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メゴスVSギドン 大怪獣 史上最大の決戦  作者: 頭ハジメ
第2章 瀬戸内海壊滅・広島決戦
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第14話 松山、しまなみ海道、さらに……



 工石山の一群が飛び立ったその直後、笹ヶ峰の一群も空に飛び立った。

 彼らもまた、大いなる惨劇を振りまいて飛行した。


 5体の物体は、まず、笹ヶ峰を少し北に飛んだ後、二手に分かれた。

 一手は小型のものが2体で、笹ヶ峰から北方へ向かう。

 もう一手は、大型のもの1体と小型のもの2体で、これは笹ヶ峰から西方に向かった。




 北方に向かった一群は、愛媛県西条市をまず襲った。


 新興の産業地帯として発展していたこの都市に、赤い光線が走った。


 沿岸部の工場地区は軒並みぶっ飛ばされた。


 精密機器工場の、白い建物は煙と灰で黒くなりながら、赤い炎を発していた。

 造船工場ももくもくと煙を上げながら、すさまじい炎をあげている。


 商業地や市役所も燃え、また住宅街も被害を受けた。さらに衝撃波がやってきて、街はこなごなになった。



 


 それから彼らは、今治市を襲った。

 愛媛県第二の都市もまた惨劇の一舞台となった。


 今治市でまず攻撃を受けたのは、今治城だった。

 幅の堀に、島のように浮かび、その天守を空へと伸ばす、堂々たる今治城は、2つの光線を受けた。


 一つは城の北東にある鉄御門(くろがねごもん)多聞櫓(たもんやぐら)から、南東にある御金櫓(おかねやぐら)を縦断するかのように放たれた。

 鉄御門は、今治城の表門であり、巨大な門であった。櫓も、城から外部を見て、あるいは弓兵などがそこから外の敵を攻撃するための建物であり、多くの城がそうであるように頑丈な作りになっていた。

 特に多門櫓は、今治城の表門を守るだけあって、特に頑丈な作りになっている。

 しかし、空からの光線攻撃には耐えることができず、頑丈な門と櫓は一瞬で吹き飛ばされた。

 光線は地上に伸びたまま、南下し、南に堀沿いにたっていた木々を燃やしてなぎ倒したあと、御金櫓を燃やした。

 今は郷土出身芸術家の現代芸術館となっている御金櫓は、その貴重な作品ごと、炎上することになった。

 


 その光線が放たれた直後、もう一つの光線が吹揚公園から今治城天守へ向けて放たれる。

 公園にある吹揚神社はぎりぎり直撃を免れたが、光線が放つ高熱によって火災が発生し、爆風で瓦などが一部吹き飛んだ。


 白い壁と灰色の屋根瓦で出来た5重の天守は光線の直撃を受けた。

 天守は一瞬にして燃え、崩れ落ちた。


今治市も工場地帯として、また港として栄えた土地であったが、これらも攻撃の対象となった。


 いくつもの巨大なクレーンがそびえる造船工場は、光線の被害を受けて爆発した。

 光線を受けた、巨大なクレーンがゆっくりと倒れる。

 他の工場も、爆発によって、パイプや機器が無数に空に舞い、地面に落下した。

 工場地帯は、火炎に覆われていた。


 




 さらに今治港も狙われた。

 光線で、ふ頭にある、数十のコンテナが宙を舞い、地上に落下した。爆風、もしくは落下のショックで、コンテナの全てが大きく歪んだ。

 パイプを叩きつけるような音が何十にも重なり、港中に歪な音楽を響き渡らせた。

 この港町を象徴するスクリューのモニュメントも無残に砕けて、今や大小無数の破片を周囲に散らばらせるのみになった。


 停泊中、あるいは出航しかけていたか、入港しようとしていた十数の船舶も襲われた。

 大型船は軒並み光線の餌食となり、その船体と積載物を燃やすしかなかった。生き残った数隻の船は港外に脱出しようとしたが、黒煙を上げながら徘徊する大型船に行く手を阻まれたり、あるいはそのような大型船や同じように逃げようとする船と衝突することも少なくなかった。

