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メゴスVSギドン 大怪獣 史上最大の決戦  作者: 頭ハジメ
第2章 瀬戸内海壊滅・広島決戦
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第13話 瀬戸大橋、破壊す


 高知県中岡郡中本山にある工石山(くいしやま)より飛翔した、大型の物体1体と小型の物体3体の一群と、笹ヶ峰の大型の物体1体と小型の物体、4体は、ついに、本格的な破壊活動をはじめた。

 

 工石山の一群は、笹ヶ峰の一群より少し早く飛翔し、まず北上した。


この一群は、ある編隊を組んで飛行していた。

 大型の物体を囲うように、3体の小型の物体が飛行している。前方に1体、後方左右にそれぞれ1体ずつである。






 彼らの眼下に、数本の煙突と工業地帯が特徴的な、海沿いの市街地が広がった

 愛媛県四国中央市の市街地である。

 愛媛県の最東端にあり、製紙産業が盛んな、四国有数の産業都市のひとつであった。

 JR予讃線が東西に走り、四国を走る、高松道・松山道・徳島道・高知道がここで交差する。また、三島川之江港という大きな港もある、交通の要所としても知られる。

 そして、これから、その全てが犠牲となる。





 4体の、悪魔のような物体は、地面に向かって、口を大きく開いた。

 そして、そこから淡く赤い光線が吐き出された。


 大型の個体からのびる丸い触手も、ハエトリグサが虫を食らう時のように口を開き、そして同じ色の光線を吐き出した。






 平穏な港町に、突然空中から、淡く赤い光線が数本、地上に伸びた。その刺激的な光の線は地上にあたりながら、町を横断、あるいは縦断した。

 その時、四国中央市市街にいた人の多くは、空に5体の大型物体がいたことすら気がつかなかった。飛行機のエンジンのような、騒がしい音もしなかったからである。

 

 光線が地上にあたると、一軒家が木っ端みじんになるほどの爆発が起こった。光線は地上に伸び、叩きつけられる。

 光線はひとつの線となっていた。線の上にあったものは木っ端みじんとなって吹き飛ぶ。

 街に一筋の傷ができ、その傷から、血が滲むかのように、火炎が上がった。やがて火炎からは、もくもくと黒煙が立ち上る。

 

 筋は市街の各所にいくつも出てきた。

 それは、まるで鞭を打たれ続けている者の体のように、無残な光景だった。



 



 放たれたいくつもの光線によって、市内の至る所で爆発と炎上が起き、破壊された。


 JR予讃線の線路は数か所で分断され、駅もいくつかが破壊された。市内でも大きな川之江駅の被害も大きかった。

 停車中だった特急『しおかぜ』号ごと、駅に光線が叩き込まれた。

 5両編成の特急『しおかぜ』号の3号車が光線の直撃を受けて、爆散。2号車と4号車がその爆発の影響を受けて、地上から数十メートルほど跳ねあがった。

 てこの原理のように舞い上がった2両の車両は、その後、それぞれホームと駅舎横の駐輪場に落下した。

 ひんまがった銀色の車両――2号車は、数百台の自転車を潰して、横倒しになっていた。車両は変形し、煤汚れ、あるいはところどころ焼けていた。

 4号車も同じようになって、ホームの上にいた。屋根もベンチも自動販売機も上から降ってきた車両に押しつぶされた。かろうじて『伊予三島』と書かれた駅名標が無残に、線路上に落ちている。


