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メゴスVSギドン 大怪獣 史上最大の決戦  作者: 頭ハジメ
第1章 発動
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第4話 国立極地研究所 -東京都立川市



 国立極地研究所は東京都立川市にある。

 東西に長い6階建てのモダンな建物が、南北に並行して2棟建てられている。この2棟は連絡通路でつながっている。

 この施設の中には、極地研究所以外に、国文学研究資料館と統計数理研究所も入居している。

 施設の南には、南極・北極科学館がある。


 この施設は、立川駅の北、立川市緑町にあり、立川駅からは歩いて20分ほどの距離がある。

 また、東に歩いて7分ほどの所に、多摩都市モノレールの高松駅があり、バス停もすぐ近くにある。



 緑町には国や東京都、立川市などの行政機関や、研究機関などが集まっている。

 施設の北西には立川市役所があり、東には東京地方裁判所立川支部、南には国立国語研究所と総務省が所管する自治大学校がある。

 そして東には、陸上自衛隊の飛行部隊や、警視庁や東京消防庁の航空隊が所在する立川飛行場があった。

 他にも、立川広域防災基地や、警視庁や東京消防庁の各部隊や機関、災害医療センターなどが軒を連ねている。



 

「で、なんで私達、今、なんでこんなところにいるんでしたっけ?」


 野崎が、高野に耳打ちして言う。


 国立極地研究所の会議室。小さな講堂くらいの大きさがあり、窓は黒いカーテンで閉ざされている。

 大きなスクリーンとプロジェクターも置かれている。

 この部屋の中で、コの字型に並べられた長い折り畳みテーブルの周りに、十数人の人間が座っていた。

 


 高野はテーブルのすぐ近くに座り、野崎は彼の後ろに座っていた。


「『南極における生物学的実地調査の研究会合』の第1回会合。南極観測隊の、南極での生物学的調査の方法を検証するための会合……だったと思う」


 高野は内閣府から渡された書類に描かれたことを思い出しながら、答えた。

 会合に参加しない人間に対しては、この会合について、このように説明しろ、という内容の書類だった。


 実際は、どのような会合なのか、高野も野崎もはっきりとは知らない。

 しかし、四国上空を中心にして、最近頻出している未確認飛行物体の件が主題である、ということだけははっきりしていた。


 高野は部屋を見渡す。

高野は、入室後に出来る限りの人たちにあいさつをして回った結果から、この部屋にいる人々は、だいたい3つの分類に分けられるように思えた。

 学者、官僚、そして、自衛官の3つに、である。


 容姿や雰囲気からみても、だいだいその雰囲気はわかる。


 自分たち学者はスーツから、ビジネスカジュアルを着ている者もいて、男女も大体半々、年齢も様々なメンツがそろっている。

 

 官僚たちは男性が多いが、年齢も様々、いずれもスーツを着込んでいる。


 自衛官たちはほとんどが男性だ。こちらも年齢は様々だが、やはりスーツを着ている。皆、背筋がピンと伸びており、体つきががっちりしている者が多い。


 この3つのグループが、コの字型の各一辺に区別して座っている。

 

 コの字型の窓際には学者らが座り、その反対側の、壁際には自衛官らが座っている。

 そしてに部屋奥の、ドアに近い、残りの辺に官僚たちが座っていた。




 