 航行していた中型船や小型船は爆発によって生じた大波で多くは横転した。

 本来なら、これを誘導すべき港湾設備は攻撃によってその機能を喪失させていたし、救助すべき海上保安庁の巡視船も爆発炎上していた。


 市内の商店街、大型スーパー、ショッピングモールも攻撃を受けた。

 光線の直撃によって、店舗そのものが破壊され、炎上しているところもあった。


 あるスーパーは、光線の直撃によって爆発炎上した。


 また、別のスーパーは、爆風で出入口付近のガラスが数百の破片に砕け、それが爆風とともに、商品が散乱し、一部の棚と多くの人が転倒した店内に突撃した。


 あるショッピングモールは、遠くで起きた爆発の振動を受けたのみだったが、それでも棚に陳列してあった商品の多くが落ち、いくつかの天井や壁、照明が落下した。

 すぐに停電が起こり、何人かが店を出た。

 そこで、外に飛び出た何人かが、街の惨状を目の当たりにすることになる。






 西部に向かった一群は、高縄半島南端を越え、松山平野に向かっていた。


 そこには愛媛県の県庁所在地にして、四国最大の人口を抱える都市、松山市の市街地があった。



 市内に高くそびえる山の上に松山城がある。

 お城の建築物以外は緑に覆われたこの地に、6つの光線が照射された。


 その惨状は今治城のそれを越えるものだった。松山城天守やいくつもの櫓、門に至るまで、光線に射抜かれた。


 標高に応じて、本丸のあるから山頂から、南西麓に二之丸、さらに三之丸と続いていたが、光線の攻撃によって地面ごとえぐれて、もはや崩れた山になっていた。

 それを、のろしのように周囲に示すかのように、山の木々が白煙を上げて燃えていた。


 光線は市内のさまざまな施設を無造作に燃やした。


 松山中央公園にある大きな野球場では、スコアボードが燃え、周囲にそびえていた大型ライトが全て倒れた。


 市街南部にあったサッカースタジアムも、大きく鋭利な刃物で切られたかのように、東西に一本の太い線のような、大きな焼け跡が出来た。

 観客席は燃え、いくつかの横長のベンチがぐしゃっと曲がって、グラウンドに横たわっていた。

 グラウンドも光線の直撃を受けたところは土が盛り上がり、ちょっとした深い堀のようになっていた。その周囲の芝が燃え、それが延焼していた。


 市内最大の駅である松山市駅、中に大手デパートが入った、その9階建ての駅ビルは、一本の光線で粉砕された。

 5階部分に光線が当たり、一気に爆発が起こる。爆発によってそれより上階がこなごなにくだけて、空を舞った。


 多くの破片はビルの下階部分にそのまま落下し、ビルを完全に破壊した。

 特徴的だった屋上の大観覧車は、爆風によって、いったん20メートル近く空を舞い、西のほうへ、放物線を描くように落ちた。

 そのまま屋上の遊園コーナーを車輪のように回った観覧車は、そのままビルから落ちて、西方にある、5本の線路上に横たわろうとして、線路北側にあったビルに激突、そのまま寄りかかった状態となった。


 松山インターチェンジも燃えた。併設してあった松山ジャンクションもその架橋が落下し、その下にあった高速道路ごと道をふさいでいた。


松山港も、今治港と同様の被害を受けていた。

 港湾施設は破壊、または炎上していた。


さらに、松山空港も光線による攻撃を受けた。

 市内から、海へ向かって伸びる松山空港は、その滑走路の至る所に光線の深い傷をつけていた。

 大きな穴や、深い直線の堀のようなものもいくつもできており、滑走路は誰が見ても使用できなくなっていた。

 