 高速道路も同様に、各所で光線の攻撃を受け、破壊された。

 ひとつひとつの爆発はアスファルトを粉々に砕いて、舗装された道路に大きく亀裂を生じさせた。

 また爆風によって、無数のアスファルトの破片や折れ曲がった道路標識、さらにトラックや乗用車などが何台を空を舞った。


 市内の三島川之江インターチェンジと土居インターチェンジが攻撃を受け、道路がめくれ、さらに料金所が、そこに通っていた2、3台の車を巻き込んで爆発した。

めくれた道路に、急ブレーキをかけた車が突っ込んで横転、あるいはスリップをした。そこに後続の車が次々と突っ込み、玉突き事故を引き起こす。

 また、料金所を通過しようとしていた数台の車が、爆風に巻き込まれて横転していた。


 しかし、さらにひどい被害を受けたのは、川之江ジャンクションと川之江東ジャンクションだった。

 それぞれ4つの光線を受け、複雑に、立体的に交差する広い道路は跡形もなく吹き飛んだ。高架橋すら、宙を舞い、地面に叩きつけられた。

 そこにいた車はもちろん、周囲の山や木々も吹き飛ばし、残ったのは、荒れた土地だけだった。


 港も、停泊していた2隻の貨物船ごと攻撃を受け、爆発、炎上した。


 市内にある工場も軒並みやられた。市内には製紙工場がいくつかあり、そこから数本の高い煙突が空に向かって伸びていたが、その全てが倒壊した。

 

 家屋も商店も自家用車も、あらゆるものが被害を受けた。


 屋根瓦やトタンの板、電線、電柱、砕け散った家屋の破片、家具、調理用具、文具……大小さまざまなものが爆風によってあおられ、吹き飛ばされ、街中の至る所に落下した。


 家屋や小さな商店は燃えるか、骨組みを残すのみとなり、自動車の多くは横転していた。学校や体育館、役所、病院、警察署や消防署など、本来ならば頑丈な作りの大きな建物も、ガラスが割れたり、なかには半壊するものもあった。


 と、そこですさまじい暴風とけたたましい爆轟が響いた。

 5体の飛行物体が音速を超えて、しかも人間の航空業界の常識では、低空とみなされる高度で飛行したことにより、市街地上空を通過したことにより発生した衝撃波だった。


 ここではじめて市街地に、轟音が響く。音の衝撃波による騒音、ソニックブームである。それは、もはや強烈な音の暴力であった。

 多くの人が、鼓膜が破れそうな、また体の芯まで響くような音を感じた。

 さらに衝撃波によって、四国中央市市街に、通常ではありえない圧力がかかる。

 ただでさえ、破壊され、脆弱となった市街に、暴力的な突風がかかった。

 それは四国中央市へのとどめの一撃だった。


 これで市内にあった建物の多くは一気に全壊した。市内の半数近い建物は、半壊し、たたでさえ脆くなっていたが、衝撃波でとどめを刺された。

 持ちこたえていた、頑丈な建物の多くも全壊、あるいは残ったとしても、無残に半壊するか、無数の傷跡や大きな破損をさらけ出していた。

 

 市内各所で火災が発生し、ついさっきまで青一色だった市街地の空は、大きく立ち上る黒煙で覆われていた。


 冬の、穏やかな日光に照らされた、瀬戸内の産業都市は、火と煙に包まれた廃墟と化した。 

 最初の光線が街を襲ってから、1分もたたない間の出来事である。



 


 四国中央市を廃墟にした彼らは、進路を北東へと向けた。

 彼らは海岸線を沿って飛びながら、愛媛県から、香川県へと進入した。


 先の四国中央市を見てもわかる通り、音速を超えて、しかも低空で飛ぶ大型物体は、それだけで街を破壊する凶器となる。

 さらに、破壊光線をいくつも地上に放てば、打たれたものは爆発炎上する。

 彼らの通った土地は一瞬にして荒れた土地に変わった。そこはもう、人間や、他の生命の在る場所ではない。


 



 彼らは西讃(せいさん)地方――つまり香川県西部の各都市へとその魔の手を伸ばした。


 三豊市、善通寺市、多度津町、丸亀市、坂出市の上空を音速で飛行した。

 その間にも、いくつもの光線が地上に放たれていく。


 光線によって、高速道路や線路の各所、また高速道路のインターチェンジ、ジャンクション、鉄道の駅、港湾施設がさらに破壊された。

 

 また様々な建物が光線の直撃、あるいは間接的なもので損害を受けた。


 家屋、商店、役所、学校、病院……建物の全ては、そのあらゆる種類に関係なく、無差別に被害を受けていた。


 また田畑も、爆風と、それによって舞ってきた破片が散乱した。トラクターから鎌まで多くの農具も破壊された。

 農家たちは、大勢の人たちがそうであるように、自分と家族、近居の人々の生命を守るのに必死に行動していた。

 しかし、ふと惨憺たる農地が視界に入ると、今年はもう作物が取れないだろう、今まで通りの農業ができる日がいつ来るのかを反射的かつ瞬時に考え、絶望的な表情を浮かべるのだった。


