃない。いくら集団とはいえ、人知を超えた化け物と戦える程、人間の精神は強靭にはできていない。
そのとき『まつゆき』の艦内放送。声はソナー員。
「ソナー感あり。多数確認、高速で接近。スクリュー音は探知できず」
二佐は艦内マイクをとり、『まつゆき』と『あさゆき』に向けてただちに発令。
「こちら『まつゆき』艦長。本隊直下に高速で移動する物体複数確認。ギドンと見られる。本隊は―――」
しかし、発令は下されなかった。
『まつゆき』の艦体は大きく揺れた。周辺に浮上する物体が複数。トビウオのように海から空を飛ぶ物体。
それは―――。
「小型ギドン!?」
二佐の言う通り、小型ギドンの群れだった。
艦は地球が割れるほどの巨大地震に見舞われたかのごとく、大きく揺れた。この大きな揺れのため、『まつゆき』艦内でのあらゆる行動はとれなくなっていた。
それは『あさゆき』も同じであった。
と思ったのもつかの間『あさゆき』の間近で海面が大きく盛り上がった。
小山ほどに高い水柱が立ち上がり『あさゆき』はその水柱に飲まれて転覆した。
『まつゆき』転覆! 艦橋で誰かの声が響く中、二佐は水柱から現れたものに目が釘付けとなった。
あの、超大型ギドンが出現したのだ。
超高層ビルのように巨大で、高く、禍々しい形をした巨大物体。
二佐は『まつゆき』の救助命令を発令しようとした。
しかし、その直前、超大型ギドンの口から光線が放たれる。
『あさゆき』は艦体中央部に光線の直撃を受けた。
艦体は真っ二つに割れ、大爆発を受けた。
2つに分かれた『あさゆき』はそれぞれ艦体が横転し、急速に海に飲み込まれていった。
超大型ギドンは眼下の『まつゆき』にも光線を吐き、同じように爆発炎上させた。
艦底から炎上する『まつゆき』を少しの間見下した超大型ギドンは、周囲に数百の小型ギドンを連れて、北の方へ飛んで行った。
その先には富士の山が彼らより大きくそびえたっている。