 管制塔も同様だった。

 管制塔はどこかに消えていた。代わりに、管制塔につながっていたはずの通路部分から黒煙が上がるのが見えた。

 ターミナルビルも燃え、周囲を熱している。


 駐機場にいた数機の航空機も破壊されていた。

 ある小型機は跡形もなく炎上し、ある旅客機は胴体中央で切断され、車輪がないまま、折れた胴体と主翼が地上に横たわっていた。


 松山空港にいた消防隊が現場指揮官のとっさの判断のもと、まず人の多いターミナルビルへと出動を開始した頃、一群は進路を変え、北上していた。


 彼らは30秒ほどで今治市上空に到着。今治駅に光線を浴びせていた、もう一手と合流した。

 この間にも、彼らが音速を超えて飛行したため、松山市街から今治市街の間の、高縄半島西側は壊滅的打撃を受けていた。






 合流した彼らは、また編隊を組んで、北上した。

 

 彼らは西瀬戸自動車道、通称『しまなみ海道』を狙った。


 島々の間に橋を建てながら、四国の今治市から、本州の広島県尾道市までつなぐルートで、本州四国連絡橋の3つのルートのうちの1つである。

 

 最南端、来島海峡大橋が光線の餌食になった。

 橋桁に向かって、2本の光線が伸びた。橋の南の端と北の端を狙って伸びたそれは、自動車道と、それに併設された自転車道、歩道をもを破壊した。

 爆発を受けた直後、数台の自動車がふっとび、橋桁が爆発、炎上した。

 それを見た全ての自動車は急停車をかけたが、攻撃を受けた場所に近いところを走っていた数台の乗用車とバス、トラックは、止まり切れずにそのまま海へ落下した。


 橋の上を走っていた車や自転車、歩行者たちは、この橋の上に孤立した。


 そのまま北上し、大島を破壊した。

 みかん畑を燃やし、漁港と自動車道を粉砕した。


 伯方大橋を数本の光線で落とした彼らは、北にある伯方島を襲った。

 造船業と塩の産地と知られるこの島にはあった、2つの製塩業の施設と4つの造船所は、伯方大橋同様、木っ端みじんに破壊された。


 すると、伯方島上空で、彼らは方位を北から西へと変えた。

 速度を上げながら、かといって光線を打つ手はゆるめなかった。


 330メートルの長さがあるアーチ橋、その大三島橋を光線で中央部分を切断し、文字通りに落とした彼らは、伯方島の西にある、大三島へと向かう。


 大三島の上空にさしかかり、光線を島に叩きつけた彼らは、西の方向を向いた。


 瀬戸内海と、そこに浮かぶ比較的大きな5つの島があった。大崎上島が彼らの右下方に見える。


 大崎下島から、あとの4つの島は、彼らの直下にあった。そこから、西へ向かって列をなすように浮かんでいた。

 

 その列の先には本州、広島県呉市がある。

 


 


 

 海上自衛隊呉基地。


 江田島市の海を挟んで東隣、広島市からは南方に位置する呉市にある、海上自衛隊の有数の巨大基地だ。

 明治以来の軍港であり、日本に海軍があった頃には、多くの帝国海軍艦艇が、ここを母港として、停泊していた。

 帝国海軍がなくなり、海上自衛隊になった現在でも、多くの艦艇がここを母港としているのは変わらない。


 今、10隻ほどの海上自衛隊の護衛艦、自衛隊が持つ潜水艦の半数がここを母港としていた。

 また江田島市に、海上自衛隊の教育機関があることから、練習艦隊もここが母港だった。






 基地の中には戦後に建てられた近代的な建物が多くあったが、そのなかに古めかしい赤レンガ建ての洋館があった。

 かつてここは日本海軍の建物だったが、現在は呉地方隊を指揮する、呉地方総監部の庁舎となっている。

 呉地方隊は、和歌山県から宮崎県、さらに東京都島しょ部を担当地域として活動する部隊のことだ。


 今、ここのなかは多くの隊員たちが走り回っていた。

 彼らの理解を超えた情報が次々と入って、混迷していたからだ。


『工石山と笹ヶ峰より巨大物体が複数出現、飛行を開始』という情報を皮切りに、『善通寺市とその周辺が破壊』という情報が陸上自衛隊第14旅団司令部から入り、さらに『瀬戸大橋破壊』の情報が、彼らを極度の緊張と混乱へと追いやっていた。