 漁師たちのなかには、そのような考えが浮かぶことすら許されないものも多かった。

 沖合に出ていた漁船やボートは、漁師たちごと、衝撃波で転覆させられたからだ。彼らは何が起こったか全く理解できなかったが、動ける者は、自分や、他の漁師たちの人命を優先させるための行動に出た。


 



 

 彼らは、数分ほどで西讃地方を抜けようとしていた。

 この地方の東端には、香川県第二の都市、丸亀市がある。


 市街地南部、丸亀城は、標高70メートル近い亀山を利用して作られたこともあって、小高い山の頂上に天守があり、それを支えるかのように石垣が連なっている。

 この目立つ立地にあったことによって、丸亀城は、市内で最初に攻撃を受けることになった。

 丸亀城天守に、一本の赤い光線がまず命中し、爆発した。それから、数本の赤い光線が、石垣や丸亀城公園に差し込んだ。

 総高日本一を誇る石垣も崩れ、それとともに木々や土砂が堀に水没した。

 ついに亀山そのものが崩壊した。土砂が崩れ、それとともに燃えた天守が崩れ落ちた。


 光線は、丸亀城から、丸亀駅の間の300メートルの間にも放たれていた。

 丸亀城北西方にある丸亀市役所も炎上した。

 丸亀駅も爆発し、こうこうと燃えていた。

 丸亀市内の線路上で止まっている、ある普通列車から、数人の乗客は丸亀駅が燃えていることに気が付き、血の気が引いた。

 あのままこの電車が駅に入線していたら、駅の被害に巻き込まれていただろうと思ったからである。 

 他にも乗客はいたが、いずれも突然起こった破壊と、その残骸や、遠くからでも見える炎や煙をそこら中に見て、彼らの思考は混乱するか、停止するかのどちらかだった。

 全員に共通しているのは、呆然としていることだった。


 駅の周辺だけだけではない。丸亀市市街でも各所が爆発炎上した。

 ここまでで、香川県西半分の都市が壊滅的打撃を受けた。


 



 衝撃波で丸亀市にとどめを刺したあと、坂出市の上空に出た。

 市の沿岸部にあった工業地帯にやはり複数の光線を打ち込まれる。多くの工場は炎上し、黒煙を上げた。

 さらに坂出駅にも光線が打ち込まれた。近代的な駅舎は、その大部分が消し炭になって、燃えている。


 坂出インターチェンジも同様だった。複数台の自動車を巻き込んで、道路は粉砕され、料金所も爆炎のなかにあって、通行不能になった。 





 そして、彼らは瀬戸大橋に向けて進路を変えた。


 瀬戸大橋は四国にある香川県坂出市と本州にある岡山県倉敷市を結ぶ、本州四国連絡橋のひとつだ。

 瀬戸大橋という名前は、その四国から本州の間に連続して架かっている、10の橋の総称であり、瀬戸内海にある、6つの島を縫うかようにそれぞれ長大な橋が架けられていた。

 全長30キロ以上ある瀬戸大橋には、道路と鉄道が敷かれ、本州と四国の『陸路』として存在していた。




 彼らはまず、瀬戸大橋に属している橋のうち、一番四国側にある南備讃瀬戸大橋を攻撃した。

 いわゆる吊橋の形をしており、橋には4つの大きな柱と、その左右からケーブルが伸びて、橋を支えている。


 光線の一撃は、南備讃瀬戸大橋のその主塔、つまり、大きな柱の一本を狙った。

 光線は橋の南東にある主塔の中腹にあたった。主塔の上部はそのまま橋に落下した。


 主塔上部の、大きな破片は細々とした破片とともに、巨大な橋桁に落下した。

 橋桁上部にあった道路部分――瀬戸中央自動車道にたたきつけられた。その真下に自動車はいなかったが、多くの自動車は急ブレーキをかけた。

 破片は橋桁下部の鉄道部分――JR瀬戸大橋線をぶち抜いて、海へ落下した。

 