 その官僚たちのなかから、会議場の前部、スクリーン横の、木でできた講壇へ向け、一人の男が歩いていく。

 男の片手には書類の束を持っている。講壇の上にはノートパソコンが置かれていた。


 男は中年のように見えた。50代くらいに見えるが、髪も黒く、しわがなく、若々しさも感じられる。

 黒いスーツに紺色のネクタイをしており、細身で、どこか険しい顔をしている。鋭く、冷たい雰囲気が出ている。


「皆さん、それではお時間になりましたので、会合をはじめたいと思います」


 全員が、ざっと前方を見た。


「私は、内閣官房副長官補の川原です。この会合のまとめ役、また四国上空の未確認飛行物体多発に関する案件についての有識者会議や、内閣などとの連絡役も担当しています。

 よろしくお願いいたします」


 川原は頭をぐっと下げ、それから、また前を見た。


「再三申し上げていますが、ここでまた確認したいと思います。

 ここでお話しすることや、今後、本件に関することは、私や、内閣府などからの指示があるまで、外部に絶対漏らさないようにしてください。

 また、それほどまでに、本件は重大な事案である可能性が高いことを、皆さんご理解ください」


 川原は、すっ、と会議室を見渡した。


「まず、この会合の本来の目的は、件の未確認飛行物体を、軍事、あるいは生物学的な観点から調査、研究、分析することにあります」


 会場が少しざわついた。

 川原は話を続けた。


「これからお見せする画像は、宮崎県日南市の東方100キロ沖の太平洋上空で、航空自衛隊のF35戦闘機から同機のパイロットが撮影したものです。

 同機は、2機編隊で、四国南方の太平洋上に出現した国籍不明機に対処するため、宮崎県にある新田原にゅうたばる基地を離陸、飛行していました」


 スクリーンに、パッと画像が映る。


 青い空をバックに、飛行している異形の生物が映っている。

 異形の生物――そう言うしかないものだった。生物にみえるが、それは、生物学者たちが考えても、どの既存の生物にも当てはまらない。





 二つの足がついている。足は短く、3つの指と、その先に鋭い爪が見える。

 短い脚の間からは長い尾が出ている。先端部は足と同じくらいに太い。


 胴は長く、がっしりとしている。

 多くの動物と同じように、肩の下から腕が伸びているが、それは小さく、短い。やはり3つの指と鋭い爪が見える。


 さらに顔。

 逆三角形のようなフォルム。

 あらゆるものを睨めつけるような、赤一色の眼。口は大きく、鉄さええぐりそうな尖った牙も、上下左右、それぞれ4本口から出ているのが見える。

 角も生えている。

 短い、円錐状の角が後頭部に1本。さらに前頭部に、ピンク色の同じ形をした、小さな角がもう1本ついている。


 一番目を引いたのは、背中から生えた、長い何かだった。

 それは一見して、翼のように広がっている。しかし、それが生えているだけで、羽毛などといったものが見当たらない。

 骨組みだけの翼。そうにも見える。





「悪魔……」


 誰かが、そう呟いた。

 高野がそちらの方を向いた。2つ横の席に座った、若い、20代くらいの女性の生物学者だった。高野とは、先ほどはじめてあいさつしたばかりの学者だ。

 高野は名前は思い出せない。しかし、彼女の言っていることには同意した。彼も、全く同じことを思っていたからだ。


 他の、声が聞こえたらしい学者たちも、彼女の方向を向いている。

 当の彼女は、その画像を見つめていた。畏怖の念を、少し見せながら、である。  


 川原は話をはじめた。


「この物体は全長20メートルほどあり、最初、マッハ2ほどの速度で撮影地点から東の方角、つまり、紀伊半島のある方向から飛来しました。

 物体は高度を上げながら、マッハ0.8ほどで飛ぶ編隊に接近、30秒近く併走した後、マッハ3まで急加速し、一気に高度を下げて、北東、つまり四国のある方向を急転換しました。

 その急転換の仕方も異様です。

 これを撮影し、目撃したパイロットが言うには『この物体は、飛行機や生物の方向転回とは違い、小回りが利いた、というものではなく、まるで人が歩く方向を自然に変えるように向きを変えた』と」


「信じられないですね」


 官僚席の中から誰かが言った。

 背広を着た、中年男性だった。暗く、他の官僚の顔に紛れてよく見えないが、川原より少し年下に見える。

 

「もちろん、この映像や情報が信用できないといっているわけではない」そう、官僚は前置きした。顔は川原の方を向いている。


「しかし、いくらなんでも、このような生物がいるとは考えにくい。それは現在も、また、恐らく古来の生物の研究から見ても、です。これがどのように飛行しているかすら、私には想像がつかない」


「この映像を撮影したのは、自衛隊です」


 自衛官らしき男性が言った。30代くらいに見える。細いが、その割にがっちりとしているのがスーツ越しからでもわかる。


「しかし、自衛隊からみても、この物体は軍事的な常識からあまりにもかけ離れています」


 男性は座りながら、視線を会場全体に配る。


「自衛隊や防衛省も、長年、軍用技術の研究や情報収集に当たっていますが、その観点から見ても異様です。

 飛行一つとってみても理解不能だ。先ほど仰ったように、どのような原理で飛行しているかすらわからない。さらに、これほどまでに高度な機動を可能にする技術は世界中どこの国や研究機関、企業なども技術化されていない。

 形とて、既存の兵器、いや、飛行機械にはなかったものです。飛行に向いたフォルムとも思えない。形も、はっきりいって作る意図が分かりません。そして、その物体は」


 男性は、一呼吸おいて、視線をいったん落とし、若干言いたくなさそうにしたあと、また前を向いて言葉を出した。


「我が国に向かって、消えた」


 会場が静まり返った。


「――今、お話があったように」


 川原がその沈黙を破った。


「このような物体の意図、さらに原理など、あらゆることが不明です。しかし、政府はこれを脅威と認識しました。

 そして、ただちに対応する必要があると考えた。さらに極秘に有識者を集めたなかで、2つの可能性が高いとの認識を示しました。

 つまり、これが兵器か、生物か、いずれかである可能性が高い。生物としては異様だが、その形は、それに近いものがある。

 また、兵器としても異様だが、その性能は、それに近いものがある」


 会場にいる全員が、川原を見た。

 ある者は緊張した面持ちで、ある者は興味深そうな面持ちで、ある者は義務を感じたような、覚悟した面持ちだった。


「この脅威が、国民の生命や財産、生活に影響を及ぼす可能性は高くなっている。それは、多発する目撃、レーダーによる探知が数が増えていることもわかります。

 さらに、飛行機に接近したり、人家に迫る事例も増えている。画像には収まらなくとも、謎の巨大物体の目撃情報が、四国を中心に数多く増えています。特にここ2日は一気に増えています」


 川原は一息おいて、会場にいる全員を見渡した。覚悟をした面持ちだった。


「皆さん、何が起こっているかはわかりません。しかし、あまりにも早く事態が進行している可能性は非常に高い。もしかしたら、何らかの重大な事態になるかもしれない。

後ほど詳細については話しますが、総理からも、極秘なので公な命令などは現段階では出せないが、本件の調査分析に対し、現状可能な限り最大限の支援や努力を行うと言っています。

 どうか、皆さんのあらゆる力を最大限発揮して、この問題に取り組んでいただきたいのです」


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