『松山市破壊』と『しまなみ海道破壊』という情報も入り、混乱は限界を越えていた。


 彼らは情報収集のため、あるいは想定される救護活動の準備のため、動き回っている。

 それはこの基地の中全体でも同じで、停泊していた艦船が出港準備に入っていた。


 



 

 その時、当直に入っていた呉地方総監部の三等海佐は、いかにも軍人というような精悍な顔つきをこわばらせている。

 しかし、彼は黒い冬用の制服を着こなした、筋肉の塊のような大きな肉体で庁舎内を走り回って、野太い声を発しながら、状況の確認と命令を出していた。

 他の隊員たちと同じく、この状況に対して、使える全ての頭脳を投入している。彼らの頭は状況を少しずつ集めながら、命令を出すことで精いっぱいだった。


 彼が庁舎2階の、海側にガラス窓のある廊下を走っているとき、窓から閃光が廊下を走った。


 それとともに、爆発音が響く。爆風がガラスを突き破って庁舎に突入した。 


 爆風に押し倒された彼は少しだけ、冷静さをもって、周囲を見た。爆風で廊下にいた全隊員がその場に倒れ、ガラス片で数人の隊員が血を流している。


 彼はすっと立ち上がって、外を見た。


 数隻の艦艇が炎上していた。出港準備中だった護衛艦とそれを支援するためのタグボート、また、その他周辺にいた小型艇も燃えている。

 炎から、黒煙が、天高く舞い上がっている途中だった。黒煙は、ぐんぐんと、天に昇っていく。

 

 彼は黒煙を伝って、頭上を見た。見たこともない、大きな飛行物体5体が、空を飛んでいた。さらに、それが光線を呉の港のどこかに放っている。

 また爆発音が響き、軽い爆風が届いた。


 彼はとっさに走り出した。

 階段を飛び降りるように下り、地下階の廊下を駆ける。


 そして通信室のドアを開けた。


 あまり大きくない、窓のない部屋の中に、軍事用の大きな通信設備が詰め込まれていた。


 通信設備にかじりつくようにしている隊員が3名、さらに二等海尉の階級をつけた、青色の作業服の隊員がその様子を深刻な顔で見ていた。


 二等海尉はぎょっとした。額右部分から出血している上官が、興奮した形相でやってきたのだ。 


「命令!」

 

 三等海佐が叫んだ。二等海尉が現状を問う前に、である。

 冷静を装っているが、目が血走り、肩を上下に動かしながら呼吸している姿は、極度に興奮しているもののそれだった。


「我が基地は攻撃を受けている! 報告のため、以下の文章を、可能な限りの各部署に発信せよ!」


 爆発音。それとともに揺れが起きた。

 二等海尉を含め、通信室にこもっていた隊員たちはさらに動揺したが、三等海佐は、短い文章を口頭で伝え、他の隊員たちはそれを手元にあったメモに書いて、それを復唱した。

 三等海佐はその復唱の内容に間違いないと承諾すると、隊員たちはただちに各部署に通信を送った。


 二等海尉はふと冷静さを取り戻し、どこかで読んだ文章であることに気が付いた。


 だが、さらに大きな爆発音と揺れが起こり、その気持ちもどこかに吹っ飛んでしまった。

 二等海尉は部下にただちにメモに書かれた文章を発信するように述べた。







 呉地方総監部より発せられた通信は、軍用通信設備を使って、電文として、神奈川県横須賀市にある海上自衛隊自衛艦隊司令部、東京都新宿区市ヶ谷の防衛省にある海上幕僚監部に発信された。

 付近の陸上自衛隊の駐屯地、航空自衛隊の基地、さらに民間の災害用通信機材を使って、広島県と愛媛県、山口県の各県庁、また呉市と、広島市を含む周辺の市の危機管理室にも同様の電文が送られた。


 発信元の名前は『海上自衛隊呉地方総監部』


 本文は以下のとおりである。


『呉基地は航空攻撃を受けている。詳細不明。これは演習ではない』

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