 南備讃瀬戸大橋はこうして分断された。




 瀬戸大橋の他の橋も破壊された。


 北備讃瀬戸大橋と南備讃瀬戸大橋の間にあるアンカーブロックが光線の集中砲火を受けた。

 アンカーブロックは、吊り橋を支えるケーブルを繋ぎ止めるコンクリートブロックだ。

 このコンクリートブロックは、三つ子島の横に置かれていたが、その小島より巨大である。


 これが四散したことによって、2つの橋は一気にバランスを崩した。

 北備讃瀬戸大橋は南半分の橋桁が、南備讃瀬戸大橋は北半分の橋桁が、それぞれ折れて、海にたたきつけられた。

 

 それから北に向かい、与島橋、岩黒島橋、櫃石島橋は、各所に光線が当たり、虫食いのように橋桁が傷ついた。

 それに耐えられなくなったこの3つの橋は崩壊し、橋桁や主塔は海にたたきつけられた。





 瀬戸大橋の一番北、つまり本州側にある下津井瀬戸大橋はその中央部に3つの光線が集中砲火された。

 橋桁はそこから2つに割れ、やはり海にたたきつけられた。


 橋の近くにいた、岡山県倉敷市の人々は恐怖した。

 四国のほうから、爆発と黒煙が見えた。しかも、空から、何か得体のしれない巨大な物体が飛んでいる。

 それが光線を吐き、橋を破壊しながら、こちらに向かっていることを知ると、行動の早い人々はただちに避難を開始した。

 しかし、ふと、次の瞬間、多くの人が疑問を浮かべるのだった。

 避難するっていっても、あれから、どこに避難すればいいんだ?


 もはや呆然としてしまった人、あるいは事態が呑み込めず、なかにはスマートフォンやデジタルカメラなどで事態を撮影している人たちも、目の前の下津井瀬戸大橋が崩壊していく様を見て、避難を決意した。


 しかし、どこに避難すればいいか、などという疑問が浮かぶ前に、彼らは倉敷市を襲った。






 中国地方で三番目の多い人口を有し、瀬戸内海有数の工業都市として栄えてきた倉敷市に、破壊の魔の手が伸びた。


 まず狙われたのは、瀬戸内海に面した倉敷市水島という地区だった。この埋め立てや干拓地の上にできたこの地区には、様々な工場や倉庫が置かれ、水島臨海工業地帯を形成していた。

 そのコンビナートに光線が伸び、あらゆる工場や倉庫、タンクが破壊された。

 工場が爆散し、煙突がいくつも倒れた。化学物質が流出し、作業員たちは初動対応をする余裕も与えられないまま、その場から逃げざるを得なくなった。

 さらに可燃物も爆発し、延焼を助長させた。さらに有害物質も流失し、液体や、有毒なガスとなって、周囲を汚染した。

 水島地区は文字通り、生物が立ち入れない場所になった。もくもくと上がる黒煙が、市内の各所から見えた。


 その、空にかかる巨大な黒煙の中から、4体の巨大物体が出てきて、北へ向かい。ゆっくりと高度を下げていく。


 その過程で、1発の光線が発射された。これは、水島地区の北方にある新倉敷駅を射抜いた。

 新倉敷駅には山陽新幹線と山陽本線が通っていたが、その線路は跡形もなく破壊された。





 その後、彼らは西に旋回しながら高度を落とし、そこにあった高梁川沿岸に3発ほど光線をあてた。

 高梁川にかかる山陽自動車道と山陽新幹線、さらにその近くにあった公園と高梁川沿いにあった大型ショッピングモールを爆発させた。



 彼らは南に旋回しながら降下して、新倉敷駅から北東の位置にある、高梁川沿いのゴルフ場に向かった。






 4体の大型物体は、その2本の足をその地に下ろした。

飛行中に、制動をかけ、徐々にスピードを落としつつ、ふわっと、ゆっくりと降り立った。しかし、地面に到達した瞬間にはその自重で地面を揺さぶった。

 けたたましい地鳴りが、倉敷市の高梁川沿いとその周囲に響いた。

 燃え盛る街をバックに、4つの、巨大な、異形の物体が咆哮を上げる姿をみて、人々はもはや立ちすくむしかなかった。


 だが、同様の悲劇は、もうひとつ、同時に進行していた。


 

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